写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第11戦エストリル
10月11日~13日/ポルトガル エストリル・サーキット

スーパーポール・レース、0.003秒差でブレガがラズガットリオグルを抑えて優勝

2024年シーズンは、エストリルラウンドを含めて残り2戦となりました。チャンピオン争いは佳境を迎えています。

前戦アラゴンラウンドを終えた時点で、チャンピオンシップのランキングトップにつけるのは、トプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)で、ランキング2番手はWSBKルーキー、ニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)でした。2人の差は39ポイントで、事実上、チャンピオン争いはこの2人にしぼられていました。

迎えたエストリルラウンドのレース1は、ラズガットリオグルが優勝し、ブレガが2位。ポイント差は44に広がり、ブレガにとっては、これ以上ラズガットリオグルの先行を許すわけにはいきませんでした。

日曜日、10周で争われたスーパーポール・レースは、ブレガが意地を見せます。優勝争いは最終ラップまで持ち越され、最終ラップを迎えたとき、トップを走っていたのはラズガットリオグル、ブレガは2番手でその背を追っていました。

最終コーナーを立ち上がったときは、ラズガットリオグルがやや先行していました。しかしその後のストレートで伸びたのは、ブレガが駆るドゥカティのパニガーレV4Rだったのです。ブレガはほんの少しだけラズガットリオグルの前でチェッカーを受け、優勝を果たしました。優勝したブレガと2位のラズガットリオグルの差は、わずか0.003秒でした。この差は、1位と2位のライダーの差としては、WSBK史上、もっとも小さなものでした。

ブレガはレース後のパルクフェルメでのインタビューで、「最終ラップは持っているもの、すべてを投入した」と語っていました。チャンピオン争いに望みをつなぐため、すべてを懸けたのです。

「トプラクのレースは素晴らしかったし、すごく速かった。でもボクは彼を頑張って追いかけたんだ。最終ラップは、いつもとは違うことをしてみた。120パーセントの力を出したよ。それが報われた。とてもうれしいよ」

一方、ラズガットリオグルは、パルクフェルメのインタビューで、ブレガが選んだタイヤのパフォーマンスに驚いた、と語っています。ラズガットリオグルはフロントにSC1(ミディアム)、リヤにSCX-A(開発スーパーソフト)を選んでおり、ブレガは、フロントは同じくSC1ながら、リヤにSCQ(エクストラソフト)をチョイスしていました。なお、SCQはスーパーポール(予選)と、10周で争われるスーパーポール・レースでのみ使用できるタイヤです。

「ボクは820タイヤ(SCX-A/D0820。開発スーパーソフト)をリヤに使ったんだけど、(ブレガが選んだ)Qタイヤ(SCQ/エクストラソフト)が最後まで落ちなかったことには驚いたよ」

「最終コーナーではかなりスピンがあって、バイクがうまく加速しなかったんだ。ブレガにはおめでとうと言いたい」

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スーパーポール・レースで、ブレガ(中央)はラズガットリオグル(左)を抑え、今季4勝目を挙げた

レース2、ラズガットリオグルが優勝。ブレガ「かなり厳しい」

今季、ラズガットリオグルは高い安定感でシーズンを戦っています。レース2を制したのは、やはりラズガットリオグルでした。レース序盤は5番手に後退したものの、7周目にはトップを奪い、そのまま後方との差を広げて優勝を飾ったのです。ブレガは2位でゴールしました。

「まず、本当にうれしい、と言いたいね」と、ラズガットリオグルはレース後のパルクフェルメのインタビューで語っています。

「スーパーポール・レースではちょっと運が悪く、チェッカーフラッグ直前で(優勝を)失った。でも、ボクたちは今週末、素晴らしい仕事をしたし、(レース2で)また優勝できた。この優勝が必要だったんだ。チャンピオンシップにとってポイントが必要だった」

「ヘレスで会おう!」と、ラズガットリオグルは力強く言いました。ヘレスで開催されるスペインラウンドは、2024年シーズンの最終戦であり、ラズガットリオグルのチャンピオン獲得がかかるラウンドとなります。

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レース2で優勝したラズガットリオグル(中央)、2位のブレガ(左)、3位のアルバロ・バウティスタ(右)
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ラズガットリオグルはレース2で優勝し、チャンピオンをぐっと引き寄せた
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トップに立ってからは後方を引き離したラズガットリオグル

そして2位で終えたブレガは、「計算上はまだ(チャンピオン獲得の)可能性があるけど、かなり厳しい。トプラクは素晴らしいシーズンを送っているから……」と、淡々と語っていました。

「(WSBKの)1年目にチャンピオン争いを語っているなんて、夢みたいだ。本当にうれしい。チームに感謝したいし、来年に向けてたくさんの経験が得られた」

レース2の結果により、ラズガットリオグルとブレガの差は46ポイントとなりました。1戦に3レース(レース1、スーパーポール・レース、レース2)が行われるWSBKは、1戦あたり、最大で62ポイントを獲得することができます。しかし、今季のラズガットリオグルのパフォーマンスは非常に力強く、それをよく知るブレガだからこそ「かなり厳しい」と語ったのでしょう。

パルクフェルメのインタビューに答えるサングラスをかけたブレガの表情には、喜びよりも悔しさが浮かんでいるようでした。

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ブレガ(#11)はバウティスタ(#1)を抑え、2位を獲得した

2024年シーズンの最終戦となる第12戦スペインラウンドは、10月18日から20日にかけて、スペインのヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで行われます。