小椋藍選手の素晴らしい活躍などで、日本のファンにとっても大いに盛り上がったチェコ・ブルノGP。その熱気冷めやらぬレースウィーク直後のサーキットで、未来のMotoGPに向けた非常に重要なテストが行われました。
2027年シーズンより、MotoGP最高峰クラスの単独タイヤサプライヤーとなるピレリ。これまでMoto2やMoto3クラスでの実績を積み重ねてきましたが、いよいよ最高峰クラスの舞台に向け、MotoGP 2027年用タイヤプロトタイプのテストを本格的にスタートさせました。
全5メーカーが参加。契約ライダー登場で開発は「実戦レベル」へ
今回のブルノテストにおける最大のトピックは、これまでテストライダーが中心だった開発段階から一歩進み、各メーカーが選んだ契約レギュラーライダーが初めて参加した公開性の高いテストであったことです。
テストには、2027年導入予定の850ccプロトタイプ、あるいは現行車を改修して2027年仕様を模擬した車両が持ち込まれました。参加したメーカーとライダーの陣容は以下の通りです。次世代に向けた各陣営の真剣度が伝わってきます。
| メーカー | 参加ライダー(契約ライダー/テストライダー) |
|---|---|
| Ducati | マルク・マルケス、フェルミン・アルデゲル |
| Aprilia | マルコ・ベッツェッキ、ラウル・フェルナンデス |
| Honda | ルカ・マリーニ、ジョアン・ミル |
| Yamaha | トプラク・ラズガットリオグル、アウグスト・フェルナンデス |
| KTM | ペドロ・アコスタ、ダニ・ペドロサ、ポル・エスパルガロ |
スプリントから決勝まで。実戦を見据えた緻密な走行プログラム
今回のテストは、単に数周を走って新しいタイヤのフィーリングを確認するだけのものではありませんでした。
各メーカーは事前にIRTA(国際ロードレーシングチーム連盟)と合意した走行プランに基づき、2台の車両を用意。それぞれ異なるテストメニューを消化し、データ収集の最大化を図りました。
特筆すべきは、一部のライダーがスプリントレースを想定した走行や、フルレース距離でのロングランも実施した点です。現代のMotoGPでは、一発のタイム出し(予選)、短距離での高いパフォーマンス(スプリント)、そして最後まで安定したフィーリングを保つ耐久性(決勝)と、シチュエーションごとにタイヤへ求められる役割が異なります。
タイム情報非公開のテストではありましたが、初期グリップだけでなく、周回を重ねたときのパフォーマンス変化を実戦レベルのライダーが評価することで、2027年用タイヤの方向性を定めるための極めて有意義なデータが集められました。
なぜ新しいタイヤが必要なのか? 2027年の「大きな変化」
「2027年」は、単なるタイヤメーカーの交代にとどまらず、MotoGPマシンそのものが大きく生まれ変わる年です。エンジン排気量が現行の1000ccから850ccへと縮小され、空力パッケージにも新たな制限が設けられます。
中でもタイヤ開発に直結する大きな変化が、「フロントおよびリアのライドハイトデバイス(車高調整装置)の完全廃止」です。
これまでデバイスに依存していた加速時の車体姿勢の制御や、マシンにかかる荷重のバランスが根本的に変わるため、タイヤに求められる特性も全く新しいものになります。パワー、空力、そして姿勢制御の変化。この新世代マシンの挙動に合わせた専用設計のタイヤを生み出すため、ピレリは実戦さながらの膨大なデータを収集しているのです。
ファン必見のトピック:日本メーカーの参画とトプラクの存在
日本のモータースポーツファンにとって嬉しいニュースは、HondaとYamahaがこの開発の初期段階から積極的にテストへ参加している点です。新レギュレーションへの対応は、国内メーカーの復権に向けた重要なカギを握っています。
さらに注目したいのが、Yamahaから参加したトプラク・ラズガットリオグルの存在です。WorldSBK(スーパーバイク世界選手権)でピレリタイヤの特性を誰よりも熟知している彼が、最高峰クラスのプロトタイプマシンで今回のテストに参加したことは、ファンにとっても非常に興味深く、ピレリにとっても有意義なフィードバックをもたらす要素となるはずです。

順調な仕上がりを見せるプロトタイプと今後の展望
今回の実戦的なテストを終え、ピレリのモーターサイクルレーシング・ディレクターであるジョルジオ・バルビエは「全体としてポジティブ」「開発は計画通りに進んでいる」と語り、ライダーとメーカーとの建設的な協力関係のもと、新レギュレーションに向けた準備が順調であることを示唆しました。
ピレリのMotoGP 2027年用タイヤ開発は、これで終わりではありません。今後はオーストリアGP後のレッドブルリンクや、シーズン最終戦バレンシアの後にも継続してテストが予定されています。
最高峰クラスのパドックをピレリのタイヤが支える日まで、あと数年。マシン、規則、タイヤが同時に変わる大きな節目に向け、着々と進むピレリの開発プロセスに今後もご注目ください。
【関連記事】
チェコGP徹底解剖|前年比で大幅に上昇した路面温度。予選から決勝までレコード更新が記録されたピレリタイヤの適応性
今回の2027年タイヤテストが行われる直前に開催された、2026年チェコGP本戦のデータ検証記事。最高54℃に達した路面温度という過酷な条件下において、仕様変更のない同一のピレリタイヤがなぜ予選から決勝にわたりレコードを更新し続けたのか、具体的なリザルトから解説します。





