バイアスとラジアル、どちらが良い? そんな素朴な疑問をディアブロマンにぶつけたら…!?

なんとなくバイアスタイヤはローテクで、高性能なのはラジアルタイヤと思っていたけど……、タイヤの進化はあくまで「バイクありき」だという。ラジアルタイヤが登場したのも「バイクが速くなったから必要になってきた」から。じゃあ、なぜ全部ラジアルタイヤにならないんだろう。だってラジアルタイヤの方が新しいし、高性能なんですよね?

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『教えてディアブロマンVol.7』でタイヤの中身や作り方を教えてもらったけど、知らないことばかりでした。当たり前に履いているタイヤだけど、知識が増えるととても楽しいですね。ますますタイヤに興味が湧いたんですが、今回はバイアスタイヤとラジアルタイヤの違いを教えてください。

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やっぱりそこって気になるよね。それじゃ、あなたのバイクのタイヤはバイアスとラジアル、どちらのタイヤを履いているのかな?

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はい、アレっ?……えーっと、ラジアルタイヤだったような気がします……。

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あれれっ(笑)。

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いや、でも、今時のバイクって大半がラジアルタイヤじゃないの? ラジアルの方が高性能なんですよね。

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まぁまぁ、興奮しないで。それでは歴史とか構造も含めて、バイアスとラジアルの違いを説明していこう。

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よろしくお願いします!

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まずバイクの空気入りタイヤは、最初はバイアスだけだったんだ。これは前回のタイヤの中身で解説した、薄くゴムを敷いた布地のような「カーカス」を2層以上重ねて、その上にトレッドのゴムが貼られる構造だね。

カーカスの繊維の方向がタイヤの回転方向に対して斜め(バイアス)に貼っているから、バイアスって呼ぶんだ。2層あるのは、互い違いの角度に貼っているからだね。

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「バイアス構造」
バイクの空気入りタイヤの最初の形態。現在も小~中排気量の実用車やスクーター、オフロード用(レース用も含む)のタイヤに多く採用されている
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スポークホイールが主流で、荷重のかかり方がロードと異なるオフロードバイクは現在もバイアスタイヤを使用することが多い。
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スクーターのタイヤは大半がバイアスタイヤ。もちろん小排気量車もバイアスがメイン。そう考えると世の中のタイヤの大半はまだまだバイアスなのだ。
教えてディアブロマンVol.7【タイヤの「中身」って、どうなっているんですか? 全部ゴムで出来ているんじゃないの?】はこちら



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あれ?カーカスの上に「ベルト」を巻くんじゃなかったでしたっけ?

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いや、純粋なバイアスタイヤにはベルトはないんだ。このバイアス方向に貼ったカーカスは抵抗力や弾力性が強くて変形しにくい。だから負荷が大きい場合、たとえば四輪のトラック用バイアスタイヤはカーカスが14層もあったりするよ。

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へ~、でもバイクはトラックみたいに重くないし、荷物も運ばないですよね。

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そうだね。でもバイクも大昔からどんどん進化して、オンロード車は排気量がアップしてパワーが増したり、それに伴って車重が重くなったりした。また、オフロード車は軽量だけどジャンプなど走りが激しくなって、やっぱり強度が必要だから、バイアスタイヤで対応していたんだよ。

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なるほど~。

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ところがパワーアップすると、とくにオンロード車はスピードもアップする。タイヤの回転する速度が高くなって遠心力が大きくなる。すると、その遠心力でタイヤが膨らんでしまうんだ。

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でも、そんな時はカーカスを何層も重ねれば、強度が高くなるんでしょ?

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そうだね。確かに耐荷重や剛性は高くなるけど、遠心力で膨らむ方向の変形はなかなか抑えられない。そこで考案されたのが「ベルテッドバイアス構造」。2層以上のカーカスの上に、繊維素材で作ったベルトを巻き付けて、遠心力で膨らまないようにしたんだ。

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「ベルテッド バイアス構造」
バイアス構造に加え、カーカスの上に繊維素材のベルトを巻いて、遠心力でタイヤが膨らむのを抑えている。現在も一部のクルーザーモデルに採用されている。



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なるほど、これで高速域にも対応できるようになったんですね。これで高出力のロードスポーツにもバッチリですね。

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そうなんだ。でもね、バイクはますます進化して、さらにハイスピード化。しかも重量のある大排気量車も真っ直ぐに速く走るだけではなくて、高いコーナリング性能も要求されるようになってきたのはご存知の通り。

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コーナリング性能は、ベルテッドバイアスじゃダメなんですか?

