ハイ! みなさん、こんにちは。
PIRELLI JAPAN Moto オフィシャルライダーのDIABLOMAN だよ。
これからいろいろなインプレッションや広報活動をしていくからヨロシク!
走行会やイベントに呼んでくれたら、前向きに検討するから遠慮なく誘ってくれよな。
SNS のコラボレーションも大歓迎だぜ、実はまだ専用アカウントはないんだけどな……。
今回のレポートには、オーダーしていためちゃくちゃカッコいいレザースーツが間に合わなかったから、写真映えは次回以降、さらに期待してくれ。
さて、第1回目のテストレポートはスギ花粉が絶好調な千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイにて開催された、トライアンフの新型STREET TRIPLE 765RS のメディア向け試乗会から。
PIRELLI JAPAN のテスターとして、錚々たるジャーナリストの諸先輩方に混ざって参加してきたから、DIABLOMAN 流のレポートをお伝えするよ。
ちなみに、今回のSTREET TRIPLE 765RS(以下RS)に標準で装着されているタイヤが DIABLO™ SUPER CORSA SP V3 だったので、PIRELLI のレーシングサービスが試乗会のタイヤサポートを担当していたから安心して走行できたよ。
DIABLO™ SUPER CORSA SP V3 のポテンシャルは、いまさらどうこういうこともないくらい認知されていると思う。
まぁ、せっかくだから少しくらいは触れるけど、今回はそこの忖度なしに純粋に車両のインプレッションをお届けしていくことにする。
午前中は各メディアさん達が車両の撮影をしたり、プレスカンファレンスっていうのかな? トライアンフジャパン による765 シリーズのレクチャーを受けて、さぁいよいよ、DIABLOMAN お待ちかねの試乗タイムだ。
せっかくのサーキットでの試乗会だ。カタログデータにもある仕様や数値は少なめに、ストリート目線のインプレッションは諸先輩方にお任せして、DIABLOMAN は純粋にスポーツ走行で感じたフィーリングをみんなに伝えようと思う。
でもDIABLOMAN だから、まずはタイヤにも触れておかないとね。
当日は晴天で風も弱め、日中の気温は18℃くらいまで上がり絶好の走行日和り、タイヤウォーマーの使用はなし。PIRELLI のレーシングサービスの判断で、サーキットでの試乗ということと、ライダーが乗りなれたジャーナリスト達ということで、空気圧を冷間で前後2.3barに下げた設定でスタートした。
ちなみに、一般的にはタイヤの空気圧と言われることが多いけど、内圧って言うとちょっと業界っぽく聞こえてカッコいいぞ! タイヤの内側の圧力だから略して「内圧」。DIABLOMAN は業界人だから、これから先は内圧で統一だ。
設定してもらった内圧の冷間2.3bar はスタート時点では適正だったと思う。DIABLOMAN的にはもう少し下げてほしいな……と思っていたけれど、ジャーナリストとは言えさまざまなレベルのライダーが乗り、中にはレーシングスーツではないツーリングウエアのライダーもいたので、そこは身内だからと我がままを言わずに大人な対応で黙って乗ったよ。
2 スティント程走行したところで内圧確認を依頼したところ、少し上がり気味だったので温間で前後2.1bar に再調整してもらった。
タイヤの内圧設定の仕方については簡単に伝えられるものではないので、改めて別の場所できちんと説明させてもらおうと思う。
簡潔には、サーキットでも内圧はただ下げればいいというものではないし、冷間よりも走行中の温間の数値が大切なんだ。
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今回に関しては気象条件や車格やパワー、ペースが試乗会という枠の中で総合的に判断した落としどころがこの設定だったと思う。
ちなみにペースの目安は、試乗会という環境なので限界まで攻め込むことはなく、みんなで乗り換えて交代で走行するというさまざまな無理のできないプレッシャーの中、スポーツ性をきちんと感じられる程度に負荷や荷重をかけながら、無理せずに1 分13 秒前半を安定して出せていた。
車両インプレッションで大切なのは、そのモデルのジャンルや特性により、特にスポーツモデルであれば適正な負荷をかけてインプレッションすることだと思う。
袖ヶ浦のコースを走ったことのないライダーにはタイム基準での判断は難しいと思うが、当日走行していたライダーの中では比較的ハイペースだったので、RS で本格的なスポーツ走行を楽しみたいライダー目線でのインプレッションとなっている。
参考までに袖ヶ浦のタイムからマイナス10 秒が筑波2000 のタイムに相当し、筑波2000 のタイム×2 をモテギのタイム相当とするのがサーキットごとのタイムの目安のひとつかな。
