写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第9戦イタリア
9月20日~22日/イタリア クレモナ・サーキット

負傷者続出の前戦の影響。気胸を負ったラズガットリオグルは欠場に

イタリアラウンドのひとつの話題は、チャンピオンシップのランキングトップであり、シーズンを席巻し続けてきたトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が欠場したことでした。

ラズガットリオグルは前戦フランスのフリープラクティス2で転倒を喫した際にフェンスに激突し、軽度の気胸を負いました。ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチームのプレスリリースによれば、この回復に時間がかかることが判明し、BMWモトラッド・モータースポーツの医師との協議の上、欠場が決定されたということです。

チャンピオンシップをけん引してきたラズガットリオグルとはいえ、WSBKは1戦で3レース(レース1、スーパーポール・レース、レース2)が行われるため、最大で62ポイントの獲得が可能です。フランスラウンドを終了した時点で、コンスタントに表彰台を獲得し続けていたランキング2番手のニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)とは、55ポイント差という状況。フランスで喫したそれは、ラズガットリオグルにとって手痛い転倒となりました。

また、フランスラウンドのレース1で転倒を喫し、右手親指を骨折、負傷したジョナサン・レイ(パタ・プロメテオン・ヤマハ)も欠場。一方、フランスラウンドのレース1で転倒を喫したブレガは右肩を負傷しましたが、イタリアラウンドに参戦しました。同じくフランスラウンドのスーパーポール・レースで転倒し、肋骨を骨折したアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)は、木曜日にメディカルチェックをパスし、参戦しています。フランスラウンドは、これほどまでに負傷者を出す転倒が多かったのです。

3レースで優勝のペトルッチ、歴史的快挙。母国ラウンドでイタリアファンを魅了

そんなイタリアラウンドで、3レースすべてで優勝を飾ったのが、ダニロ・ペトルッチ(バーニー・スパーク・レーシングチーム)でした。レース1は技術的な問題により残り7周で赤旗が提示され、23周の周回数のうち3分の2以上を完了していたことから、レースは終了となりました。この優勝はペトルッチにとってWSBKでの初勝利であり、これによってMotoGP、WSBK、スーパーストック1000、スーパーストック600、モトアメリカ、ダカールラリーで優勝した史上初のライダーとなりました。

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レース1はペトルッチ(中央)が優勝し、2位がブレガ(左)、3位がバウティスタ(右)だった

ペトルッチは翌日のスーパーポール・レース、レース2でも優勝を飾り週末を完全に制しました。インディペンデントチームのライダーが1戦3レースすべてで優勝するのは、初めてのことでした。ペトルッチは歴史を塗り替える快挙を、母国ラウンドで果たしたのです。

「僕のキャリアにおける最高の週末のひとつだよ」と、ペトルッチは日曜日レース後のWorldSBK.comのインタビューで語りました。

「昨日(土曜日)の最初の優勝は、本当に感動的だった。でも、スーパーポール・レース、特にレース2では優勝できるとは思っていなかった。ちょっとびくびくしていたんだよ。多くのライバル、特にアルバロがいるからね。彼はレース終盤に速いだろうとわかっていた」

確かに、レース2で、バウティスタは負傷を抱えた状態ながら、6番手からスタートしてレース終盤には2番手に浮上しました。しかし、レース前半で差を広げることに成功したペトルッチは、バウティスタの接近を許しませんでした。

「僕はギャップをつくって維持し、さらにそのギャップを広げることができた。現実じゃないみたいだ!」

「さっき言われて知ったんだけど、昨日はオフロード、オンロード含めてさまざまなカテゴリーで優勝した最初のライダーになった。今日は初めて3レースで優勝したインディペンデントチームのライダーになった。誇りに思うよ。ボクは自分をグリッド上で最高のライダーだと思ってる。でも、今は30キロも痩せたように感じるよ(笑)!」

ペトルッチはそう言って、愛嬌のある笑顔を浮かべていました。

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イタリアラウンドを接近したペトルッチ。MotoGPでも活躍したライダーは、WSBKでも歴史を作った

なお、この週末は同じくイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリでMotoGPエミリア・ロマーニャGPが開催されていました。クレモナ・サーキットでのWSBKレース2でペトルッチが優勝し、バウティスタが2位、ブレガが3位を獲得する少し前、ミサノ・サーキットでのMotoGP決勝レースでもまた、ドゥカティが表彰台を独占しました。WSBK、MotoGPの2つのレースで、ドゥカティが表彰台を占めた週末となりました。

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レース2もまたドゥカティライダーが表彰台を染めた。バウティスタは祝福のシャンパンをペトルッチにたっぷりと……

イタリアラウンドではランキング2番手のブレガがレース1で2位、スーパーポール・レースで4位、レース2で3位を獲得したことで、ランキングトップのラズガットリオグルとの差を13ポイントに縮めています。

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ラズガットリオグル不在のレースで優勝こそならなかったが、確実に表彰台を獲得したブレガ(#11)。ポイント差を大幅に詰めた

ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチームのプレスリリースによれば、ラズガットリオグルがアラゴンラウンドに参戦できるか否かは、レースウイーク前に判断されるということです。WSBKの2024年シーズンは残り3戦。チャンピオンシップの行方は、ラズガットリオグルの負傷によって混とんとしています。

第10戦アラゴンラウンドは、9月27日から29日にかけて、スペインのモーターランド・アラゴンで行われます。