写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第4戦エミリア・ロマーニャラウンド
6月10日~12日/イタリア ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ

スーパーバイク世界選手権(WSBK)第4戦エミリア・ロマーニャラウンドが、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われました。

ミサノ・サーキットはアドリア海近くに位置していて塩分や湿度を含んだ空気が路面を劣化させるため、2015年には特別なアスファルトによって再舗装が行われました。アスファルトは研磨性が高く、6月の高い気温に加え、右コーナーでは構造的、熱的ストレスが高いことがタイヤにとって最も大きな課題となります。

ピレリはそんなミサノ・サーキットで行われるエミリア・ロマーニャラウンドに、新たなリヤタイヤを投入しました。スタンダードレンジのスーパーソフトのSCX、ソフトのSC0、スーパーポールとスーパーポール・レース用エクストラソフトのSCQに加え、SCXA(B0452)、SCXB(B0453)を用意したのです。このSCXAとSCXBは、SCXとコンパウンドとカーカスがスタンダードのSCXとは異なっています。また、SCXAとSCXBはコンパウンドが同じであるものの、構造が異なるものです。

フロントタイヤについては前戦エストリルラウンド同様、スタンダードのソフトタイヤSC1、開発タイヤのSC1(A0674)が用意されました。

また、スーパースポーツ世界選手権(WSS)に関してはすべてスタンダードレンジで、フロントタイヤがソフトのSC1とミディアムのSC2、リヤタイヤがスーパーソフトのSCXとソフトのSC0となっています。

WSBK:レース1、レース2でバウティスタが優勝

土曜日に行われたスーパーポール(予選)では、アルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がフロントにSC1(A0674)、リヤにSCQの組合せで、オールタイムラップ・レコードを更新してポールポジションを獲得しました。これは、ドゥカティにとって2009年以来となるミサノ・サーキットでのポールポジションとなりました。2番グリッドはトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BrixxワールドSBK)、3番グリッドはジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)で、野左根航汰(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は15番グリッドを獲得しています。

レース1は気温26度、路面温度44度のドライコンディションとなりました。このレースでは半分以上のライダーがフロントタイヤにSC1(A0674)を選択。リヤタイヤは多くのライダーがSCXA(B0452)を選んだ一方、バウティスタはフロントロウの3人の中で唯一、SCXB(B0453)をチョイスしました。

好スタートを切ったのは2番グリッドスタートのラズガットリオグルでしたが、3周目にレイがトップのラズガットリオグル、そして2番手のバウティスタをかわしてトップに浮上します。しかし2番手にポジションを上げたバウティスタが追い上げ、13周目にはレイをパス。バウティスタがトップに立ち、レイは2番手に後退しました。

3番手に後退したラズガットリオグルはバウティスタとレイから遅れていき、さらに14周目にはマシントラブルが発生してリタイアとなりました。

バウティスタはその後もトップを譲らず差を広げていき、そのまま優勝を飾りました。2位はレイで、3位はマイケル・ルーベン・リナルディ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が獲得しています。

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レイを下して優勝したバウティスタ。SBK参戦4年目で速さに成熟が加わっている

日曜日に行われたスーパーポール・レースは、気温27度、路面温度39度のドライコンディション。フロントタイヤには多くのライダーがSC1(A0674)を選んだのに対し、リヤタイヤはSCXA(B0452)、SCXB(B0453)、SCX、SCQと選択が分かれました。このレースでは2021年チャンピオンのラズガットリオグルが今季初優勝を飾り、2位はバウティスタ、3位はレイが獲得しています。野左根は最終ラップで転倒を喫し、リタイアに終わりました。

レース2では気温28度、路面温度45度のドライコンディションで、レース1と同じような気温、路面温度となりました。ポールポジションのラズガットリオグルと2番グリッドのバウティスタはスーパーポール・レースと同じタイヤを選択。ラズガットリオグルはフロントにスタンダードのSC1、リヤにスタンダードのSCX、バウティスタはフロントにSC1(A0674)、リヤにSCXB(B0453)の組合せです。一方、3番グリッドのレイはタイヤ選択をレース1に戻し、フロントにSC1(A0674)、リヤにSCXA(B0452)を選びました。このレースでは半分以上のライダーがフロントにSC1(A0674)、同じく半分以上のライダーがリヤにSCXA(B0452)を選択しています。

レース序盤はラズガットリオグルがトップを走っていましたが、7周目にバウティスタがラズガットリオグルをかわしてトップに立ちます。二人はしばらく僅差のまま周回を重ねていたものの、レース中盤以降、バウティスタがラズガットリオグルを引き離していきました。