では、そろそろメインの車両インプレッションといこう。
せっかくRS モデルのサーキット試乗なので、走行モードは全車TRACK を選択した。
車両の仕様は、シートがノーマル(836mm)/ローシート(-28mm)/ローダウン(-10mm)+ローシート(-28mm)の3 種類が用意されていた。ノーマルシート高の836mm は最新のSS 車両並みだが、シート手前の形状がスリムなために、⾜がスッと下りるので身⻑が170cm のDIABLOMAN は⾜着き性に不安はなかった。
各車の説明を受けてDIABLOMAN がなるほどね! と感心したのは、ローダウン仕様がローダウンリンクを使ったり、プリロードやバネレートを弱めたものではなく、リアサスペンション上部の取付マウントに装着されているアダプターを交換してサスの全⻑を短くする手法を取っていたこと。要は車高調整機能でのローダウンということで、⾜着き性も良くしたいけどスポーツ性も確保したいライダーにはありがたい手法だ。
専門的には、車高を下げるとスイングアームの垂れ角が減りアンチスクワット効果が減少してしまうのでリアサスが入りやすくなり、本格的なスポーツ走行ではスポーツ性が少し下がってしまうが、他の手法に比べればスポーツ性や基本的な車体特性をあまり犠牲にせずに⾜着きが向上するので、メーカー側の選択としては好印象だった。
ストリートユースなら、元々がスポーティに締め上げられたリヤサスペンションなので、⾜着き性には不満がなくても乗り心地が良く、扱いやすくなるので、ローダウンを選択肢に入れてみてもいいだろう。
また、サスペンションがフルアジャスタブルなので、⾜着き性を確保したうえで、さらに好みの設定にすることでよりスポーツ走行を楽しむことが可能だ。
ローシートに関しては好みが分かれるところだ。確かに座面自体は低いのだがシート前方のエッジが立っているために、停車時は内股がシートのエッジに引っ掛かり、ノーマルシートのように⾜をきれいに下ろせない。
反面、座面はスポーツシート的なしっかり感があるのでハイペースでの走行でも座面の安定感があり、車両のフィーリングが伝わりやすく、走行中の印象は良かった。
快適性と⾜着き性を優先するのであれば、ローダウン/ノーマルシート→ローダウン/ローシートの順で検討してみるのがお勧めだ。最大で38mm 下がるローダウン/ローシートの車両でも、市販状態としては十分に高いレベルでのスポーツ性が確保されており、懸念していたダルい操安性のがっかり感を感じなかったのが、いい意味での想定外だった。
ブレーキに関してはbrembo の最新システムが組まれているので、特にどうこう言うような不安や不満はまったくなく、ある程度のハイペースで連続周回を重ねても安定した制動力を保っていた。
フロントに装着されたセミラジアルのマスターシリンダーには、上位モデルらしく好みでレバーレシオを19-20-21 と3 段階に調整可能なMCS(マルチクリックシステム)も搭載されている。
MCS は通常のレバーの引き代調整と合わせて、テコの原理の作用点の位置を調整することによりレバーレシオを変更でき、ブレーキレバーの操作感をより好みに調整することが可能なシステムで、ブレーキ操作にシビアさが要求されるスポーツ走行にはありがたい装備だ。
そして、特に好印象だったのがエルゴノミクスを見直して最適化させたことによる操作性の良さだ。
レバーの角度やヒールプレートの位置、しっかり立ったタンクエンドやコーナリング時にニーグリップで身体を預けやすい位置に十分な面積があるタンク側面等、これらが絶妙な位置に配置されていることにより、スポーツ走行をするライダーが乗れば、お! 分かってるな、と感じられるだろう。
もちろんそれらの配置はスポーティさとは? を良く理解している設計者が意図したところであると感じられる。このような設計思想は、一般のストリートライダーにも自然と収まるところに収まるコンパクトさを感じさせてくれるのではないだろうか。
特別なスキルがなくてもシンプルに当り前のように気持ちよくスポーティに操れる、乗車姿勢や操作系に違和感を感じない、というのがどれだけハイレベルなことなのかを改めて気付かせてくれる素性の良さは、フォーミュラのファクトリーが軒を連ねるイギリス的なスポーツモデルの設計思想なのだろうか? 無駄を削ぎ落としたロータスやケータハムにも通じるような、ミドルクラスのコンパクトスポーツカーとの共通点を感じた。
褒め過ぎているので、あえてスポーツよりさらにアグレッシブなレーシングが好きなDIABLOMAN が高い要求レベルでの個人的な好みでいえば、ステップの位置はもう少しだけ高いとさらにいいと思うし、 DIABLO™ SUPER CORSA SP V3 のパフォーマンスをもっと堪能することができる。実は試乗中にステップ先端のバンクセンサーを削ってしまったので、それ以上の走りをセーブせざるを得なかった。捉え方を変えれば、それだけバンク角にマージンを残した現状でも十分にスポーティだったということだ。
