写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
MotoGP第22戦バレンシアGP
11月14日~16日/スペイン リカルド・トルモ・サーキット
初のバレンシアに向け、Moto2リヤにスーパーソフトとソフトの開発仕様を割り当て
2025年シーズン最終戦が、2年ぶりにバレンシアのリカルド・トルモ・サーキットで開催されました。昨年も例年のようにバレンシアGPが最終戦として予定されていたものの、バレンシアを襲った洪水の影響で、バルセロナ-カタルーニャ・サーキットに変更となったからです。2024年よりMoto2、Moto3クラスのワンメイクタイヤサプライヤーに就任したピレリにとっては、2023年シーズン末にテストを行ったとはいえ、初めてのバレンシアGPのレースウイークとなりました。
このバレンシアGPのMoto2クラス向けに、ピレリはリヤタイヤとしてスーパーソフトの開発仕様E0126とソフトの開発仕様E0125をアロケーションしました。
Moto2クラスの決勝レースでは、すべてのライダーが、フロントにスタンダードのソフトSC1、リヤに開発仕様のスーパーソフトE0126を選択しています。
Moto3:古里太陽、今回は「少し残念」な3位
Moto3クラスに参戦する古里太陽(ホンダ・チームアジア)は、3列目9番手から決勝レースをスタートしました。レース序盤に表彰台を争うポジションまで浮上し、周回を重ねます。この週末、バレンシアは例年よりも暖かく、日中は20度を超えました。こうしたコンディションもあって、ハイペースでの争いとなりました。
古里も、度々その周のファステストを記録します。確かにペースがいい展開ではありましたが、これはある程度、想定内のものでした。
トップを走るのはエイドリアン・フェルナンデス(レオパード・レーシング)。フェルナンデスと古里、そしてマキシモ・キレス(CFMOTO・Valresa・アスパーチーム)が接戦を繰り広げる展開です。古里は残り3周でトップに立ちたいと考え、フェルナンデスとの優勝争いになるだろうとイメージしていました。
ただ、最後までキレスとのバトルも続きました。古里は残り2周の最終コーナーでキレスにかわされます。フェルナンデスと勝負するには2番手に浮上しなければなりません。古里は続く最終ラップ1コーナーでキレスを抜き返し、2番手を奪還。最終セクターでフェルナンデスに勝負を仕掛けようとするも及ばず、2番手でゴールしました。
2番手フィニッシュだった古里ですが、最終ラップにトラックリミットをオーバー(※フロントまたはリヤタイヤがコースの外に出ること)したため、1ポジションダウンのペナルティを受け、最終的な結果は3位となりました。
「勝ちにいきましたが、マキシモとの争いが少し激しかったですね。それで余裕がなくなってしまいました。タイヤとしてはいいマネジメントができていたと思いますが、少し残念です」
古里はこのレースに向けて、フロントにソフト(SC1)、リヤにミディアム(SC2)を選んでいました。フェルナンデスとキレスはフロント、リヤともにミディアム(SC2)。ただ、選んだタイヤについては「まったく問題ありませんでした」ということです。
最後のトラックリミットオーバーについても、勝つために仕掛けた勝負でした。
「勝つためにはアクセルを開けなければ、と思って開けたら滑り出してしまったんです。それでワイドになってしまいました。(フェルナンデスを)抜いても2位、抜けなくても3位という気持ちだったんです。これは仕方がなかったと思います」
前戦ポルトガルGPは、「目指した3位」でした。今回は、「優勝できなかった3位」。古里は悔しさをにじませていました。これが古里にとって、Moto3クラスでの最後のレースだったこともあり、期するものがあったようです。
「(Moto3で)最後のレースだったので、勝ちたかったですね。うれしいし、内容はよかったのですが、優勝できなかったのは少し残念です」
最終戦3位、3戦連続の表彰台という形で、古里はMoto3クラスの戦いを締めくくりました。2026年シーズンは、Moto2クラスに挑みます。
Moto3クラスに参戦する山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)は、左手小指の手術を受けたため、ポルトガルGPに続き、最終戦バレンシアGPも欠場となりました。
また、バレンシアGPには、三谷然がホンダ・チームアジアからMoto3クラスに参戦しました。2026年シーズン、三谷はMoto3クラスに同チームから参戦することが決まっており、ポルトガルGPから一足早くチームに合流しています。
三谷は2024年イデミツ・アジア・タレントカップのチャンピオンで、今季はFIMジュニアGP世界選手権とレッドブルMotoGPルーキーズカップに参戦。ピレリがサポートする「Road to MotoGP」の道のりを歩んできたライダーです。Moto3クラスの参戦は、インドネシアGP、ポルトガルGPに続き、3戦目となります。
24番手からスタートした三谷は、19番手付近の集団でポジションを争っていましたが、14周目に転倒を喫してリタイアとなりました。
「転倒したコーナーにはギャップがあって、それは毎周分かって走っていたのですが、いつも通りにアクセルを開けたつもりが、前のライダーを抜こうとしてクロスライン気味に立ち上がったのもあって、マシンの挙動が大きくなって転倒してしまいました」
「(来季、Moto3に参戦するにあたって)まだまだ遅い」と語り、オフシーズン中のトレーニングに励むと語っていました。
Moto2:佐々木歩夢がFP1の転倒で欠場
Moto2クラスでは、國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)が26番手からスタートして、20位でチェッカーを受けました。
「あまりいいフィーリングがなく、序盤から苦戦気味でした。今季を通して、走るポジションがあまり変わりませんでしたが、おそらく、今の自分の全力がこれだったのだと思います」
國井は、このレースで世界選手権での挑戦を終えます。
「世界選手権で走った自分に自信がつきましたし、戻ってこられてうれしかったです。同時に、あらためて世界選手権というのは本当に厳しいのだな、ということも実感できました」
来季も國井は、世界選手権から場所を移して、ライダーとして挑戦を続けるということです。
Moto2ライダーの佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)は、金曜日午前中のフリープラクティス1で転倒を喫し、右足を負傷して欠場となりました。
「6コーナーだったのですが、滑りやすいとは伝えられていたんです。本当に気をつけて走っていたのに転んでしまったので……、どうしようもなかったのかな、という転倒でした」
「転倒時に足を打ってしまい、かかとあたりを3カ所、骨折してしまいました。それで、ドクターストップがかかってしまったんです。思ったようなシーズンでもなかったし、終わり方でもなく、すごく悔しいですけどね」
「まずは足と、(オフシーズン中に腕上がりの手術をする)腕を治して、冬の間にたくさん努力して、来年に向けて準備していきたいと思います」
Moto2クラスは最終戦までチャンピオン争いがもつれこみ、日曜日の決勝レースの結果により、ディオゴ・モレイラ(イタルトランス・レーシングチーム)がブラジル人として史上初のチャンピオンに輝きました。