一方、レイは序盤にリナルディにかわされて4番手に後退。ペースが上がらないままそのポジションでのレースとなりました。

独走態勢に入ったバウティスタはトップでチェッカーを受け、エミリア・ロマーニャラウンドで2勝を挙げました。2位はラズガットリオグル、3位はリナルディで表彰台を獲得しています。レイは4位でフィニッシュ、野左根は16位でレースを終えました。

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後半はバウティスタ(#19)の独走だった。バウティスタはここまでの4戦12レースすべてで表彰台に立っている

WSS:エガーターが7連勝を飾る

土曜日のレース1は気温26度、路面温度44度のドライコンディションとなり、ほぼすべてのライダーがフロントにSC1、リヤにSCXを選択しました。

レースではスタートでトップを奪ったニコロ・ブレガ(Aruba.itレーシング・ワールドSSPチーム)が2番手のエガーターに対しギャップを広げていきます。しかし、ドミニケ・エガーター(テンケイト・レーシング・ヤマハ)とロレンソ・バルダッサーリ(エヴァンブロス.ワールドSSPヤマハチーム)が徐々にその差を詰め、エガーターは残り2周の1コーナーでブレガのインサイドに飛び込み、さらにバルダッサーリもエガーターに続きブレガをパス。バルダッサーリは最終ラップでエガーターをとらえて前に出ると、エガーターの猛攻をしのぎきり、トップでチェッカーを受けました。

しかし、バルダッサーリは最終ラップの15コーナーでトラックリミットを違反したとして、レース後に1ポジション降格となり、最終結果は2位となりました。この結果、エガーターが優勝となり、ブレガは3位を獲得しました。

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最終ラップの激戦はバルダッサーリ(#7)が制したが、トラックリミット違反により優勝はエガーター(#77)の手に

日曜日のレース2も気温27度、路面温度44度のドライコンディションで、レース1のような気温、路面温度となり、全ライダーがフロントにSC1、リヤにSCXを選択しました。

レース序盤はトップのバルダッサーリとヤリ・モンテラ(カワサキ・プチェッティ・レーシング)、エガーターの3人が後方を引き離します。その後、7周目にブレガがモンテラをパスして3番手にポジションを上げました。一方、バルダッサーリとエガーターの二人は終盤に接戦を繰り広げ、残り2周の11コーナーでエガーターがバルダッサーリをパス。エガーターは最終ラップもトップをキープし、優勝を飾りました。

エガーターはこの優勝により、連勝を7に伸ばしています。2位は最後まではエガーターと争ったバルダッサーリ、3位はブレガが獲得しました。

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レース1の優勝を争ったエガーターとバルダッサーリはレース2でも激突。レース2はエガーターに軍配が上がった

WSS300:岡谷雄太、2位獲得で今季3度目の表彰台

土曜日のレース1では、ポールポジションスタートのマッテオ・ヴァヌッチ(AGモータースポーツ・イタリア・ヤマハ)がトップに立ちます。8番手スタートの岡谷雄太(MTMカワサキ)は2番手を先頭とする集団の中、5、6番手で走行していましたが、レース中盤には岡谷を含む5番手以下の集団は2番手争いを繰り広げる3人のライダーから離されていきました。

終盤にはトップを走っていたヴァヌッチにアルバロ・ディアス(アルコ・モーター・ユニバーシティ・チーム)が追いつき、残り2周で激しいトップ争いが繰り広げられました。最終ラップの最終コーナーをトップで立ち上がったのはディアスでしたが、立ち上がりからスリップストリームを利用して加速したヴァヌッチが先行してフィニッシュラインを通過。激しい優勝争いはヴァヌッチに軍配が上がりました。ヴァヌッチと接戦を繰り広げたディアスはわずか0.02秒差の2位。3位はサミュエル・ディ・ソラ(リーダーチーム・フレンボ)でした。岡谷は終盤に集団の中で後退し、8位でレースを終えています。

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WSS300ルーキーのヴァヌッチ(#91)が初優勝を飾った

日曜日に行われたレース2は、序盤から混戦のトップ争いとなりました。そんな中、岡谷は表彰台圏内のポジションを争いながら周回を重ねます。

残り5周になると、ディアスがトップに立ってレースをけん引。岡谷は2、3番手につけ、ディアスを追います。表彰台争いは最終ラップまでもつれこみました。岡谷は最終ラップで2番手に浮上すると、そのポジションを譲らず、2位でチェッカー。オランダラウンドのレース2、エストリルラウンドのレース1に続く表彰台を獲得しました。優勝はディアスで、3位はビクター・スティーマン(MTMカワサキ)でした。この結果、岡谷はチャンピオンシップでトップから33ポイント差のランキング5番手に浮上しています。

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序盤から集団の上位につけた岡谷(#61)。今季最上位となる2位を獲得した

第5戦イギリスラウンドは、7月15日から17日にかけて、イギリスのドニントン・パークで行われます。