写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第7戦フランスラウンド
9月9日~11日/フランス マニクール・サーキット

2022年シーズンの後半戦が第7戦フランスラウンドから始まりました。開催地のマニクール・サーキットはフロントが試されるブレーキングエリアと、やや長めのストレートが特徴です。また、高速ストレートから非常にタイトなライン取りが要求されるヘアピンもあります。アスファルトは滑らかですが、雨が降ったり、気温が下がったりした状態では特にグリップが低下します。

フロントとリヤに新タイヤを投入

ピレリはこのフランスラウンドに向け、フロント、リヤともに新たなタイヤを持ち込みました。フロントタイヤはスタンダードソフトのSC1、すでに投入されてきた開発ソリューションのソフト、SC1(A0674)に加え、開発ソリューションとしてソフトのSC1(B0570)がデビューしました。このSC1(B0570)はフロントアクスルにおける高いグリップを確保するため、ソフトコンパウンドを採用しています。両輪のグリップレベルのバランスをとるために、リヤタイヤにSCQまたはSCXを組み合わせることが特に効果的だと考えられます。また、レインタイヤとしてウエットコンディションや低い気温において高いグリップを発揮する新しい開発ソリューションに、SCRDが加わりました。

リヤタイヤには、スタンダードソフトのSC0、スタンダードエクストラソフトのSCXのほか、新たな開発ソリューションとしてスーパーソフトのSCX(B0800)が加わっています。SCX(B0800)は、ピレリがミサノで開始したSCXベースの開発を継承するものです。

スーパースポーツ世界選手権(WSS)にはフロントタイヤにスタンダードソフトのSC1、ミディアムのSC2、リヤタイヤにスーパーソフトのSCX、ソフトのSC0を用意しました。

金曜日はウエットコンディションでのセッションとなったものの、スーパーポールとレース1が行われた土曜日はドライコンディションとなりました。

スーパーポールでは、ポールポジションを獲得したジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)と2番グリッドとなったトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BrixxワールドSBK)が同タイムの1分36秒124をマーク。グリッドはそれぞれの2番目のベストタイムによって決定されました。3番手はスコット・レディング(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)、4番手はアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が獲得しています。

スーパーポールでは、全ライダーがリヤにSCQを使用し、フロントにはレイ、ラズガットリオグル、バウティスタが新たなソフトタイヤであるSC1(B0570)をチョイスし、レディングは従来のSC1(A0674)を選びました。

WSBKレース1:レイ、ラズガットリオグルが転倒の波乱

レース1は気温21度、路面温度29度のドライコンディションで行われました。タイヤ選択はポールポジションから5番グリッドに並んだライダーを含め、24人中19人がリヤにSCX(B0800)を選択。フロントについてはSC1(B0570)とSC1(A0674)で分かれ、一部がスタンダードのSC1を選びました。

レースは序盤にレイ、ラズガットリオグルというタイトル争いを展開するライダーがそろって転倒を喫する幕開けとなります。レイ、ラズガットリオグルともにマシンを起こして再びレースに加わりましたが、優勝争い、表彰台争いからは脱落することになりました。

一方、チャンピオンシップのランキングトップにつけるバウティスタは7周目にトップに立つと独走態勢を築き、今季8勝目となる優勝を飾りました。2位はレディング、3位はアクセル・バッサーニ(モトコルサ・レーシング)が獲得。序盤に転倒したラズガットリオグルは11位、レイは24位でレースを終えています。日本人ライダーとして唯一WSBKに参戦する野左根航汰(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は17位でした。

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バウティスタ(#19)は7周目にレディング(#45)をかわしてトップに立ち、優勝を飾った

WSBKスーパーポール・レース:ランキングトップ3が表彰台獲得

日曜日のスーパーポール・レースは気温20度、路面温度26度のドライコンディション。ポールポジションのレイ、2番グリッドのラズガットリオグル、5番グリッドのギャレット・ガーロフ(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)はフロントに新開発ソリューションのSC1(B0570)、リヤにSCX(B0800)を選択しました。一方、3番グリッドのレディング、4番グリッドのバウティスタは、フロントにSC1(A0674)、リヤにスタンダードのSCXという組み合わせ。フランスラウンドのスーパーポール・レースでは、ほとんどのライダーがリヤに新開発ソリューションのSCX(B0800)、またはスタンダードのSCXを選びました。

レース1周目はレイからトップを奪ったバウティスタがリードします。4周目にはラズガットリオグルがレイをかわして2番手に浮上。バウティスタの背中にぴたりとつけます。その後、ラズガットリオグルがトップに浮上すると、2番手はバウティスタとレイによる争いとなりました。優勝はラズガットリオグル。激しい2位争いを制したのはバウティスタで、レイは3位を獲得しています。野左根は16位でした。

WSBKレース2:ラズガットリオグル優勝でランキング2番手に浮上

レース2は気温23度、路面温度36度のドライコンディションで行われました。このレースでは24人中21人のライダーがリヤにSCX(B0800)を選択します。フロントには多くのライダーがSC1(A0674)をチョイスする中、スーパーポール・レースで優勝したことでレース2をポールポジションからスタートするラズガットリオグルは、スタンダードのSC1を選んでいます。

