写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
WSBK第8戦カタルーニャラウンド
9月23日~25日/スペイン バルセロナ-カタルーニャ・サーキット
バルセロナ-カタルーニャ・サーキットはタイヤにとって厳しいサーキットで、ピレリにとってはここ数戦に投入した開発ソリューションのタイヤをテストする絶好の機会となりました。またWSS300では岡谷雄太選手が待望のシーズン初優勝を飾りました。
フロント、リヤにそれぞれ4種類のタイヤを用意
ピレリはカタルーニャラウンドに、4種類のフロントタイヤ、リヤタイヤを投入しました。フロントタイヤについてはスタンダードソフトのSC1、開発ソリューションのソフトタイヤSC1(A0674)、アッセンで初めて登場した開発ソリューションのソフトタイヤSC1(A0843)、そして前戦フランスラウンドで初登場した開発ソリューションのソフトタイヤSC1(B0570)です。SC1(B0570)は特にソフトコンパウンドのタイヤであることから、ピレリはバルセロナでのこのタイヤの使用をスーパーポール(予選)とスーパーポール・レースに限定しました。事実上、リヤのSCQに対応するフロントタイヤとしています。
リヤタイヤについてはスタンダードスーパーソフトのSCX、フランスラウンドで初投入された開発ソリューションのスーパーソフトSCX(B0800)、スタンダードソフトのSC0、そしてスーパーポールとスーパーポール・レース用のエクストラソフトSCQを用意しています。
スーパースポーツ世界選手権(WSS)についてはフロントにソフトのSC1、ミディアムのSC2、リヤにスーパーソフトのSCX、ソフトのSC0が投入されました。
土曜日に行われたWSBKのスーパーポールでは、イケル・レクオーナ(チームHRC)がWSBKで初のポールポジションを獲得しました。ホンダにとっても、2016年のタイでマイケル・ファン・デル・マークが獲得して以来のポールポジションとなりました。2番手はアレックス・ロウズ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)、3番手はジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)でした。スーパーポールでは、トップから4番手のライダーまでが、フロントにSC1(B0570)、リヤにSCQの組合せを選んでいます。
WSBKレース1:ラズガットリオグルが表彰台逃す
レース1は気温22度、路面温度32度のドライコンディション。フロントタイヤについては選択が分かれ、もっとも多くのライダーが選んだのはSC1(A0843)でした。リヤタイヤは23人中20人がSCX(B0800)をチョイスしましたが、ポールポジションスタートのレクオーナはSC0を選択しています。
ホールショットを奪ったのは5番グリッドからスタートしたバウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)でした。バウティスタの後ろには8番グリッドスタートのラズガットリオグル、ロウズが続きます。一方、3番グリッドスタートのレイは7番手にポジションを落としました。
バウティスタはその後、後方との差を広げていきました。2番手のラズガットリオグルも3番手以下にアドバンテージを築きますが、15周目に3番手に浮上したレイがラズガットリオグルを追い上げ、終盤にラズガットリオグルに追いつきました。レイは残り4周でラズガットリオグルをパスし、2番手に浮上。対するラズガットリオグルはポジションを落としていきます。
トップを快走していたバウティスタはそのままチェッカーを受けて優勝を飾りました。2位はレイ、3位にはギャレット・ガーロフ(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)が入りました。ラズガットリオグルは5位、日本人ライダーとして唯一、WSBKに参戦する野左根航汰(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は16位でした。
WSBKスーパーポール・レース:バウティスタが優勝、レイは2位
日曜日午前中のスーパーポールは、気温18度、路面温度28度のドライコンディションとなりました。スーパーポール・レースのタイヤ選択は、フロントタイヤについてはレース1同様にライダーそれぞれのものとなりました。一方、リヤタイヤについてはこちらもレース1のように、半数以上のライダーがSCX(B0800)を選びました。ただ、バウティスタやレクオーナなどはスタンダードのスーパーソフトSCXをチョイスしています。
このレースでも好スタートを切ってトップに立ったのはバウティスタ。2番手にロウズ、3番手にレイが続き、この3人がレースをけん引します。ラズガットリオグルはその1秒以上後方で、マイケル・ルーベン・リナルディ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)と4番手争いを展開。5周目に4番手に浮上しました。
終盤に入るとバウティスタが2番手のロウズと3番手のレイを引き離し始め、そのまま優勝を飾りました。2番手はロウズがキープしていましたが、最終ラップの1コーナーでレイがロウズをパス。2位はレイが獲得し、3位にはロウズが入りました。4位はラズガットリオグル。野左根は13位でゴールしました。
WSBKレース2:バウティスタが他を寄せつけぬ速さで週末3勝を挙げる
