バイク用タイヤに詳しいディアブロマンだけど、直訳したら悪魔人? というか、なんで悪魔なの?

ピレリのロードスポーツ用のタイヤといえばDIABLO(ディアブロ)のネーミングが思い浮かびますが、他にもピレリのバイク用タイヤには様々な「名前」が付いていますよね? それって、何か理由があるんですか?

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あの~、今さらなんだけど、貴方はなんでディアブロマンって呼ばれているんですか?

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……いきなりすごい質問だね(苦笑)。いま、ピレリのロードスポーツ用タイヤはDIABLO(ディアブロ)シリーズだから、そこから名付けられたんだ。

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ピレリのスポーツタイヤの様々な製品名の愛称となっているDIABLO(ディアブロ)。写真はDIABLO ROSSO Ⅳ CORSA(クワトロ コルサ)のリリースの一部。INFERNAL GRIP(悪魔のようなグリップ)とあり、ピレリはタイヤのネーミングやキャッチコピーで独自の世界観を作り上げている。


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そうですよね。それはなんとなくわかっていましたけど、そもそもディアブロって、イタリア語で「悪魔」のコトですよね。なんでタイヤにそんな物騒(?)な名前を付けたんですか?

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悪魔って、架空の存在だよね。凄い力を持っている想像上のキャラクターっていうか。そういう意味で、タイヤ性能において「人知を超えたパフォーマンスを目指そう!」という狙いで、ディアブロと命名したんだ。

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なるほど~! 悪魔と言いつつ、悪者ではなくて安心したよ。けっこう深い意味というか、志があったんですね。ところで、ディアブロという名前はいつ頃ついたんですか?

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そうだね、その命名までの歴史を簡単に説明しようか。じつは昔のピレリのタイヤは、英文字と数字の組み合わせの品番がそのまま製品名になっていて、今のような名前がついていなかったんだ。

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そうなんですか?

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でもね、1970年代後半に、当時のトップレンジのスポーツバイク用に向けた高性能タイヤに「PHANTOM(ファントム)」というペットネームをつけて販売したんだ。

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あれっ? いまもファントム・スポーツコンプという名前のタイヤがありますよね?

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そう、まさにそのタイヤのモチーフになったのが当時のファントムで、正確には前輪用がMT29で後輪用がMT28という製品名の、高性能なバイアスタイヤだった。そして時代が流れて、1986年にバイク用のラジアルタイヤが初めて登場したんだけど、それがピレリの「MP7」というタイヤなんだ。

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1970年代後半に登場したファントムのこのパターンに憧れたライダーは多い。現在は初代ファントムをオマージュしたファントムシリーズを用意。ストリートを重視したファントム・スポーツコンプとハイグリップタイヤのファントム・スポーツコンプRSをラインナップし、写真はRS



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製品名は、数字とアルファベットだけで名前はなかったんですか?

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じつは四輪用の高性能タイヤでP7という人気のタイヤがあって、それにバイクを表すMotoのMをくっつけて、MP7という名前にしたんだ。

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なるほど。アルファベットと数字の組み合わせだけど、コレも立派な製品のネーミングなんですね。

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1984年に登場したピレリのMP7。世界初のバイク用市販ラジアルタイヤだった。


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そして同時期の1986年に、ドイツのメッツラーがピレリの傘下に入った。当時からメッツラーが持っていた「スチールベルト構造」を共同で研究して、ラジアルタイヤをどんどん進化させたんだ。その頃にリリースしたロードスポーツ用のラジアルタイヤに「DRAGON(ドラゴン)」というペットネームを付けた。

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「PHANTOM(ファントム)」は幽霊、「DRAGON(ドラゴン)」は竜ですよね。なんだかすごい名前が多いですね。

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どちらもDIABLO(ディアブロ)と同様に実在しない想像上のキャラクターだよね。既存のタイヤより想像を超えたパフォーマンスをアピールしたかったんじゃないかな。実際に革新的な性能や新しい技術を投入したタイミングでペットネームを付けているワケだし。

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それはDIABLO(ディアブロ)のネーミングの時も同じですか?

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そうなんだ。ワールドスーパーバイク(WSB)のタイヤがピレリのワンメイクになったのが2004年からだけど、そのタイミングで「DIABLO(ディアブロ)」の名前が誕生したんだ。それまでの「PHANTOM(ファントム)」や「DRAGON(ドラゴン)」はペットネームだったけれど、「DIABLO(ディアブロ)」はついに正式な製品名になったんだ。

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2004年からスタートしたWSBとピレリのコラボ。その後ピレリはレースにさらに注力し、2024年からはMoto2とMoto3のタイヤサプライヤーに。



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何故ですか?