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直線だけなら強度を増せばよいけれど、コーナリングには不向きになってくるんだ。そこでバイアスとはまったく異なる発想で、カーカスをタイヤの回転方向に対して垂直(ラジアル)に一層だけ巻いて柔軟性を出して、車体がバンクしてコーナリングする時は、変形することで高いグリップ力や旋回力を生み出すようにしたんだ。

そして高速走行に対しては、遠心力で膨らんでしまわないように、カーカスの上にベルトを巻いた。これが1980年代の中頃に登場した「ラジアル構造」なんだ。

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コーナリング性能を上げるには、タイヤに柔軟性が必要なんですね。

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[ラジアル構造」
回転方向に対して90度に巻いた一層のカーカスの上に、ピレリはスチール素材のベルトを0度の方向で巻き付ける。現在、ラジアルタイヤは、スピードの出るロードスポーツモデルの多くが採用している
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バイクの進化に合わせてタイヤも進化。ラジアル化してからコーナリング性能は飛躍的に向上した。表面的には分かりづらいがタイヤの中身は日進月歩で進化しており、グリップだけでなく、しなやかさや快適性、そして耐久性までもが大きくアップしている。



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でも、高速時の直進安定性とか耐久性を高めるにはやっぱり強度も必要で、そこで登場したのがメッツラーとピレリが考案した「スチールベルト」なんだよ。強度が高い上に衝撃吸収性に優れるから、乗り心地も良いんだ。

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ここでもスチールベルトが重要な役割を果たしているんですね。なんだかタイヤのことが色々と繋がってきて楽しくなってきましたよ。

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そうだね。そしてラジアル構造から派生した技術として「ラジアルクロスプライベルト構造」というのがあるんだ。これは主にロードスポーツモデルのフロントタイヤ用で、カーカスが2層あってタイヤの回転方向に対して少しだけ斜めに角度を付けて巻いているんだ。

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「ラジアル クロスプライベルト構造」
ラジアル構造から派生。回転方向に対して斜めに角度を付けた2層のカーカスの上にベルトを巻いている。スピードの出るロードスポーツモデルのフロントタイヤに多く採用される



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ん?? なんですか、それ?

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ちょっと難しいよね(笑)。専門的な話になるんだけれど、フロントタイヤってリヤタイヤより細いでしょ。すると中に入っている空気の量が少ないため、柔軟性の高い純粋なラジアル構造だと、200km/hとかの高速からのブレーキングに耐えられないんだ。そこでロードスポーツ用のフロントタイヤは、強度を確保するために少し角度を付けた2層のカーカスを使ったラジアルクロスプライベルト構造にしているんだ。

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やっぱり難しい……。

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ゴメンゴメン(笑)。まぁ、バイアス構造(ベルテッドバイアス構造を含む)は強度があって頑丈だけど高速向きではなくて、ラジアル構造(ラジアルクロスプライベルト構造を含む)は高速走行やコーナリングのスポーツ向き、って知っておけば大丈夫だよ。

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なるほど~。ということは、やっぱりラジアルの方が高性能なんですね!

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う~ん、そう決めてしまうのはどうかな?。バイクの高速化やスポーツ性の追求に合わせてラジアルが登場したのは事実だけど、バイアスとラジアルのどちらにメリットがあるかは、あくまでバイクの種類や使い方によるんだ。

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それはなぜですか?

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たとえば市販バイクで、バイアスタイヤとラジアルタイヤの「境い」って、どのあたりの排気量か知っている?

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う~ん、わかりません。

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ヤマハのYZF-R3とR25、MT-03とMT-25は、3シリーズがラジアルタイヤで25シリーズがバイアスタイヤを標準装着。コーナリングを楽しみたい25オーナーは、タイヤ交換の際にラジアルタイヤを選ぶと、バイクのキャラクターがガラリと変わるのが分かるはず!


