写真:Gold & Goose / Red Bull Content Pool、伊藤英里
テキスト:伊藤英里

レッドブルMotoGPルーキーズカップ第2戦フランス大会
5月9日~11日/フランス ル・マン-ブガッティ・サーキット

レッドブルMotoGPルーキーズカップ第2戦フランス大会が、MotoGP第6戦フランスGPに併催で行われました。レッドブルMotoGPルーキーズカップは若手ライダー育成を目的とした、「Road to MotoGP」の一環です。2025年、MotoGPクラスデビューを果たした小椋藍もまた、この選手権出身のライダーのひとりです。

タイヤはピレリのワンメイクで、供給されるのは、イデミツ・アジア・タレントカップと同じくDIABLO SUPERBIKE SC2(ミディアム)のみです。マシンはKTMのRC250Rを使用します。コンパウンドの選択肢のないワンメイクタイヤ、ワンメイクマシンであることからも分かるように、この選手権ではライダーが「そこにあるもの」でいかに戦うかを考え、成長を促すレースとなっています。

今季、日本人ライダーとしては、2024年イデミツ・アジア・タレントカップチャンピオンの三谷然が参戦しています。なお、三谷はFIMジュニアGP世界選手権にも参戦中です。このFIMジュニアGP世界選手権もまた、ピレリがタイヤサプライヤーです。

金曜日、三谷に話を聞くと、ダブルエントリーをしているがゆえに、フランス大会ではマシンの乗り換えに苦しんでいると語っていました。前述のように、レッドブルMotoGPルーキーズカップのマシンはKTMですが、FIMジュニアGP世界選手権で三谷が走らせるマシンはホンダであり、走り方が異なるからです。

そんなフランス大会のレース1を、三谷は14番手からスタートしました。予選からブレーキングで止まらないという問題をマシンに抱えており、レース1にはセッティングを変えて挑みました。これによってブレーキングの問題は改善したものの、コーナリングの安定性に問題が出てしまいました。

レースは残り5周で赤旗が提示されて、そのまま終了となり、三谷は11位でした。

「ブレーキングでまったく安定しないので、集団のいちばん後ろで走っていました。ペースは悪くないのに、ブレーキングで無理をすると転倒しそうな挙動が出ていたので、抜けなかったんです。攻めたいのを我慢して、ずっと転倒しないように走っていました」

「終盤に無理をしてでも前に出て、集団の中でトップでゴールしようと思っていたんですが、その時点でレッドブラッグが出てしまいました。自分の中では、とても不完全燃焼なレースになってしまいましたね」

レース2が行われた日曜日は、朝から雨になりました。今季初のウエットコンディションで、三谷は好スタートを切ります。3周目には3番手に浮上しましたが、7周目に7コーナーで転倒を喫してリタイアに終わりました。ただ、自分のレース戦略に、三谷は後悔していませんでした。

「ずっと3番手を走っていて、ビッグスクリーンで見ていたら後ろからハキム(・ダニッシュ)がボクよりも1秒くらい速いペースで追い上げてきていたんです。ボクは前の2人と同じか、ボクのほうが少し速いペースだったので、『いくしかないな』と思いました。ルーキーズカップというのは、あの場面でセーブして表彰台、というステージじゃないと思ったんです。どんどん前にいかないといけないですから」

「それで攻め始めたら、自分が予期していなかったところで、横に振られて、ハイサイドして転倒してしまいました」

「完全にボクのミスでした。予期していなかったっていうのも、そこで気が抜けていたりして起こったと思います。もしあの場面でセーブしていたら、2位か3位を獲得できたはずです。でも、(攻めるという)判断は間違っていなかったのかなと思いますし、あの時点までは自分のベストを尽くせていたと思います」

転倒リタイアで終わったものの、レース2の内容は三谷にとって糧となるレースになりました。

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ウエットコンディションのなか、三谷は好スタートを切って3番手を走行した
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ル・マンでは、レッドブルMotoGPルーキーズカップのパドックはMotoGPから離れたところにあった。グリッドまでは、ライダーがバイクを手で押して(あるいはまたがって)移動する
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マシンもタイヤもワンメイク。ライダーは自らの適応力や技量をメインの武器として戦う

レッドブルMotoGPルーキーズカップ第3戦アラゴン大会は、6月7日から8日にかけて、スペインのモーターランド・アラゴンで行われます。

#34 三谷 然(みたに・ぜん)

2007年3月27日生まれ。
2024年イデミツ・アジア・タレントカップ チャンピオン。
2025年は戦いの軸足をヨーロッパに移し、レッドブルMotoGPルーキーズカップのほか、FIMジュニアGP世界選手権にもダブルエントリーしている。

「来年のMoto3クラスのシートを獲得することが、今年の目標です。そのために毎戦、結果を残していかなければ、と思っています。もうひとつの目標は、もてぎの日本GPのMoto3にワイルドカード参戦で出たいですね」

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Road to MotoGP

ピレリとドルナによって推進される、若手ライダー育成のためのプラットフォーム。将来的には、各国間の格差が出ないよう世界レベルで将来のMoto GPライダー育成を目的とする。現在はMini GP、各エリアのタレントカップ、Moto3、 Moto2、そしてWSBK各カテゴリーにピレリがタイヤを供給し、タイヤのイコールコンディション化を図っている。