WSBK第6戦イギリスラウンド 6月30日~7月2日/ドニントンパーク・サーキット
スーパーバイク世界選手権(WSBK)の第6戦イギリスラウンドが、6月30日から7月2日にかけてイギリスのドニントンパーク・サーキットで行われました。イギリスラウンドはスーパースポーツ300世界選手権(WSSP300)の開催はなく、WSBK、スーパースポーツ世界選手権(WSSP)のみの開催となりました。
ドニントンパーク・サーキットは、ロンドンに次ぐ大都市とされるバーミンガムから北東にクルマで約1時間の場所にあります。サーキットはなだらかな丘の中にあり、アップダウンのある高速コーナーの前半と、ストレートからのシケインやハードブレーキング・ポイントのある後半を組合せたレイアウトとなっています。
2022年シーズンのイギリスラウンドはトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith・プロメテオン・ワールドSBK)が3レースすべてで優勝を飾って大会を席巻しましたが、2023年シーズンは圧倒的強さを誇っているアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がラズガットリオグルの前に立ちはだかりました。
土曜日のレース1は2番手からスタートしたバウティスタがレース中盤にトップに立って、優勝を飾りました。これはドゥカティにとって、2011年以来となるドニントンパーク・サーキットでの優勝となりました。2位はラズガットリオグル、3位はジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が獲得。レイにとってはWSBKにおける250回目の表彰台でした。
ラズガットリオグルがスーパーポール・レースでバウティスタの連勝をストップ
イギリスでも続くバウティスタの勢いは、しかしついに、ラズガットリオグルによって止められました。日曜日のスーパーポール・レースで、ラズガットリオグルが優勝を飾ったのです。レースは残り2周までレイがトップを走っていましたが、残り2周でラズガットリオグルがレイをかわすとそのまま先頭でゴールしました。レース2は1周目に多重クラッシュが発生したことで赤旗中断となり、約20分間の中断ののちに22周で再開されました。このレースではラズガットリオグルが序盤からトップを走行しますが、じりじりとペースを上げたバウティスタにかわされて2位でゴールしています。
「(スーパーポール・レースは)悪くなかったし、レースペースもとても強かった。でも、僕はいつもロングレースに集中している。ロングレースでの優勝を逃し続けているから」と、レース後、ラズガットリオグルは22周のレース2で優勝できなかった悔しさをあらわにしていました。
ラズガットリオグルは今季、バウティスタを除いて優勝している唯一のライダーです。第6戦イギリスラウンドを終えて18レース中、バウティスタが16勝、そしてラズガットリオグルが2勝を飾っています。ただ、その2勝はいずれもスーパーポール・レースでのもので、ラズガットリオグルとしてはレース1、2での優勝を欲しているのです。
「レース2で優勝に挑んだけど、ペースがかなり速く、特にストレートでドゥカティは強かった。すべてのストレートでドゥカティはアドバンテージを持っているからだ。とにかく、僕はベストを尽くしたし、レースペースは悪くなかった。2位でフィニッシュしようと頑張った。もちろん、悪くない週末だったよ。でも、僕としては満足というわけにはいかない。(3勝した)去年のことを憶えているから」
ラズガットリオグルは、「バウティスタがとても速いセクターがあれば、僕がとても強いセクターもあった。でも、それでは勝てなかった」と語ります。バウティスタはラズガットリオグルをかわした14周目以降、さらにペースを上げました。ラズガットリオグルも離されまいと、実際に15周目に自己ベストをマークするほど攻めていましたが、バウティスタについていくことはできなかったのです。ラズガットリオグルは、それはエンジンパフォーマンスの差によるものだと説明しています。
「すべての短いストレートで、彼は素晴らしい加速をしていた。特に最終コーナーの立ち上がりでね」
「ドゥカティのエンジンはすべてのストレートでとても強く、簡単に加速していくんだ。タイヤをあまり消耗することなくね。彼は旋回してバイクを起こし、アクセルを開けるだけ。僕たちよりパワーがあるからだ。一方、僕たちは彼を追いかけるために、コーナリングスピードを保って走らないといけなかった」
「もし僕のバイクがストレートで速ければ、彼とは楽に戦えただろう」
未勝利が続くレイ、WSBK初表彰台獲得のペトルッチ
レース1でWSBKにおける250回目の表彰台を獲得したレイですが、スーパーポール・レースでは終盤までトップを走りながら3位、レース2では終盤に表彰台圏内から陥落して5位という結果に終わっています。
レース2では、序盤からリヤタイヤのトラクション不足に苦しんでいました。レイのタイヤ選択はフロントにSC2、リヤにSC0というもの。リヤタイヤに関してはレース2で全ライダーがSC0をチョイスしておりノーマルな選択でしたが、レイは苦しいレースを強いられることになりました。
「レース中盤にアルバロにパスされて、トラクション不足がさらにひどくなった。あまり使わないタイヤの左側にさえ大きなプレッシャーがリヤにかかっているようで、スピニングするばかりだった。バイクがかなり動いていたから、フィジカル的にも厳しかったよ」
レース2に向けてマシンの大きな変更をしたわけでもない、と淡々と説明していたレイ。イギリスラウンドを終えて、チャンピオンシップのランキングでトップのバウティスタからは194ポイント離され、4番手となっています。
そして、そんなレース2で3位表彰台を獲得したのが、ダニロ・ペトルッチ(バーニー・スパーク・レーシングチーム)でした。ペトルッチにとっては、今回がWSBK初表彰台となりました。2021年シーズンをもってMotoGPを去り、ダカールラリーやモト・アメリカを戦ったのち、今季からWSBKに参戦しているペトルッチ。MotoGPではドゥカティのファクトリーチームにも所属し、2勝を挙げた実力者ですが、2023年シーズンのここまでの成績に、思い悩むところもあったと言います。
「今シーズン序盤、2、3レースを終えた後、世界選手権に復帰したのはいい選択だったのだろうか、と思っていたんだ。(WSBK参戦は)僕にとって新しいチャレンジで、常に新しいタイヤやサーキット、ライバルについて学ばないといけないからね」
「2021年にMotoGPから退いたとき、僕は『象のように、遠くのダカールへ死にに行く』と言ったけど、ダカールで勝った!『僕はまだバイクにうまく乗れるかも』って思ったんだよ(笑)。それはジョークだけど、チームに向けてもこの結果はうれしいよ」
それまでの成績に、ダカールラリーやモト・アメリカに戻ることも考えていたそうです。「僕はレースが大好きだけど、トップ争いがしたいから」
しかし、今回の3位はその苦悩を払拭するものだったに違いありません。レース後のペトルッチは、「とてもうれしいよ」と、いつもの愛嬌のある笑顔を浮かべていました。
WSSP岡谷雄太はマシン改善に前進
WSSPでは、岡谷雄太(プロディーナ・カワサキ・レーシング)が、マシンが暴れてしまう症状とトラクション不足に苦しみながらもレース1を21位、レース2を25位で終えました。マシンの改善に集中したことで、次戦につながる好感触を得たということです。阿部真生騎(VFTレーシング・WEBIKEヤマハ)は予選落ちとなりました。