WSBK第8戦チェコラウンド 7月28日~30日/チェコ オートドローム・モスト
スーパーバイク世界選手権(WSBK)第8戦チェコラウンドが、7月28日から30日にかけてチェコのオートドローム・モストで行われました。オートドローム・モストでのWSBK開催は2021年が最初で、2023年で3度目を迎えました。
レイがレース1で2023年シーズン初優勝
土曜日は天候に翻弄されたレースとなりました。WSBKの前に行われたスーパースポーツ300世界選手権(WSS300)のレース1は雨となり、その後、天候と路面は回復傾向にありましたが、WSBKレース1のスタート時点では、まだウエットコンディション。タイヤサプライヤーのピレリは雨量の少ないコンディション向けのインターミディエイト、フルウエットコンディション用のレインタイヤを用意しており、ライダーたちはインターミディエイトとレインの間で、難しいタイヤ選択を迫られました。
こうした状況の中で、インターミディエイトタイヤを選択したライダーのひとりが、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)でした。worldsbk.comのレース中継の、パルクフェルメのインタビューで語っていたところによると、レイはグリッドで「チャンスだ」と考えていたと言います。
「賭けに出て、序盤から自分のペースを作ろうと思っていたんだ」
レースはタイヤ選択によって明暗が分かれました。序盤の5周こそレインタイヤを履いたアクセル・バッサーニ(モトコルサ・レーシング)がトップを走ったものの、路面がドライコンディションへと回復していくとともにレイのペースが上がっていきました。そして6周目にトップを奪うと、独走態勢を築いたのです。一方、アルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)を含むレインタイヤを履いたライダーたちは、レース中にピットインをしてタイヤ交換を余儀なくされました。
中盤には2番手に浮上した、こちらも最初からインターミディエイトを履くトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith・プロメテオン・ワールドSBK)が猛烈な勢いで追い上げましたが、レイはラズガットリオグルの追随を許さずにトップでチェッカーを受けたのでした。
2015年から2020年シーズンまで6連覇を成し遂げてきたレイは、2023年シーズンはアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)とラズガットリオグルの後塵を拝するレースが続いていました。表彰台は獲得しても、優勝には手が届かないままだったのです。チェコラウンドのレース1で挙げた優勝は、レイにとって今季初の勝利となりました。
「チームが僕に与えてくれたバイクは素晴らしかったよ。序盤にはとても自信を持って走れた。ただ、終盤は、コンディションに対して少しソフトで、海の上を漂うボートみたいだったけど(笑)。でもとにかく、できることといったらトプラクにあまり差を縮めさせないように、攻め続けることだけだった。そして、最後までやり遂げたんだ。25ポイントを獲得できたし、メカニックたちを笑顔にできて、すごく誇りに思っているよ」
worldsbk.comのレース中継で、パルクフェルメでのインタビューに対しそう答えたレイは、自身も笑顔を浮かべていました。
トップ争い中のラズガットリオグルの転倒により、バウティスタが18勝目を飾る
日曜日のレース2は、レース後半に波乱が待っていました。ドライコンディションとなったレース2は、序盤からラズガットリオグルとバウティスタによる激しいトップ争いとなります。ラズガットリオグルは7周目にバウティスタをパス。しかし、バウティスタもラズガットリオグルから引き離されることなく何度も勝負を仕掛け、激しい攻防が続きました。
そんな緊迫したトップ争いは、突如として終わりを迎えます。17周目の3コーナーで、ラズガットリオグルがクラッシュを喫したのです。ラズガットリオグルのリタイアにより、バウティスタがトップに立ち、そのまま優勝を飾ったのでした。
ラズガットリオグルは、リヤタイヤにSC1(C0567)を選択していました。このSC1(C0567)はチェコラウンドから新たに投入されたミディアムタイヤです。ピレリ モーターサイクル・レーシング・ディレクターのジョルジョ・バルビエ―ル氏によると、タイヤに発生したブリスターが、ラズガットリオグルの転倒に関わっていた可能性があるということです。
「WSBKのレース2では、新しいリヤタイヤC0567によってブリスターが3件発生しました。レイ、(レミー・)ガードナー、ラズガットリオグルです。レイとガードナーのブリスターは非常に小さなもので、パフォーマンスやレース結果に影響を及ぼすものではありませんでした。しかし、ラズガットリオグルの場合は、ブリスターが2つ発生しており、しかもテレメトリーのデータによると、タイヤが突然収縮したことが分かっています。彼のレースペースが非常に速く、他ライダーのタイヤにはストレスや摩耗の兆候が見られなかったとしても、このようなことは起こってはならないことです。私たちは、ブリスターが発生した3本のタイヤに何が起こったのかを明らかにするため、詳しい分析を行う予定です」
なお、バウティスタはレース2の勝利により、WSBKにおける50勝、また、シーズン最多勝利数の18勝を達成しました。
スーパースポーツ世界選手権(WSSP)では、岡谷雄太(プロディーナ・カワサキ・レーシング)がレース1を25位、レース2を21位でゴールしました。阿部真生騎(VFTレーシング・WEBIKEヤマハ)はレース1を26位、レース2を22位で終えました。