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革新的なスチールベルト構造によって、レースに勝てるタイヤとして技術が確立されたからかな。この頃にはストリート用に「DIABLO ROSSO(ディアブロ・ロッソ)」が登場して、現在の4世代目の「DIABLO ROSSO Ⅳ」まで進化を続けているけれど、当時すでにスチールベルト構造の基礎技術は完成していたからね。

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タイヤの回転方向に対して0度に巻かれたスチールベルト。元々はメッツラーの技術でカーカスに金属を使う発想はとても斬新だった。ピレリ&メッツラーはこのスチールベルトを進化させ、独自の運動性やフィーリングを追求し続けている。


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スチールベルト構造の革新的な技術を記念したネーミングだったんですね。ところで「ROSSO(ロッソ)」の意味は何ですか?

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「ROSSO(ロッソ)」はイタリア語の「赤」。昔、1960年台頃は国際レースに参加する際に、国ごとのレーシングカラーが定められていたんだ。たとえば英国は緑色で、ドイツはシルバー、そしてイタリアは赤だった。そこでイタリアを象徴する意味で「ROSSO(ロッソ)」を加えたんだ。そこにはピレリが一(いち)タイヤメーカーから、様々な業種を営む国際企業に発展したのも関係しているんじゃないかな。ドゥカティやフェラーリなどイタリアのブランドは赤がイメージカラーの企業が多いよね。

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そうだったんだ~。……というコトは、「ピレリ」という社名にも当然意味がありますよね?

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もちろん! 答えは創業者のジョバンニ・バティスタ・ピレリ氏が、1872年に24歳の時にイタリアのミラノで起業した「G.P.Pirelli&C.」が由来。ゴムの加工製品が主体で、伝達ベルトや絶縁体、その後はスポーツ用のボールまで様々なゴム製品を生産し、有名なのはゴム被服の電気電装ケーブルだね。バイク用タイヤの生産開始は1890年で、1901年には四輪車用タイヤも作り始めたんだ。

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ジョバンニ・バティスタ・ピレリ氏。起業したばかりの頃は電動ベルト、バルブ、絶縁体などを生産。その後、玩具屋スポーツ用のボール、レインコートなどを手掛け、ゴム被服の電気電装ケーブル分野で実績を重ね、欧州のリーディングカンパニーに成長していった。


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とても歴史が長い会社なんですね。そしてやっぱり「ピレリさん」の名前だったんだ。

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まぁ、他のタイヤのライバルメーカーも、創業者の名前が社名になっている場合が多いけどね。

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なるほど~。話は戻るけど、ピレリのタイヤは「DIABLO(ディアブロ)」の他にも独自のネーミングがありますよね?

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そうだね。「DIABLO(ディアブロ)」は基本的にロードスポーツ用のラジアルタイヤで、レース用からストリート用まで広くスポーツ用タイヤを網羅した「カテゴリー名」としても使われているね。他にはツーリングスポーツの「ANGEL(エンジェル)」シリーズがあるね。

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こちらも実在しない「天使」だけど、カテゴリー的に「悪魔」ではない優しい感じのイメージの名前ですね。

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ツーリングカテゴリーにはエンジェルシリーズを用意。悪魔と天使を用意するのがピレリらしい。エンジェルシリーズは他のメーカーのツーリングタイヤと比較すると、ピレリらしいかなりスポーティな味付けが施される。写真はエンジェルGTII。


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先にも名前が出たレトロなスタイルの「PHANTOM SPORTSCOMP(ファントム・スポーツコンプ)」や、最新バイアスタイヤの「SPORT DEMON(スポーツ・デーモン)」、クルーザー用の「NIGHT DRAGON(ナイト・ドラゴン)」、そしてアドベンチャー系の「SCORPION(スコーピオン)」などがあるけれど、これらはかつて使用したペットネーム(ファントム、デーモン、ドラゴン、スコーピオン)を製品名に復活させたパターン。キャリアの長いライダーなら、なんとなく名前からタイヤをイメージできるし、キャラクターの定着にも役立つからね。

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スコーピオンラリー(左)、ファントム・スポーツコンプ(右)、スポーツ・デーモン、ナイト・ドラゴンなどユニークなペットネームが与えられたピレリのラインナップ。


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よく分かったよ、ディアブロマン! 色々な名前の由来を知ることができるとさらにタイヤに関心が沸くね。これからもタイヤのコトを色々教えてね。

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もちろん、お任せあれ!