日曜日午後に行われたレース2は気温22度、路面温度39度のドライコンディションとなりました。フロントタイヤはSC1(A0674)またはSC1(A0843)が選択され、リヤタイヤについてはほとんどのライダーがSCX(B0800)を選んでいます。
スーパーポール・レースで優勝したバウティスタがポールポジションからスタートすると、これまでの2レースの再現のようにトップに立って独走態勢を築きます。
その後方では2番手のリナルディ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がレイやアクセル・バッサーニ(モトコルサ・レーシング)、ラズガットリオグルなどを含む隊列をけん引する形となりました。レース中盤に入ると2番手のリナルディが3番手以下を引き離し始め、バッサーニ、ラズガットリオグル、レイが3番手争いを展開します。レイは一時3番手に浮上。しかし残り5周の7コーナーでラインを外してはらみ、ポジションを落としました。
バウティスタは2番手に8秒以上の差をつけるパーフェクト・ウイン。カタルーニャラウンドの3レースを制し、週末を席巻しました。2位はバウティスタのチームメイトであるリナルディが獲得し、Aruba.it レーシング-ドゥカティがワン・ツーフィニッシュを果たしています。3位はラズガットリオグルが獲得。レイは4位でした。野左根は15位でゴールしています。
WSS:チャンピオンシップリーダーのエガーターが2勝を挙げる
土曜日に行われたレース1は気温22度、路面温度34度のドライコンディション。フロントタイヤはほとんどのライダーがSC1を選択。リヤタイヤはSCX、SC0でチョイスが分かれましたが、SCXとSC0のパフォーマンスはほとんど近いものでした。
レースは1周目の1コーナーで転倒したライダーのマシンからオイルが漏れたため、赤旗中断となりました。コースコンディションの回復作業が行われたのち、当初の18周から12周に周回数を短縮してレースが再開されています。チャンピオンシップリーダーのドミニケ・エガーター(テンケイト・レーシング・ヤマハ)は1周目に5番手付近を走行していましたが、次第にポジションアップ。5周目にはトップに立ちました。エガーターはそのまま優勝を飾っています。2番手はロレンソ・バルダッサーリ(エヴァンブロス.ワールドSSPヤマハチーム)、フェデリコ・カリカスロ(アルテア・レーシング)、ジャン・オンジュ(カワサキ・プチェッティ・レーシング)によって最終ラップまで激しく争われ、バルダッサーリが2位でゴール。3位はオンジュが獲得しています。
日曜日のレース2は、気温21度、路面温度36度のドライコンディションで行われました。このレースでもフロントタイヤはほとんどのライダーがSC1を選び、リヤタイヤについては半分以上のライダーがSCXを選択しています。
エガーターは1周目に5番手に後退しますが、レース中盤にはトップ争いに加わりました。12周目には1コーナーで曲がり切れずオーバーランを喫して4番手に後退したものの、そこから再び前のライダーに追いつきトップ争いを繰り広げます。残り4周でトップに立ったエガーターはそのままチェッカーを受け、今季12勝目を飾りました。
また、ステファノ・マンジ(ダイナボルト・トライアンフ)とオンジュが激しい2番手争いを展開し、マンジが2番手、オンジュが3番手でゴール。しかし、マンジは最終ラップの9コーナーでトラックリミットを違反したことで1ポジション降格となり、最終結果は2位がオンジュ、3位がマンジとなりました。
WSS300:岡谷雄太が待望の今季初優勝
土曜日のレース1では岡谷雄太(MTMカワサキ)が1列目3番手からスタート。岡谷は1周目からトップ争いを展開。残り2周時点では10番手付近を走行していましたが、トップから10番手以上のライダーが大きな集団のまま最終ラップを迎えました。
最終ラップ、岡谷はこの集団の中でまずは3番手に浮上し、セクター4前に2番手に浮上。さらに最終コーナーで前を走るアルバロ・ディアス(アルコ・モーター・ユニバーシティ・チーム)のインサイドに飛び込み先頭で立ち上がり、トップでチェッカーを受けました。これが岡谷にとって、今季初優勝。2位のディアスとはわずか0.069秒差の接戦でした。3位はフリオ・ガルシア・ゴンザレス(ESPソリューションズMotapレーシング チーム)が獲得しています。
日曜日に行われたレース2は、スタートからビクター・スティーマン(MTMカワサキ)がトップに立ち、レースをリードする展開となりました。2番手争いは大きなグループとなり、岡谷はこの中で接戦を展開します。しかし残り2周、前のライダーと軽く接触。転倒はまぬがれたものの、岡谷はバランスを崩してラインを外し、ポジションを落とすことになりました。スティーマンは独走で優勝。表彰台は最終ラップまで激しく争われ、ミルコ・ジェンナイ(チームBrコルセ)が2番手、ユーゴ・デ・コンセリス(プロディーナ・レーシング・ワールドSSP300)が3番手でゴール。しかし、ジェンナイは最終ラップのトラックリミット違反により1ポジション降格となりました。よって、最終結果は2位がデ・コンセリス、3位がディアスとなっています。岡谷は13位でフィニッシュを果たしました。
第9戦ポルトガルラウンドは10月7日から9日にかけて、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われます。そして、WSS300はこの第9戦が今季の最終戦となります。