2026年のWorldSBKアッセン戦は、ニコロ・ブレガの強さと、2026年仕様のピレリ・リアレンジの使い分けが鮮明に表れた週末でした。ブレガは予選で新ラップレコードを樹立し、Race 1、Superpole Race、Race 2をすべて制覇。これで今季9戦9勝となり、開幕から続く圧倒的な流れをオランダでも維持しました。

今回のアッセン戦をタイヤの視点から見るうえで重要だったのは、事前に注目された開発版F0298の有無以上に、SCXとSC0がそれぞれの役割をはっきり示したことです。予選とSuperpole RaceではSCXが速さを担い、ロングレースではSC0が安定した選択肢として支持されました。低温傾向の週末だったからこそ、その違いはより明確に見えました。

まず、今回のポイントは次の3点です。

  • 予選とSuperpole RaceではSCXが速さを発揮したこと
  • Race 1とRace 2では全車がSC0を選択したこと
  • 開発版F0298は未使用に終わり、実戦ではSCXとSC0の役割分担が明確になったこと

予選とSuperpole RaceでSCXが選ばれた理由と、ブレガの新ラップレコード

勝利後パドックへと戻るブレガ

土曜の予選でブレガが履いたのは、リアのSCXスーパーソフトでした。記録した1分32秒144は、2025年にSCQエクストラソフトで記録された1分32秒596を上回る新ラップレコードです。低めの気温でも高い競争力を発揮できることを、SCXはこの時点ではっきり示しました。

その流れは日曜のSuperpole Raceでも変わりません。22台中20台がリアにSCXを選択し、SC0を選んだのは2台だけでした。ブレガはこの10周レースでも勝利を挙げ、さらに2周目には1分32秒357のファステストラップを記録しています。SCXは一発の速さだけでなく、短い距離で決定的な武器になることを改めて印象づけました。

フロントは予選から決勝まで一貫してSC1ソフトが中心で、Superpole Raceでも全車がSC1を選んでいます。

Race 1とRace 2で全車がSC0を選択。ロングレースで支持された理由

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一方、Race 1とRace 2のロングレースでは状況がはっきり分かれました。WorldSBKでは両レースとも、全22台がフロントにSC1、リアにSC0を選択。ロングランで求められる一貫性と安心感の面で、ライダーたちはSC0を最も信頼できる選択肢と判断したことになります。

Race 1のコンディションは気温16℃、路面温度22℃でした。Race 2は気温11℃、路面温度16℃で、日曜が週末で最も寒い一日となりました。こうした条件の中でもSC0はロングレース用リアとして揺るがず、Race 2の決勝タイムは32分58秒347。前年より19.246秒速く、平均ラップでも0.9秒短縮したとされています。低温下でも安定して周回を重ねられるSC0の強みが、結果にも表れた格好です。

開発版F0298は未使用。アッセンで実戦投入されなかった背景

事前のプレビューでは、開発版ソフトF0298の投入が大きな話題でした。しかし実戦では、Race 1もRace 2もF0298を選ぶライダーは現れませんでした。Race 1後のピレリは、低めの気温を踏まえ、ライダーたちは開発版F0298ではなく、すでに確立されたSC0を選んだと説明しています。

ここで重要なのは、F0298を単純に否定的に捉えないことです。今回の事実は、アッセンの気温や路面状況、そしてレース距離を踏まえたとき、現場ではSC0がより現実的な選択肢と判断されたということです。今回のアッセン戦は、新スペックの可否を断定する場ではなく、2026年の標準レンジであるSCXとSC0が、それぞれの条件で明確な役割を果たした週末として見るのが自然です。

ブレガの3戦全勝をレース結果から整理。予選、Superpole Race、Race 1、Race 2の流れ

今回の週末をさらに印象深いものにしたのが、ブレガの完璧な結果です。予選ではSCXでレコードを更新し、Superpole RaceでもSCXで勝利。ロングレースではSC0でRace 1とRace 2を制し、3戦全勝を達成しました。つまりブレガは、アッセンで求められた二つの異なる役割を、SCXとSC0の両方で結果に結びつけたことになります。

Race 1ではレクオナが前に出る場面もありましたが、最終的にブレガが勝利し、2位レクオナ、3位サム・ロウズという結果になりました。Race 2でも序盤に順位変動がありながら、ブレガが主導権を取り戻して再び勝利。週末を通じて、ブレガの強さとドゥカティ勢の存在感が際立つ流れとなりました。

Race2表彰台の様子

WorldSSP Race 1はSCX優勢。マシア優勝とタイヤ選択の傾向

同じアッセンでも、WorldSSPではタイヤ選択の傾向がさらに分かりやすく表れました。Race 1では34台中24台がリアにSCXを選択し、SC0を選んだのは10台でした。優勝したハウメ・マシア、2位アルベルト・アレナスもSCXを選択しており、Race 1ではSCXが優勢な流れでした。

フロントは全車がSC1で一致しており、勝負を分けたのは主にリアの選択だったと言えます。

WorldSSP Race 2はSC0優勢。低温と湿った路面が選択を変えた理由

ところがRace 2では状況が一変します。気温低下と湿り気のある路面の影響で、34台中30台がSC0を選択し、SCXは4台のみでした。レースはクラッシュにより13周で赤旗終了となり、フィリップ・エッテルが勝利しています。

ピレリは、SC0が寒さによる摩耗に対してより保護されていることを理由に挙げており、同じアッセンでもコンディションが変われば最適解が変わることを、WorldSSPはよりはっきり示しました。ここでもフロントは全車SC1でした。

アッセン戦で見えた2026年ピレリ・リアレンジの役割分担。SCXとSC0はどう使い分けられたか

今回のアッセン戦で見えたのは、2026年のピレリ・リアレンジが、条件に応じて役割を明確に分けられるレンジだということです。SCXは予選と短距離で速さを引き出し、SC0はロングレースで安定感を担いました。低温傾向の週末だったからこそ、その機能分担はよりくっきりと表れました。

そして、その違いを最も鮮やかに示したのがブレガの3戦全勝でした。アッセンは、ひとりのライダーの強さだけでなく、SCXとSC0がそれぞれの領域でどれだけ高い完成度を持っているかを証明したラウンドだったと言えそうです。