2026年6月21日に決勝が行われたチェコグランプリ(ブルノ)。今回のレースは、Moto2™およびMoto3™の両クラスにおいて、昨年の記録を大きく塗り替えるハイスピードな展開となりました。
特筆すべきは、開催ウィークを通じて前年より大幅に上昇した気象条件です。2025年大会(7月開催)の予選日は気温23℃、路面温度36℃であったのに対し、2026年の予選日は気温31℃、路面温度50℃を記録。決勝日には路面温度が最高54℃にまで達する過酷なコンディションとなりました。
本来、路面温度の大幅な上昇はアスファルトの自然なグリップレベルを低下させるため、タイム維持には不利に働きます。しかし、ピレリが投入したタイヤは2025年と同じ仕様(ソリューション)であったにもかかわらず、予選から決勝にいたるすべてのセッションで歴代最高記録が更新されました。
予選:前後ソフトで魅せた限界性能。1秒近く短縮されたオールタイムレコード

土曜日の予選セッションは、路面温度が49℃〜50℃に達する酷暑の中で実施されました。タイヤへの負荷が非常に高まる環境下において、各チームはグリップ性能を最大限に引き出す戦略を採っています。
Moto2クラスでは、すべてのライダーがフロントに「SC1」、リアに「SC0」という前後のソフトコンパウンドを選択。土曜朝のFP2で地元チェコのFilip Salač(Kalex)が従来の記録を破ると、続く予選ではDavid Alonso(Kalex)が1分57.718をマークしてポールポジションを獲得しました。これは昨年にBarry Baltusが記録した従来のオールタイムラップレコード(1分58.322)を0.6秒も更新する数値です。
また、Moto3クラスでも同様のレコード更新劇が見られました。David Almansa(KTM)が前後ともにソフトコンパウンドの「SC1」を装着し、2分04.069という驚異的なタイムでポールポジションを獲得。2025年にGuido Piniが記録した従来のベンチマーク(205.019)を1秒近く(0.95秒)も短縮する結果を残しています。
決勝:バルビエ氏の予測通りとなったタイヤ選択と、レースタイムの大幅短縮
予選終了時、ピレリのモーターサイクルレーシング・ディレクターであるジョルジオ・バルビエ氏は、翌日の決勝に向けて「Moto2はソフトソリューションが継続されるだろうが、Moto3では前後ミディアムのSC2がほぼ確実に好まれるだろう」との予測を立てていました。日曜日の決勝レースは、まさにその予測通りの展開となります。

路面温度が54℃まで達したMoto2クラスでは、1名を除く全ライダーが予選と同様に前後ソフト(SC1/SC0)を選択して決勝を戦いました。レースはIván Ortolá(Kalex)がチェッカー直前でAlonsoをオーバーテイクして優勝を飾り、3位には地元マニファクチャラーの期待を背負ったSalačが入賞。レース全体のタイムは35分53秒143を記録し、昨年より10秒以上も短縮されました。これは1周あたり約0.6秒のペースアップを意味します。さらに、Salačが6周目に記録した1分58秒590は、従来のレースラップレコードを約0.9秒更新する新記録となりました。
一方、路面温度47℃の中で行われたMoto3クラスでは、1名を除き全車が前後ミディアム(SC2)へとシフト。14番グリッドからスタートしたHakim Danish(KTM)が追い上げを見せてクラス初優勝を飾っています。このミディアムタイヤでのレースも非常にペースが速く、全体のタイムは昨年比で6.4秒短縮。Veda Pratama(Honda)が叩き出した新レースファステストラップ(2分04秒524)は、昨年のレース記録を0.930秒更新しただけでなく、前述した昨年のオールタイムラップレコードすら約0.5秒上回るスピードでした。
総括:「同じ仕様」だからこそ実証された、タイヤの汎用性とチームの成熟
高温環境というタフな条件下において、なぜこれほどのハイスピードレースが成立したのか。バルビエ氏は今回のリザルトについて以下のように分析しています。
「最も重要なのは、両カテゴリーにおける昨年比での顕著なパフォーマンス向上です。レースは大幅に速いペースで行われ、より高い路面温度の中で、昨年と同じソリューションを使用しながらも、ファステストラップは明確な進歩を示しました」
この分析が示す通り、タイヤの仕様を昨年から変更していないにもかかわらず一貫してタイムが向上したという事実は、ピレリタイヤが持つ作動レンジの広さと、多様な動作条件に対応する「汎用性(Versatility)」を証明しています。また、タイヤの特性が不変であるからこそ、各チームやライダーがプロダクトへの習熟度を高め、性能を極限まで引き出すセットアップを構築できたことも、今回のレコードラッシュを支えた大きなファクトと言えます。
次なるステップ:2027年最高峰クラスへの開発を見据えて
チェコGP閉幕の翌日、ブルノサーキットではすべてのマニュファクチャラーが参加する重要なテストセッションが実施されました。このテストの目的は、2027年からMotoGP™の最高峰クラスへ導入される新タイヤの開発です。
過酷な気候変化の中でも安定したハイスピード性能と高い適応力を示したピレリタイヤ。中軽量クラスのワンメイクサプライヤーとして蓄積された確かなデータと技術が、2027年の最高峰クラスにおいてどのような革新をもたらすのか、今後の開発プロセスに注目が集まります。
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