2026年のWorldSBKダッチラウンドで、ピレリは新たな開発版ソフト・リアタイヤ「F0298」を投入します。舞台は、高速区間とテクニカル区間が混在し、天候変化の影響も受けやすいTTサーキット・アッセン。新スペックの初投入という話題性に加え、その狙いがコース特性とどう結びつくのかも注目点です。

まず、今回のポイントは次の3点です。

  • 新開発リア「F0298」が初投入されること
  • アッセンの特性に合わせて、リアに複数の有力候補が用意されていること
  • ピレリの継続的な開発の流れが見えるラウンドであること

最大のトピック、新開発リア「F0298」の投入

スーパーバイク世界選手権2026アッセン戦のタイヤアロケーション

今回もっとも大きなトピックは、WorldSBKクラスに向けて新しい開発版ソフト・リアタイヤ「F0298」が持ち込まれることです。ピレリによれば、このF0298は安定性の向上と、レース距離を通したパフォーマンスの一貫性向上を狙って開発されたもので、既存の標準ソフトSC0に対する新たな選択肢として位置づけられています。

単に新しいタイヤが追加された、というだけではありません。一発の速さだけではなく、周回を重ねた中でも安定して性能を発揮できるかどうか。そこが今回の評価軸です。レース全体での再現性と扱いやすさ。F0298の注目点です。

タイヤ選択の難しさが際立つTTサーキット・アッセン

アッセンサーキットでのレース模様
オランダのアッセンサーキット。写真はWSBK2025シーズンのレースの様子

TTサーキット・アッセンは、WorldSBKの開催地の中でも個性がはっきりしたコースです。低速・中速・高速コーナーが混在し、速さとテクニカルさをあわせ持つレイアウト。ひとつの性格だけで割り切れないからこそ、マシンセットアップだけでなく、どのタイヤをどの条件で使うかが週末全体を左右します。

さらに、アッセンでは天候の読みづらさも大きな要素です。オランダのこの時期は雨の可能性も十分にあり、ドライ用スリックだけでなく、IntermediateとRainも視野に入ります。条件が刻々と変わる可能性があるからこそ、安定性と一貫性を重視したF0298の投入は、このコースにかなったアプローチと言えそうです。

今回のWorldSBKに持ち込まれるタイヤレンジ

今回、WorldSBKライダーに用意されるタイヤは以下の通りです。

フロント

  • SC1(ソフト)
  • SC2(ミディアム)

リア

  • SC0(ソフト)
  • F0298(開発版ソフト)
  • SC1(ミディアム)
  • SCX(スーパーソフト)

レイン対応

  • Intermediate
  • Rain

顔ぶれだけを見ると整理されたラインアップですが、実際にはこの中からアッセンの路面温度や天候、各セッションの性格に合わせてどう使い分けるかが焦点になります。とくに今回は、リアの選択肢の広さが見どころです。

F0298だけではない、SCXとSC1リアの重要性

今回のリアタイヤ選択は、F0298だけに注目していると全体像を見落としがちです。ピレリは、アッセンのコース特性や低温の可能性を踏まえ、SCXをプラクティス、予選、スーパーポールレース向けの有力な選択肢として位置づけています。新開発タイヤの投入だけでなく、既存レンジの中にもこの条件に合ったスペックがしっかり用意されている、という構図です。

加えて、気温や路面温度が低い場合には、リアのSC1ミディアムも有力な代替候補になります。今回のアッセン戦では、「どれが絶対的な正解か」というよりも、条件をどう読むかによって適解が変わる可能性が高いでしょう。F0298がどの場面で選ばれ、SC0やSC1、SCXとどう使い分けられるのか。大きな見どころです。

割り当て本数から見える、F0298の本気度

1人あたりの割り当て本数を見ると、今回の評価の重みが見えてきます。

フロント:計28本

  • SC1:9本
  • SC2:8本
  • Intermediate:3本
  • Rain:8本

リア:計36本

  • SC0:8本
  • F0298:8本
  • SC1:5本
  • SCX:4本
  • Intermediate:3本
  • Rain:8本

ここで目を引くのは、F0298にも8本が割り当てられていることです。新しい開発スペックが参考用に少し持ち込まれた、という扱いではありません。既存のSC0と並べて、実戦の中でしっかり比較・評価する前提の本数構成。アッセンは、F0298の可能性を探る本格的な評価の場と言えそうです。

継続開発の流れの中で見るF0298

今回のF0298をより興味深くしているのが、ピレリが近年続けてきた開発の流れです。2026年のSC0は前年までE0125として使われていた仕様で、リアSC1は前年のD0286開発仕様が標準化されたもの。さらにSCXも、前年のE0126開発仕様が2026年から標準レンジ入りしたものです。

つまりピレリは、開発スペックを実戦で試し、その有効性が確認できたものを翌年以降の標準仕様へつなげていくサイクルを続けています。そうした流れを踏まえると、今回のF0298も単なる一戦限りの新顔ではありません。今後のスタンダード候補。その視点でも注目したい存在です。

他クラスのタイヤ供給も整理

今回のダッチラウンドでは、WorldSBK以外のクラスにもそれぞれタイヤが供給されます。

WorldSSP

  • フロント:SC1 / SC2
  • リア:SCX / SC0

WorldWCR

  • 前後ともSC1
  • サイズは120/70フロント、180/60リア

主役はもちろんWorldSBKですが、週末全体を見渡すと、各クラスで求められる条件に応じて供給が整理されていることも分かります。タイヤ選択の考え方を立体的に見るうえで、押さえておきたいポイントです。

今回の見どころは、F0298がどんな文脈で評価されるか

今回のアッセン戦は、新開発リアF0298の初投入というニュースだけでも十分に注目に値します。ただ、その本質は「新しいから注目」という単純な話ではありません。高速区間とテクニカル区間が混在するコース、変わりやすい天候、低温の可能性、そして既存レンジとの比較。そうした条件が重なる中で、安定性とレース距離での一貫性を狙ったタイヤがどこまで有効性を示すのか。今回の核心です。

アッセンの週末は、目先のリザルトだけでなく、今後の方向性を占う場にもなりそうです。F0298がSC0に対する有力な代替候補として存在感を示すのか。それとも、コンディション次第でSC1やSCXの役割がより大きく浮かび上がるのか。タイヤ選択の流れを追うだけでも、かなり興味深いラウンドになりそうです。

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