Photo/JAM、ピレリジャパン
今回のSATSUKI STAGEから、T.O.T.に大きな変化が起きました。
最速クラスの「HERCULES(ハーキュリーズ)」と、ハーキュリーズクラスから分離・独立して新設された「HYDRA(ヒュドラー)」クラスに出場する車両はこれまでのミゾ付きタイヤから、純粋なレーシングタイヤであるスリックタイヤの使用が許可されたのです。
昨年秋の「KAGURADUKI STAGE」のハーキュリーズクラスで、フクダテクニカの奥田選手が予選で56秒970という新たなコースレコードをマーク。以前から話が出ていた「スリックタイヤOK」というレギュレーション変更が現実味を帯びていました。
筑波サーキットコース2000の二輪のコースレコードは、2009年にホンダの伊藤真一選手がJSBクラスで記録した55秒142ですから、その絶対レコードタイムも視野に入る状態になっていました。
特に、最新鋭の水冷エンジンにフューエルインジェクション(FI)と電子制御を組み合わせたハーキュリーズクラスのマシンは、「鉄フレームのスーパーバイク」と言われるほど先鋭化。あまりのハイペースのバトルに、ミゾ付きでは危ないんじゃないかという声が上がり始めていました。
今回、スリックタイヤの使用を決定した筑波サーキット・業務課の渡辺さんにその経緯を聞いてみました。
「昔からライダーからスリックタイヤを認めてほしいという要望があり、アンケートなども実施してきました。その中で、最近の車両の性能向上に伴って、公道用のミゾ付きタイヤで走ることに対するライダーの心理的負担が増えてきていて、その負担とリスクの低減のために今回からスリックの使用をOKにしました。同時に、ハーキュリーズクラスでキャブレター車とFI車のタイム差が大きくなってきていたので、公平さと安全性の観点からハーキュリーズクラスはキャブレター車オンリーにして、キャブでもFIでもOKのヒュドラークラスを新設しました(編注:ハーキュリーズとヒュドラーはダブルエントリー可)。当初は、ハーキュリーズとヒュドラーの混走も考えましたが、あえて別走として、ヒュドラーを土曜日開催にして懸念だった土曜日の集客増加にもチャレンジしました。今回が初めてでしたので、ヒュドラークラスのエントリーは6台と少なかったですが、回を重ねるごとに増加することを見込んでいます」
今回の観客数は土日の2日間で9900人、土曜日がやや増加し日曜日は若干減少。観客の分散化という運営側の狙いもうまくいったようです。
実際、エントラントは今回のスリック解禁をどう思っているのか。ハーキュリーズとヒュドラーの両方に参戦したOVERレーシングプロダクツの佐藤健正さんに聞いてみました。
「最初は、スリックにしたらタイムが上がりすぎるんじゃないかと思いましたが、0.3~0.5秒くらいのアップで、それよりも足周りが安定して、特にフロントの安定感が出てセットアップもやりやすくなった感じです。スリックを履いても、車体側はスイングアームを少し強化したくらいで大きな変更は必要ありませんでした。今回、両クラスにエントリーしたのは、まずは様子を見ようと思ったからで、今後、どちらのクラスが盛り上がっていくのかまだ分かりませんからね。どちらになってもいいように準備していきます」
一昨年からスーパーモンスター・エヴォリューションクラスにホンダ・CB1100Rで参戦している、元世界GPライダーで数多くのワークスマシンをテストしてきた宇川徹さんにも今回のスリック導入について聞いてみました。
「56秒台に入っていますから、スリックの方が安全だと思います。ハーキュリーズクラスのマシンはもはや、鉄フレームのスーパーバイクですからね。スリックにはスリックなりの難しさもありますが、安全面を考えると今回のレギュレーション変更はよかったと思っています」
今回の2クラスの予選タイムは、ヒュドラークラスが和田留佳選手(Team TATARA-BLUE THUNDERS・TATARA-001)が56秒625、松本隆征選手(OVER Racing Projects・OV-46)が56秒858をマークし、ハーキュリーズクラスは新庄雅浩選手(First☆Starえびす屋商事ACTIVE・ZRX1200S)が58秒057でポールポジションを獲得。約2秒、ヒュドラークラスのタイムが予想通り上回りました。
今後、この2クラスのタイムはどうなっていくのか、ヒュドラークラスのエントリー台数は増えていくのかなど、またひとつT.O.T.に対する楽しみが増えたように思います。
ピレリ以外の選択肢はありません
ピレリタイヤを使用するチームのピックアップですが、今回はインジェクションコントローラー「ラピッドバイク」の輸入販売や車両チューニングなどを行うJAMさん。モンスター・エヴォリューションクラスに2台のヤマハ・XJR1200、FORMULA ZEROクラスにカワサキ・Z1000とスズキ・イナズマ1200をエントリーさせていました。
車体担当の深井さんにお話を聞きました。
「15年くらい前から、お客さまのお手伝いで、T.O.T.に参戦しています。タイヤに関しては、他メーカーのタイヤもテストしてみましたが、ピレリのDIABLO™ SUPER CORSAしか選択肢はありませんね。タイヤがサスを兼ねてくれる感じで、誰でも安心して使えます。ただ、新型のタイヤが出るたびに性能が先鋭化してきますがバイク自体は空冷などの古いままなので、その分しっかりタイヤに合わせてセットアップするようにしています」
モンスター・エヴォリューションに参戦した2台のXJR1200ですが、松浦光一さんが2位、松浦俊彦さんが3位と上々の成績を収めていました。
また、ピレリのタイヤサービスも担当するパワービルダーからGPZ900Rでハーキュリーズに参戦した安富政市さん(POWER BUILDER+SAMURAI)は「速さを求めてスリックというのもありですが、自分はいまのところミゾ付きで戦いたいです。スパコルV4は思った以上にグリップ力も高くて、フロントタイヤも使いやすいし、操舵性も良くてコントロールしやすいですね」と、スリック勢に交じりながら予選で59秒5台の自己ベストをマークし、決勝も59秒台を連発して7位に入っていました。
今回のピレリ/メッツラーの占有率は65.1%
2クラスがスリックタイヤ解禁となった今回のT.O.T.ですが、クラス別のピレリ/メッツラーの占有率を見てみましょう。
- ZERO5:8台(12台中)・占有率66%
- STREET FIGHTER:9台(10台中)・占有率90%
- ZERO3:7台 ※うちメッツラー1台(8台中)・占有率87%
- HYDRA:3台(6台中)・占有率50%
- ZERO4:13台(24台中)・占有率54%
- MONSTER:30台(67台中)・占有率44%
- ZERO2:14台 ※うちメッツラー1台(21台中)・占有率66%
- D.O.B.A.R-1/2:6台(16台中)・占有率37%
- ZERO1:17台 ※うちメッツラー1台(24台中)・占有率70%
- MONSTER EVO:20台(22台中)・占有率83%
- FORMULA ZERO:26台 ※うちメッツラー1台(27台中)・占有率96%
- HERCULES/SUPER MONSTER EVOLUTION:13台 ※うちメッツラー1台(16台中)・占有率81%
- 全体:166台(255台中)・占有率65.1%
昨年11月のKAGURADUKI STAGEの67.2%から2.1%減とはなりましたが、依然として出場車両の半数以上がピレリおよびメッツラータイヤを装着していました。
「ピレリじゃなきゃ勝てない!」神話はまだまだ続きそうです。





