今シーズンからピレリ・SCORPION™ MX32™ MID SOFTで参戦している「Yogibo Pirelli マウンテンライダーズ」には、将来のスーパークロスライダーを嘱望されるスーパーキッズライダーがいます。 その名は、阿部哲昇(てっしょう)選手。まだ小学4年生・10歳ですが、その才能には多くの関係者が目を見張っています。

阿部永(ひさし)さん・しのぶさんご夫婦の次男として北海道・札幌で生まれた哲昇選手は、永さんがモトクロスライダー(IBのライセンス保持)だったのもあって、幼少期から週末はモトクロスコースで過ごすのが日常だったそうです。ちなみに、哲昇選手のお兄さんで同じチームの阿部一斗(かずと)選手もNBクラスのライダーで、今シーズンは北海道選手権でチャンピオンを目指しています。

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埼玉のオフロードヴィレッジで開催された全日本第3戦には、札幌から両親と哲昇選手の家族3人で遠征してきた。お兄さんは札幌で留守番だった。

哲昇選手が初めてバイクに乗ったのは3歳のとき(電動バイクだったそうです)。お父さん、お兄さんがモトクロスライダーだったので、ごく自然な流れだったのでしょう。そして、初レースはその翌年、4歳のとき。北海道・釧路で行われた草レースに出場して、最年少ライダーだったために「特別賞」をもらったそうです。

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初めて出場したレースは、釧路のコースで行われた草レース。最年少ライダーとして「特別賞」をもらった。

哲昇選手は、「レースは難しかったけど、楽しかった」と当時を振り返ります。

初レースの後は、「出られるレースは全部出てきました」(永さん)。哲昇選手は、「練習と違って、レースは人がいっぱいいてバトルができるのが楽しい」のだそうです。

しのぶさんによると、哲昇選手はものおじすることが一切なく、いろんなモトクロスコースに遠征するたびにすぐに友達を作って、どこのコースに行っても「哲昇、哲昇」と声を掛けられるんだそう。この高い社交性というか、オープンで明るい性格にも大物感を感じます。

HSR九州で開催された2023年のMX全日本選手権第1戦。当時7歳だった哲昇選手は、スズキ・DR-Z50でチャイルドクラスに参戦して、記念すべき全日本での初優勝を遂げました。「嬉しかったし、自分は速いんだ!」と思ったそうです。

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2023年の全日本開幕戦で記念すべき初優勝を飾った哲昇選手。自分は「速い!」と思ったそうだ。

そして、全日本選手権のキッズ65クラスにステップアップした昨年の末、同郷でYogibo Pirelli マウンテンライダーズに昨年まで所属していた池田凌選手(今季はKawasaki PLAZA OSAKATSURUMI からIA2クラスに参戦中)と一緒にアメリカに武者修行に(2024年12月26日~2025年2月28日までの2カ月間!)。それも、アメリカホンダからスーパークロスに参戦中の下田丈選手が運営する「SocalMXTF」というモトクロスのトレーニング施設を訪ね、一緒に練習をし、コースの攻略法なども教えてもらったそうです。

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アメリカではカリフォルニアにある下田選手が運営する「SocalMXTF」というモトクロスのトレーニング施設でお世話になった。一緒に練習したり、下田選手にコースの攻略法を教えてもらったりと、貴重な時間を過ごした。
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憧れのスーパークロスの観戦にも出かけた。哲昇選手の後ろは、お兄さんの一斗選手。

将来の戦いの場として見据えているアメリカのコースを存分に楽しんできた哲昇選手。「アメリカのコースはジャンプが大きいんですが、走っていると慣れてきて恐怖心がなくなってきました」

この貴重な経験が生きたのか、今シーズンは開幕から絶好調。今年最初のレースとなった近畿MX選手権第1戦プラザ坂下大会では、ヒート1はスタートトラブルに見舞われましたが、追い上げて2位をゲット。続くヒート2は2位に20秒以上の差をつけるぶっちぎりの優勝を飾りました。

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ピレリ・SCORPION™ MX32™ MID SOFTを履いての初戦、近畿選手権第1戦では、ヒート1・2位、ヒート2・優勝と幸先のいいスタートを切った。

そして、5月17日に埼玉のオフロードヴィレッジで開催された全日本第3戦では、雨でドロドロになった難コースを苦にもせずスタートでトップに立ち、途中で一度抜かれたものの再び抜き返して、Yogibo Pirelli マウンテンライダーズに全日本選手権初の優勝をプレゼントしました。

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今年の全日本第3戦では、雨でぬかるんだコースをものともしないで見事に優勝。

今シーズンの活躍、そして将来が楽しみな哲昇選手ですが、お父さんの永さんに哲昇選手の今後の展望について教えてもらいました。

「哲昇は、バイクにどう乗るかを自分で考えていて、とても探求心が強いんです。動画や人の走りを見て、さらに人の話も聞いてそれを実践する、チャレンジ精神も強い。理想を言えば、ジュニアのうちは海外でレースに出たり、練習させたいです。チャンスがあれば、そのまま向こうでレースをして欲しいと思っています。それが難しければ、中学生くらいまではアメリカで練習をさせて、もしそれも難しかったら日本でレース活動をして、16歳までにはIA2クラスに参戦させたいと思っています」

お母さんのしのぶさんは「レースで勝ち続けるのも大事ですが、普段の生活もしっかりしてほしいです。注目されればされるほど、そういう部分が大事だと思っています。哲昇が結果を残してくれて、自分たち家族も一緒に成長していければいいと思います」と、レースに加えて、人としての成長にも気を配っていました。 Yogibo Pirelli マウンテンライダーズ監督の小橋さんにも話を聞きました。

「元気のいい負けん気の強いライダーで、転倒しても最後まであきらめずに、順位が悪くても次につなげるレースをします。哲昇は見ていてワクワクするレースをしてくれて、勝負になったときチャレンジを恐れないんです。20歳でスーパークロスのチャンピオンが目標と言っていますが、ぜひ達成してほしいと思っています」

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哲昇選手のことを「見ていてワクワクするレースをしてくれる」と語る小橋監督。プロライダーには不可欠な、観客を魅惑する素質をしっかり持っているようだ。

ちなみに、哲昇選手が目標とする選手はTeam Honda HRC のジェット・ローレンス選手。「フォームがかっこいいのと、スタートで出遅れても追い上げて行って成績を残すところがすごいです」。

哲昇選手も、ジェット・ローレンス選手のように勝負強く、レースにどん欲な選手に育って欲しいですね。みなさんも、ぜひ哲昇選手に注目してくださいね!

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2024年はAMAスーパークロス450SXクラスのタイトルを獲得し、スーパーモトクロス450SMXクラス ワールドチャンピオンも連覇を達成したジェット・ローレンス選手。哲昇選手は、ローレンス選手と同じように、スーパークロスの舞台で戦ってチャンピオンになることを目標としている。