新トレッドパターンでオンロード性能をさらに強化

昨今、いわゆるアドベンチャーバイクカテゴリーは拡大の一途をたどっています。

モデルバリエーションも、1000㏄クラスの大型モデルから600~800㏄のミドルクラス、さらには250/400㏄クラスまで幅広く用意されています。

アドベンチャーバイクは、オフロードライクなルックスが人気の要因ですが、実際にそれらのバイクでオフロードを楽しむライダーはほんの一握り。多くのライダーは、アドベンチャーバイクをツーリングバイクとして愛用しているのが現状です。

ピレリ・SCORPIONは、その名前からお分かりのとおり、オフロードレースでの活躍から生まれたタイヤです。ただ、前述のように、現在、SCORPIONがターゲットとするバイクはオンロードユースがほとんどです。したがって、最新のSCORPIONはアスファルトでの使用を前提に進化してきました。

もちろん、オフロードでの性能をないがしろにしているわけではありませんが、最新のアドベンチャーバイクのツーリング用タイヤとしての最適解を求めて誕生したのがこのSCORPION™ Trail Ⅲなのです。

スコーピオントレイル2と3のトレッド比較
左のSCORPION™ TrailⅡと比較すると、右のⅢはトレッドの溝面積も減少し、オンロードライクで断然スポーティな外観に進化したことが分かる。

SCORPION™ Trail Ⅲの設定は、オンロード95%、オフロード5%。オンロードでのよりスポーティな走行性能を実現するとともに、積載状態でも無積載状態でも優れた走行安定性、ウエット路面でのより高いパフォーマンス、ロードノイズの削減、新しいコンパウンドの採用などが行われました。

各性能ごとのレーダーチャート
SCORPION™ Trail Ⅱとの比較表を見れば、性能の進化は一目瞭然。ウエット路面でのグリップ性能以外の項目では格段にレベルアップしている。

例えるならアドベンチャーバイク用スーパーコルサ

SCORPION™ TrailⅡから大きく進化したのはトレッドパターンです。

スーパースポーツタイヤのDIABLO™スーパーコルサシリーズを彷彿させる、センターのFLASH™グルーブが目を引く新しいトレッドパターンは、接地面積を増加させ シーランド比を最適化(18%→15%に)。サイドのスリックエリアの拡大によって深いリーン角でもスポーティな挙動を可能にし、高いロードパフォーマンスを実現しました。

溝とゴムの設置面比率
新トレッドパターンの採用によって、シーランド比が18%から15%に減少したが、排水能力には影響を与えることなく、高速走行時の安定性と摩耗均一性が向上している。また、溝自体が減ったことでロードノイズも低減した。

また、溝の位置を左右非対称に配置することで接地面の耐久性が向上。溝自体の面積が減少したことで、ロードノイズも低減。ツーリング時の疲労感の減少も達成しています。 また、横方向に入る溝は、中央の溝との組合せによって未舗装路でのトラクション向上、走行距離の拡大、パフォーマンスの一貫性、排水性の維持を実現しています。

スコーピオンシリーズのトレッドを比較
スーパースポーツタイヤのDIABLO™シリーズに由来する、Flash™から生まれた新しい中央の溝(写真黄色の溝)はトレッドパターン全体にコンパクトさをもたらし、摩耗の規則性と安定性を高めている。また、同時に走行距離、パフォーマンスの一貫性、排水性も維持している。横方向に配置された溝(緑色の部分)を巧みに配置することで、接地面積を増やしてスリックエリアを拡大。深いリーンアングルでもハードなハンドリングを実現するとともに、均一な摩耗特性も実現している。

次回は、コンパウンドと構造について解説します。