写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第12戦スペイン
10月18日~20日/スペイン ヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエト

ラズガットリオグル、チャンピオン獲得で証明した自らとBMWのパフォーマンス

2024年シーズンの最終戦スペインラウンドは、チャンピオンが決まる一戦となりました。チャンピオンシップのランキングトップ、トプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)は、前戦エストリルを終えて、ランキング2番手のニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)に対し、46ポイントの差を築いている状況でした。ポイント差としても今季のパフォーマンスとしても、ラズガットリオグルが有利です。

しかし、レース1ではブレガが気を吐きました。ポールポジションからスタートすると、2番手にラズガットリオグルを従え、ポール・トゥ・ウインを飾ったのです。ラズガットリオグルに一矢報いた形になりました。

一方、ラズガットリオグルは2番手をしっかりキープし、2位でチェッカーを受けました。この結果、2人の差は41ポイントに縮まりましたが、残りのレース(スーパーポール・レース、レース2)で獲得できる最大ポイント数が37ポイントであることから、ラズガットリオグルが2024年シーズンのチャンピオンに輝きました。

ラズガットリオグルは、WorldSBK.comのインタビューで「どういう気持ちですか?」と聞かれ、「どういう気持ちかって? 世界チャンピオンだよ!」とユーモアを交えて笑顔を浮かべました。

そして、「すごく長いシーズンだった。誰もボクを信じていなかったし、誰もBMWを信じなかったんだ」と続けました。

今季、ラズガットリオグルはヤマハからBMWに移籍しました。これはラズガットリオグルがしばしば言及しているのですが、BMWと契約したとき、周囲から「お前のキャリアは終わった」といったことを言われてきた、と語っています。しかし、ラズガットリオグルはBMWを信じていました。

「みんな、ボクたちが世界チャンピオンだと分かったんだ。これはチームワークなんだよ。みんなが懸命に働き、レースのたびにバイクをよくしてくれたんだ。本当に素晴らしいよ。特にBMWは(SBKで)チャンピオンになったことがなかったから。でも、ボクにとって2回目の、BMWにとって最初のタイトルを獲得したんだ。とてもうれしいよ!」

ラズガットリオグルは、このインタビューを受ける少し前、レース直後のパルクフェルメのインタビューで、「チームには感謝しているんだ。毎週、みんな、本当に素晴らしい仕事をしてくれたんだ。そしてそれが報われた。ボクたちが世界チャンピオンだ!」と、クールダウンラップで着替えたゴールドのレーシングスーツで、興奮をあらわしていました。

ラズガットリオグルにとっては2021年以来の、そして、BMWにとってはSBKにおける初のタイトルとなりました。

また、このレースの結果により、ドゥカティはマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、Aruba.it レーシング-ドゥカティはチームタイトルを獲得しました。

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ブレガ(#11)はチャンピオンに望みをつなぐには、ラズガットリオグルの前でゴールするしかなかった。しかしラズガットリオグル(#54)は冷静に2位でゴールした
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レース1で優勝したブレガ(中央)、2位のラズガットリオグル(左)、3位のアンドレア・ロカテッリ(右)

レース2はラズガットリオグルが優勝。BMWファクトリーの2人がそろって表彰台に

レース2では、ラズガットリオグルがチャンピオンのレースを見せました。この日のスーパーポール・レースでも優勝したブレガの後塵を拝する形となったラズガットリオグルですが、レース2では3周目にブレガをとらえるのです。

ラズガットリオグルはブレガを引き離すことはできなかったものの、トップを明け渡すこともなく、ランキングトップ2の2人がレースをけん引する展開でした。しかし残り4周、メインストレートでフィリップ・エッテル(GMT94ヤマハ)のマシンから白煙が上がり、このマシントラブルによってレースは赤旗終了となりました。

2位のブレガは、パルクフェルメのインタビューで「この週末は速さがあったから3勝したかったけど、今日のトプラクはすごく速かった。トプラクとすごく速いペースでのレースができたし、このようにチャンピオンシップを終えられてうれしく思っている」と語っています。

SBKルーキーのブレガは、今季、合計24度の表彰台を獲得しており、これはアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が2019年に記録した、SBKルーキーとしての表彰台獲得回数に並んでいます。チャンピオンは逃したものの、ルーキーとして素晴らしいシーズンを送ったことは間違いありません。

優勝という形でシーズンを締めくくったラズガットリオグルは、3位にチームメイトのマイケル・ファン・デル・マーク(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が入り、ともに表彰台を獲得したことについて触れました。BMWライダーとしてのラズガットリオグルとファン・デル・マークがそろって表彰台に立つのは、これが初めてです。BMWの仕事ぶりを称賛するラズガットリオグルは、ともに戦ってきたチームメイトとともに表彰台を獲得したのでした。

「今日はとてもうれしいよ。マイケルも一緒に表彰台を獲得したからね」と、パルクフェルメのインタビューで答えていました。

「これが今年の夢だったんだ。チームには感謝だよ。みんな、レース2に向けて本当に懸命に働いてくれたんだ。ボクたちはレース2に向けて、セッティングを大きく変えた。それで勝つことができたんだ。これはすごく重要なことだった。だって、ボクたちはドゥカティと戦っているんだからね」

ラズガットリオグルが新しい歴史を作った2024年シーズンは、こうして幕を下ろしました。

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レース2で優勝したラズガットリオグル(中央)、2位のブレガ(左)、3位のファン・デル・マーク(右)。ラズガットリオグルとファン・デル・マークはBMWで初めてともに表彰台に立った
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レース2はブレガに先行を許さなかったラズガットリオグル。優勝でシーズンを締めくくった