写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
MotoGP第20戦ソリダリティGP
11月15日~17日/スペイン バルセロナ-カタルーニャ・サーキット
開催地がバルセロナへ変更となって行われた最終戦
MotoGPの2024年シーズン最終戦は、ソリダリティGP・オブ・バルセロナという大会名で、スペインのバルセロナ-カタルーニャ・サーキットで行われました。当初はバルセロナから350㎞ほど南に位置するバレンシアのリカルド・トルモ・サーキットで開催予定だったのですが、10月末にスペイン東部、バレンシア州を襲った豪雨と洪水被害により、開催地が変更になったのです。
大会名は「連帯」という意味の「solidarity」が冠され、バレンシアのためのレース開催であるとして、ピットレーンをはじめとする各部に「RACING FOR VALENCIA」と明示されていました。バルセロナ-カタルーニャ・サーキットでは今年5月下旬にカタルーニャGPが行われており、今大会で2度目の開催となります。
チャンピオン小椋藍、最後のMoto2レース
今大会は、小椋藍(MTヘルメット – MSI)にとって、Moto2クラスでの最後のレースとなりました。小椋はこのレースを「表彰台で終わりたい」と考えており、予選Q2では2列目5番手を獲得します。レース後半に強い小椋としては、許容範囲のスタート位置だったはずです。
レースではアロン・カネト(ファンティック・レーシング)やマヌエル・ゴンザレス(グレシーニMoto2)が先行しますが、小椋はこの2人は表彰台争いに絡むと予想していました。この2人の後方、3番手につけていた小椋ですが、その小椋の背後には、レース序盤からディオゴ・モレイラ(イタルトランス・レーシング・チーム)がぴたりとつけます。
「最後、いつもなら(モレイラが)離れるんですけど、今回は調子がよかったのか、ずっと後ろにいて、がつがつしていましたね。いつもならそこまででもないんですけど」
最終ラップはモレイラとの3番手争いとなり、最終コーナーの進入でモレイラの先行を許した小椋は、4位でフィニッシュとなりました。
「最終ラップ、最終コーナーのひとつ前のコーナーで、できることはしたんですけど、モレイラも上手で、入られちゃいました」
悔しさからか言葉少なにレースを振り返る小椋に「思ったよりもモレイラの勢いがよかったですか?」と聞けば、「そうですね……」と、考え込んでいました。
「今日は彼が上手でした。すごく。単純に上回られちゃったなって感じです」
フィニッシュライン直前で表彰台を失い、レース直後はとても悔しかったと言う小椋。しかし、Moto2クラスで最後のレースを終えてピットに戻った小椋をチームが迎え、小椋もバーンナウトでそれに応えました。ヘルメットのシールドを上げた小椋は、笑顔でした。クルーチーフのノーマン・ランクやメカニックとも、最後のレースだったのです。
「今日起きた出来事じゃないですけど、あらためてチャンピオン獲得を喜んだり、全体的な喜びがありました」
そのときの心情について、小椋はそう語っています。
小椋はこの日をもってMoto2ライダーに区切りをつけ、2日後の11月19日、公式テストでMotoGPライダーとしての一歩を踏み出しました。
Moto3山中琉聖は表彰台にあと一歩の5位
Moto3クラスに参戦する山中琉聖(MTヘルメット – MSI)は、15番手からスタートし、大きな先頭集団のなかで6、7番手付近を走行して、4番手で最終ラップを迎えました。しかし、前のライダーがオーバーランから戻って来たときの影響を受けたり、また別のライダーに後ろから追突されるなどして後退し、5位でゴールしました。
「残り3、4周あたりから動き出して、最終ラップはすごくいい位置取りで表彰台圏内でいられたんですけど、たらればになりますが、その2人の動きが影響しました。(表彰台獲得)いけるかなと思ったんですけど……、難しいですね。ただ、結果は5位でしたが、今年、いちばんの走りができたと思っています」
8番手からのスタートとなった古里太陽(ホンダ・チームアジア)も集団で7、8番手あたりを走り、7位でフィニッシュしています。
「難しいレースでした」と言いながらも、そのなかで「そこそこの順位でゴールできたことはポジティブだったと思います」と語っています。
「この流れのウイークで、このような形で終われたのはよかったと思います。シーズンを通して、後半によくなっていき、自分でも成長できたのでよかったと思います」
鈴木竜生(リキモリ・ハスクバーナ・インタクトGP)は10番手スタート。マシントラブルが発生した影響で、13位で最終戦を締めくくりました。前戦マレーシアでもトラブルが発生していましたが、原因は不明ながら、同じことが起きないように改善したはずだった、ということです。今回の原因も不明ということでした。
「原因が分からないんですけど、またメカニカル・トラブルでバイクのほうに問題が出て、うまく走れずに終わっちゃいました。2戦連続で自分ではないところによるものでレースを終えなければならないのは悔しいです」
Moto2クラスの佐々木歩夢(ヤマハVR46マスターキャンプ・チーム)は、前戦マレーシアGPの金曜日プラクティス1の転倒で右手、右足を骨折し、最終戦を欠場してシーズンを終えました。
ピレリがMoto2、Moto3クラスのタイヤサプライヤーとして最初のシーズンとなった2024年シーズンは、こうして幕を下ろしました。2025年シーズンは2月28日から3月2日にかけて行われるタイGPで開幕します。