写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第10戦アラゴン
9月27日~29日/モーターランド・アラゴン

今季苦戦のバウティスタと、怪我から復帰戦のラズガットリオグルが優勝争い

アラゴンラウンドは、トプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)とジョナサン・レイ(パタ・プロメテオン・ヤマハ)の復帰戦となりました。

ラズガットリオグルは第8戦フランスのフリープラクティス2で転倒を喫し、軽度の気胸を負ってフランスラウンドと第9戦イタリアラウンドを欠場。レイはフランスラウンドのレース1で転倒し、右手親指を骨折して同じく欠場していたのです。

そんなラズガットリオグルとアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)は、スーパーポール・レースとレース2で優勝争いを展開しました。

スーパーポール・レースではバウティスタが最終ラップ15コーナーでトップを走るラズガットリオグルをとらえ、優勝。レース2は、ポールポジションからスタートしたバウティスタがスタートからトップに立ち、ラズガットリオグルはバウティスタを追いかけ続けていました。しかし、レース終盤、ラズガットリオグルのリヤタイヤのグリップが落ちるとバウティスタは差を広げることに成功して、優勝を飾ったのです。

バウティスタとラズガットリオグルは、2023年シーズンは何度も優勝争いを繰り広げてきました。しかし、今季、レギュレーションの変更によってバウティスタはバラストを積んだマシンに苦戦していました。シーズン終盤、WSBKをけん引する2人が再び激突し、レースはバウティスタが制したのです。

アラゴンラウンドで、バウティスタはスーパーポール・レースの優勝を含め、今季4勝目を飾っています。

レース2後、バウティスタはWorldSBK.comのインタビューで、このようにレースを振り返っています。

「フィーリングにはとても満足だよ。昨日(土曜日)はフロントに問題があって、限界までプッシュできなかったんだけど、今日はすべてが順調だったから、ちゃんと攻められた」

「スーパーポール・レースでは、バックストレートではBMWはドゥカティよりも特に5、6速で速いから、その手前で(ラズガットリオグルを)パスしたんだ。素晴らしい優勝だったので、本当にうれしかったよ!」

「レース2では序盤の数周は満タン状態でバイクが重くて苦労したけど、だんだんフィーリングがよくなって、どんどん攻められるようになったんだ。限界まで攻めていたので集中しなくちゃいけなかったけど、楽しんだ。優勝できて本当にうれしいし、バイクの感触も最高だった」

方や、ラズガットリオグルはスーパーポール・レースとレース2でバウティスタの後塵を拝しました。とはいえ、復帰戦ながら3レースで2位を獲得しているのですから、十分な結果でしょう。

「レース2では、序盤にアルバロについていった。彼にぴたりとついていって、残り4、5周で彼をパスしてバトルをするのが作戦だった。でも、最後の4、5周でリヤタイヤが垂れてしまった。僕はフロントにSC2(ハードタイヤ)を履いていて、SC2には満足しているけど、リヤが垂れてしまって。ドゥカティはシャシーが違うからなのか分からないけど、まだグリップがあった」(WorldSBK.comのインタビューより)

「アルバロはカムバックしたみたいだね。うれしく思うよ。エストリルは優勝しないとね」

また、ラズガットリオグルは体調について「筋肉に痛みはあるけど、それは普通のこと」と、問題ないことをアピールしていました。

「ひと月もバイクに乗らず、トレーニングからも離れていたんだからね。ペースはよかったし、ずっと激しく攻めていた。バイクのフィーリングもよかったしね。レース序盤は楽しんでいたよ。最終ラップはそうでもなかったけど……(苦笑)。全体的に、体調は悪くない。でもトレーニングが少し必要かもね」

ラズガットリオグルは、このアラゴンラウンドでランキング2番手のニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)に対し、39ポイントの差をつけました。次戦エストリルラウンドで62ポイント差をつけることができれば、ラズガットリオグルのチャンピオンが決定します。

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レース1ではアンドレア・イアンノーネ(中央)が優勝、2位がラズガットリオグル(左)、3位がギャレット・ガーロフ(右)だった
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1戦で2勝を飾るのは、バウティスタにとって今季初めて
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気胸による2戦の欠場から復帰したラズガットリオグル。3レースで2位獲得はさすが

トラブルで…ブレガ、痛恨のノーポイント

ランキング2番手のブレガにとっては、復帰戦のラズガットリオグルとのポイント差を詰めたかったところでしょう。しかし、赤旗中断から再開されたレース1、グリッドにつくためのウオームアップ・ラップでマシントラブルが発生しました。ブレガはウオームアップ・ラップの途中でマシンを止め、リタイア。ノーポイントでレース1を終え、これは大きな痛手となりました。

スーパーポール・レースで3位、レース2でも3位を獲得したブレガですが、レース2でチェッカーを受けた後パルクフェルメにやって来たとき、明らかに落胆した様子でした。

WorldSBK.comのインタビューでは、土曜日のトラブル、そしてアラゴンラウンドの週末についてこう語っています。

「今週末は運がなかった。昨日(土曜日)は技術的なトラブルで大きなポイントを失ってしまったし……。それに今日もあまりいいフィーリングはなかった。昨日、ボクはレースを走れなかったから、今日の2レースに向けた情報があまりなかったんだ。表彰台は獲得できたけど、もっと期待していた」

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レースで優勝したバウティスタ(中央)、2位のラズガットリオグル(左)、3位のブレガ
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ブレガはレース1のノーポイントが響いた。ラズガットリオグルとのポイント差が広がってアラゴンラウンドを終えることに

第11戦エストリルラウンドは、10月11日から13日にかけて、ポルトガルエストリル・サーキットで行われます。