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ロードスポーツモデルだと、おおむね250ccクラスかな。たとえばホンダだとCBR250RRはラジアルタイヤで、レブル250はバイアスタイヤを装着するなど、バイクのジャンルによって異なる。でも、125ccクラス以下になると大抵はバイアスタイヤになるかな。

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それはバイク本体の性能差に合わせている、ってことですか? だったらやっぱりラジアルの方が高性能ってことじゃ……。

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たしかにそれもあるけれど、125cc以下は高速道路を走れないから、高速走行に適したラジアルが必要ない、とも言えるよね。

それにモトクロスやエンデューロなどの本格的なオフロードレースに使うタイヤは、現在もバイアスだよ。大ジャンプからの着地など大きな衝撃に耐える必要はあるけど、200km/hを超えるようなスピードで走ることはあまりないからね。

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DIABLO ROSSO™ SCOOTER
スクーター用のバイアスタイヤにもスポーツマインドを忘れないのが、ピレリのフィロソフィー。フロントは10〜17インチ、リヤは10〜15インチまで様々なサイズを用意する。
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SCORPION™ MX 32™ MID SOFT
モトクロス用のタイヤは競技用でもバイアス。様々な路面に対応し、激しい走りにも応える。フロントは10〜21インチ、リヤは12〜19インチまで様々なサイズを用意する。


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そうなんですか!

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さらに重要なのは「生産コストの差」。前回、タイヤの作り方を解説したけれど、じつはラジアルはバイアスより約2倍の生産コストがかかるんだ。

これは主に材料費の差ではなくて、生産する管理と手間の問題。大まかな作り方は同じだけど、ラジアルの方が生産するための工程が断然と多い上に生産管理を厳密に行わないとならない。だから製造する工場の設備や管理する技術において、ラジアルタイヤを作れる国と作れない国があるくらいなんだよ。

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そんな違いがあるんですか!

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それに「バイク」という枠で世界を見たら、250ccを超えるロードスポーツモデルよりもスクーターや実用車の方が圧倒的に多い。ラジアルを作れる、作れないもそうだけれど、それらのスクーターや実用車は新車時もタイヤ交換時も「価格の安さ」が重要でしょ。そう考えるとコストパフォーマンスという性能に関してはバイアスの方が上ってことだよね。

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たしかに通勤だけならコストは低い方が助かりますね。やっぱり使い方で選ぶのが正解なのかな?

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基本的には、標準タイヤがラジアルなのかバイアスなのかで、それに合わせれば良いんじゃないかな。

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だったら、愛車の標準タイヤがバイアスなら、交換する時もバイアスを選ぶべきですか?

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そんなことはないよ。たとえば公道を走る上ではバイアスで何ら問題ないだろうけれど、スポーツ性を高めたいとか要望があるなら、ラジアルを選ぶのも良いんじゃないかな。たしかに価格は高いけれど、その分のメリットがある。

たとえば近年はサーキット走行会も人気があるし、250ccクラスで参加しているライダーも増えたよね。そんなライダーは、ぜひラジアルを試してみてほしい。ラジアルだとハイグリップやスポーツタイプなど選択肢も広がるからね。

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DIABLO™ SUPERCORSA SP - V4
公道用スポーツタイヤの最高峰であるDIABLO™ SUPER CORSA SP-V4は。リヤタイヤに250ccスポーツバイクにフィットする140サイズを用意。サーキット走行に目覚めた方にもオススメ。


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なんとなく「バイアスよりラジアルの方が高性能」なイメージがあったけど、コスト的なメリットや使い方も考えると「どちらが偉いとか高性能」ってものではないんですね。

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そうだね。前回解説したチューブタイヤとチューブレスタイヤもそうだけれど、バイアスやラジアルとかタイヤの構造や進化って、あくまでバイクの進化やそこでの要求に合わせて生まれてくるからね。

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その中から、自分に合ったタイヤを探すのがバイク趣味のおもしろさなんですよね!

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おっ、素晴らしい答えだね!

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いつもディアブロマンに言われていますから(笑)