そのラズガットリオグルは、レース2周目にトップに立ち、バウティスタとレイが続きました。しかし13コーナーでバウティスタのインサイドに飛び込んだレイがバウティスタと接触。バウティスタは転倒し、リタイアを喫します。レイはこの接触に対し、ロングラップ・ペナルティを科されることになりました。

トップ争いはラズガットリオグルとバッサーニ、リナルディによって展開されましたが、バッサーニは次第に2人から遅れます。レース中盤までトップを走行していたのはリナルディ。しかし14周目、ラズガットリオグルがリナルディをパスしてトップに浮上します。

ラズガットリオグルはそのままトップでチェッカーを受けました。2位はリナルディ、3位はバッサーニが獲得しています。レイはペナルティを消化し5位でゴール。この結果、ラズガットリオグルがチャンピオンシップのランキングでレイをかわし、トップのバウティスタから30ポイント差の2番手に浮上しました。野左根はポイント圏内の15位でフィニッシュしました。

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前年王者のラズガットリオグルはレース2の結果によりランキング2番手に浮上

WSS:レース2でバルダッサーリ転倒。エガーターがランキングトップを維持

レース1は気温21度、路面温度29度のドライコンディションとなりました。このレースでは、全ライダーがフロントにSC1を選択。リヤはポールポジションのフェデリコ・カリカスロ(アルテア・レーシング)など3人のライダーがSC0、そのほかのライダーはSCXをチョイスしました。

序盤はカリカスロがレースをリード。しかし7周目にスローダウンしたことでロレンソ・バルダッサーリ(エヴァンブロス.ワールドSSPヤマハチーム)がトップに立ちました。その後、13周目に5コーナーで発生したクラッシュにより赤旗が提示され、レース全体の周回数19周の3分の2を終えていたことからレース終了となり、優勝はバルダッサーリ。2位はグレン・ヴァン・ストラーレン(EABレーシングチーム)、3位はレース中盤にポジションを上げたドミニケ・エガーター(テンケイト・レーシング・ヤマハ)が獲得しています。

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レース1でバルダッサーリ(#7)が今季4勝目

レース2は気温22度、路面温度32度のドライコンディション。ほとんどのライダーがフロントにSC1、リヤにSCXを選択し、フロントにSC1、リヤにSC0を選んだのはカリカスロを含む2人のライダーのみでした。

1周目、トップに立ったのはバルダッサーリでした。6周目にはカリカスロがバルダッサーリをかわしてトップとなるも、10周目、バルダッサーリがトップを奪還します。2番手を走っていたカリカスロは14周目に転倒。トップ争いはトップのバルダッサーリと2番手に浮上したエガーターとの争いとなりました。

エガーターは16周目にバルダッサーリをかわし、ついにトップに浮上します。チャンピオンシップのランキングトップであるエガーターとランキング2番手のバルダッサーリは最終ラップまで激しいトップ争いを展開していましたが、13コーナーでバルダッサーリが転倒。この結果、エガーターが今季10勝目を飾りました。2位はジュール・クルーゼル(GMT94・ヤマハ)、3位はニコロ・ブレガ(Aruba.itレーシング・ワールドSSPチーム)が獲得しています。バルダッサーリはマシンを起こして5位でレースを終えました。

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レース2はエガーターが優勝。フランスラウンドはタイトルを争う2人が優勝を分け合う結果に

WSS300:岡谷雄太はスーパーポールでの転倒により欠場

レース1の中盤以降は、ビクター・スティーマン(MTMカワサキ)、ミルコ・ジェンナイ(チームBrコルセ)、ユーゴ・デ・コンセリス(プロディーナ・レーシング・ワールドSSP300)の3人によるトップ争いとなりました。残り5周、5コーナーで多重クラッシュが発生。トップ争いを展開していたスティーマン、ジェンナイ、デ・コンセリスが転倒を喫しました。

その後、トップ争いは最終ラップの最終コーナーまで激しく争われ、マルク・ガルシア(ヤマハMSレーシング)がトップでフィニッシュラインを通過しましたが、フィニッシュライン直前のトラックリミット違反により1ポジション降格となり、この結果、優勝はマッテオ・ヴァヌッチ(AGモータースポーツ・イタリア・ヤマハ)、ガルシアは2位、3位はアルバロ・ディアス(アルコ・モーター・ユニバーシティ・チーム)が獲得しています。岡谷雄太(MTMカワサキ)はスーパーポール1周目の転倒により脳震盪の疑いがあるとされ、2レースともに欠場となりました。

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レース1の表彰台はヤマハ勢が独占した

レース2では、レース1のアクシデントに対しスティーマンにダブル・ロングラップ・ペナルティが科されます。スティーマンは序盤にペナルティを消化すると、22番手付近に後退したところから猛烈な勢いで上位に追いつき、トップ争いを展開。残り4周目でトップに立つと、優勝を飾りました。2位はディアス、3位はディルク・ガイガー(Fusport-RT・モータースポーツ・by SKM-カワサキ)が獲得しています。

第8戦カタルーニャラウンドは、9月23日から25日にかけて、スペインのバルセロナ‐カタルーニャ・サーキットで行われます。