それでも比較対象にされるような車両に比べてステップを擦ってしまうストレスは格段に少なく、バンク角も十分にあるので、一般ライダーであればサーキットでのスポーツ走行でストレスを感じることはあまりないだろう。ネイキッド系のストリートファイターモデルの中ではトップクラスの、スポーツが出来るポジション設定だ。おっと、結局褒めてしまったな。
ハンドリングに関しては、スペック上の車重は188kg と軽量な部類で、実際に操っていると重量バランスの良さや車体の剛性バランスと⾜回りの締まり具合、少し高めの乗車位置とトルクフルで扱いやすいエンジン特性により、ネイキッドモデルとしてトップクラスのスポーティで軽快な操作感でスポーツ走行を堪能させてくれる。
RS のインプレッションなので、ライバルとなりそうな他車にとって少し厳しい表現をすると、RS はSS の牙を抜いてマイルドな味付けにされてしまったようなネイキッドモデルとは違う。
ライバルメーカー達は、スポーツネイキッドジャンルの車両を開発する際はRS をベンチマークとして強く意識するべきだろう。
サスペンションに関しては、リヤに装着されたオーリンズ製STX40 の設定は路面追従性やフィードバックのレスポンスもよく、標準設定でスポーツ走行をしていてもきちんと機能していたので、今回のペースではセッティング変更の必要性を感じなかった。
対してフロントに装着されていたショーワ製41mm 倒立式ビッグピストンフォーク(通称BPF)の設定は、今回一番気になった部分。決してダメな訳ではなく、必要十分に機能はしていた。
なので、ストリートモデルではあるが、サーキットでの試乗の為に、またDIABLOMANの要求が高いだけなんだと思って読んでほしい。公道で乗っていれば、たとえワインディングを楽しんでもまったく気にならないレベルだ。
市販のストリートモデルは安全面の確保も含めて、設定を攻めきれないことを理解している。ただ、コンサバティブにまとまっていて、他の設定がサーキット走行でも不満がないほど良かっただけに、もう少し思い切ってスポーツ性を出してあげても良かったのではないだろうか? ともったいなく感じてしまった。なので、これはサーキットでのスポーツ走行目線のちょっと辛口インプレッションというのが前提の意見だ。
アップハンドルの車両というのは、セパレートハンドルのモデルに比べフロントに荷重を乗せるのが苦手だ。しかしサーキットで速く走るためにはいかにフロントに荷重を乗せられるかが大きな課題である。
純粋なレース車両の多くがセパレートハンドルを採用している理由でもあるし、フロントフォークにオーリンズのNIX30 を採用している上級グレードの限定モデルであるMoto2 Edition のハンドルはトップブリッジ一体型ではあるが、RS より低く垂れ角のあるセパレートハンドル仕様になっている。
なので、よりスポーツ性を求めるのであればMoto2 Edition ということになるだろう。
そこはメーカーとしてRS ではストリートでの操安性をしっかりと確保した、と捉えていいと思う。
では、RS のBPF フロントフォークは何がもう少しなのか? 簡単に言ってしまえばフロントの位置が高い。バーハンドルだからハンドルの位置が高いのではなく、ブレーキングやコーナリング中のステアリングヘッドの位置が少し高い為に、せっかく持っている旋回性能を十分に引き出すことが難しい。
要するにフロントフォークの使っている位置が高めに設定されているということだ。
公表されているフロントのホイールトラベルは115mm だが、マージンを多めに取った設定のために実際の有効ストロークはもうちょっと少ないだろう。セーフティマージンを多めに取っているために、サーキットでおいしい奥の低いところが封印されてしまっている。
さらに専門的な見方としては、BPF 採用の是非を問うスポーツ走行玄人のライダーもいるかもしれないが、そこは我々が踏み込むところではないと思う。
また、近年のスポーツ車両では、フロントのホイールトラベルを120mm/125mm/130mm と大きく取り、少しレートが低めのスプリングでフロントを良く動かすのが主流になってきているが、バーハンドルであることと、フロントフォークの作動域が高めの位置に設定されていることにより、フロントへの荷重を十分に掛けられず、せっかく持っている旋回性能にリミッターがかかってしまっている状態だと感じる。
今回唯一若干のストレスを感じた箇所がここで、だからもったいなく感じてしまった、という表現になってしまったのだ。
それは同時に、フロントに装着されたDIABLO™ SUPER CORSA のパフォーマンスにもまだまだマージンが残っているということになる。
