スーパーバイク世界選手権(WSBK)の第5戦エミリア・ロマーニャラウンドが、6月2日から4日にかけてイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われました。
ピレリ、WSBKタイヤ供給20周年を迎える
2023年のエミリア・ロマーニャラウンドはピレリタイヤがWSBKの唯一のタイヤサプライヤーとなって20周年の大会となりました。ピレリはここに、スーパーポールとスーパーポール・レース用エクストラソフトタイヤの新たな開発ソリューション、SCQ-A(C0004)を投入しました。
また、ドゥカティは今大会でこれまでのレース・ヒストリーに敬意を表してドゥカティ・イエローを復活させ、Aruba.it レーシング-ドゥカティのアルバロ・バウティスタとマイケル・ルーベン・リナルディは、スペシャルカラーが施されたドゥカティ・パニガーレV4Rとレーシングスーツでレースに挑みました。
エミリア・ロマーニャを席巻したのは、やはりバウティスタでした。バウティスタはレース1、レース2ともに序盤にトップを奪い、そのまま後方を引き離して独走でチェッカーを受けるという、揺るぎない強さで優勝しました。バウティスタは今大会の3レースすべてで優勝を飾って3戦連続3レース勝利を果たし、さらに第2戦インドネシアのレース2から続く連勝を10に伸ばしています。第5戦15レースを終えて、バウティスタが優勝できなかったのは、第2戦インドネシアのスーパーポール・レースだけ。今季のバウティスタとドゥカティ・パニガーレV4Rのパッケージがいかに他を圧倒しているのかが窺えます。
また、エミリア・ロマーニャラウンドでは、ドゥカティのイタリア人ライダーが活躍し、ドゥカティ全体としての勢いのよさも目立ちました。3レースを通じて、リナルディやアクセル・バッサーニ(モトコルサ・レーシング)、ダニロ・ペトルッチ(バーニー・スパーク・レーシングチーム)が表彰台またはそれに近いポジション争いを展開しました。転倒によって上位を席巻という結果には至らなかったものの、レース展開はバウティスタだけではない、ドゥカティの全体としての強さを示していたと言えるでしょう。
気迫のレースを見せたラズガットリオグル
そんな中、ドゥカティ勢に割って入ったのが、トプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith・プロメテオン・ワールドSBK)でした。ラズガットリオグルは現在、チャンピオンシップでトップにつけるバウティスタから86ポイント差のランキング2番手につけています。すでにシーズンは中盤戦に入っており、ラズガットリオグルとしては少しでもポイント差を詰めたい状況です。
ラズガットリオグルはスーパーポール・レースで気を吐きました。2番手からスタートしたラズガットリオグルは、1周目にバウティスタをパスしてトップを奪います。ラズガットリオグルの背後にはバウティスタがぴたりとつけ、3周目にはバウティスタがラズガットリオグルをかわしました。例え周回数が10周と短いスーパーポール・レースであっても、ここから後方を引き離していくのが今季のバウティスタ。しかしこのときは、ラズガットリオグルがバウティスタの一人旅を許すことはありませんでした。ラズガットリオグルがベスト・レース・ラップを叩き出しながらバウティスタからトップを奪還すれば、バウティスタがラズガットリオグルをとらえてレースリーダーに返り咲く……。2022年王者のバウティスタと2021年王者のラズガットリオグルによる、激戦のトップ争いが繰り広げられたのです。
しかし、この戦いは赤旗という形で終えることになりました。終盤に8コーナーで発生した転倒により残り3周で赤旗が提示され、レース成立に必要な5周を終えていたことからそのまま終了となったのです。結果は各ライダーの最後のタイム計測に基づき、これによってバウティスタが優勝、ラズガットリオグルは2位となりました。優勝争いが強制終了の形となったラズガットリオグルは、パルクフェルメに向かうピットロードで憤懣をぶちまけるようにヘルメットの中で叫んでいたようでした。バウティスタの後塵を拝しているとはいえ、ラズガットリオグルもまた計5戦・15レース中、14レースで表彰台に立っています。スーパーポール・レースは、バウティスタの連勝を止めてみせる、そんなラズガットリオグルの気迫あふれるレースでした。
WSBKに水野涼が代役参戦
エミリア・ロマーニャラウンドには水野涼がペトロナス・MIEレーシング・ホンダ・チームから代役参戦し、SBKに初挑戦となりました。水野はブリティッシュ・スーパーバイク選手権(BSB)で2年間戦い、2023年シーズンは全日本ロードレース選手権JSB1000クラスに参戦しています。レース1で21位、スーパーポール・レースで19位、レース2は序盤に転倒を喫してリタイアでした。
スーパースポーツ世界選手権(WSSP)では、岡谷雄太(プロディーナ・カワサキ・レーシング)がレース1は20位、レース2は序盤に他車との接触により転倒を喫したもののレースに復帰し、27位でした。阿部真生騎(VFTレーシング・WEBIKEヤマハ)はレース1を転倒リタイア、レース2を24位で終えました。