走行後のタイヤの表面を見れば一目瞭然で、リアにはきっちりと荷重を乗せて使えていたのに対して、フロントのタイヤ表面はサラっとした表情で、まだ本領が発揮されていなかった。走行中の荷重配分がリア寄りで、コントロールがしやすくマージンを確保しやすいリアステアを重視した設定になっている。しかし、スポーツ走行のレベルを上げようとすれば、フロントタイヤもきちんと使えるようにならなければならない。
まだその領域を引き出す余地が残っているということだ。
少しフォローしておくと、今回試乗したコースレイアウトがあまりフロントにハードな要求をしてこないという側面もある。
また、このような設定は多くの市販車がそうであり、メーカー側はコントロールがシビアなフロントへの荷重をソフトにする傾向がある。
特にネイキッド系の車両では顕著であるために、一部のSS 車両を除けばライバル車両との比較でネガティブに作用することはないだろう。各メーカーの開発陣の肩を持てば、不特定多数のライダーのレベルや道を想定した市販のストリートモデルには厳しい意見であることは承知している。
DIABLOMAN がアップハンの扱いが下手なだけなんじゃない……? という感想は傷つくからそっと胸にしまっておいてくれ(涙)。
最後にトライアンフといえば、車名にもなっているTRIPLE のトルクフルな3 気筒エンジンだ。
熟成に熟成を重ね、遂にはMoto2 のエンジンサプライヤーになり、レースシーンにてさらなる磨きがかかったクラス最強のスペックは、9500rpm で80Nm の扱いやすい豊かなトルク特性と、RS は12000rpm で先代よりも7ps 出力が向上した130ps の最高出力を発揮する。
新型のエンジンは、Moto2 で得たノウハウが存分にフィードバックされ、エンジン内部のパーツがリファインされたことでパフォーマンスと信頼性の向上につながっているとのこと。
ちなみに、このエンジンをベースにチューニングされたMoto2 のエンジンは、14000rpmで141ps を発生し、扱いやすいトルク特性がライダーに積極的なバトルを促すことでレースが面白くなり、壊れないタフな信頼性はレースシーンでも評価されている、とのアナウンスだ。
先日の発表では、今年からMoto2 は更に+400rpm 上乗せされたそうだ。
確かにトルク特性が豊かで穏やかなので、ギヤポジションやライン取りに自由度が生まれ、ハンドリングも素直で気になるようなクセがないので、バイクに合わせて走るというよりもライダーが主導権を握って操ることが出来る。
試乗会でコース上が空いていたとはいえ、時折訪れるオーバーテイク時にはライダーに選択肢を与えてくれ、ラインの修正やタイヤのスライド等のコントロール、ちょっとしたイレギュラーな挙動などを最新の電子制御系が許容してくれる懐の深さから、冷静に対応してライディングに集中することが出来た。
市販車とレース仕様のMoto2 エンジンでスペック上の数字にあまり開きがないということも、それだけ完成されたエンジンだと言っていいと思う。そこには、スペック上の数字以上に乗って感じられる気持ち良さがある。
今回試乗したミドルサイズに分類されるコースの袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、サーキットというステージでもエンジン性能の物⾜りなさはまったく感じないどころか、スタンダード状態で十分なパフォーマンスだった。
特に感心したのがレブ特性の良さだ。急激な出力の落ち込みがなく非常によく制御されており、エンジンのバージョンアップに合わせて変更されたギヤ比との相性や、UP/DOWN 対応のシフトアシストも試乗中に一度もシフトミスを起こさず、スリップ&アシストクラッチとも相まって加速も減速もつながりがよく気持ちよく走ることができた。
フルカウルのDAYTONA スタイルであれば、鈴鹿やモテギ等のフルサイズの国際サーキットでもエンジンパフォーマンスでストレスや物⾜りなさを感じることはないだろう。カタログモデルにDAYTONA が復活してくれることを期待したい。
各地にはネイキッドスタイルのレースもあるので、風の抵抗なんて気にしないぜ、というライダーはRS でも十分サーキット走行を楽しめることは保証する。
実際に袖ヶ浦ではネイキッドスタイルによる空気抵抗はまったく気にならず、Moto2 で軒並みコースレコードを塗り替えているエンジンパフォーマンスの片鱗を感じることが出来た。
そして、何よりショート気味なサイレンサーからのパルス感あるエキゾーストサウンドが超気持ちいい! 暖機でレーシング(サーキットでは空吹かしとは言わないんだぜ)していても、お! トライアンフ とすぐに分かるヒュンヒュン音は健在で、コース上で高回転まで回した時のサウンドもオリジナリティある独特のチューニングサウンドだ。
この魅力的で差別化されたサウンドは、走っていても、走っている音を外から聞いても存分に堪能できる。
ぜひとも販売店で試乗の申し込みをして、実際に体験してもらいたい。