タイヤの空気圧が適切じゃないと安全性能が低下するだけでなく、タイヤの寿命が短くなり、コスパもよくないんです!
「今さら空気圧?」と思う方が多いかもしれないけれど、タイヤはきちんと空気が入っていてこそはじめて性能を発揮するパーツ。だから空気圧チェックは日常点検の必須事項……と知ってはいるけど、ついつい忘れちゃう。空気圧のチェックを少し怠っても乗り心地も悪くならないし、本当は大して問題ないんじゃないの?
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バイクの日常的な点検で「タイヤの空気圧」が大切だって、よく耳にするんだけど……。
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うん、その通り! もちろん、いつもしっかりチェックしているよね?
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ま、まぁ……。たまにはやっているんだけど。あの~、空気がきちんと入っていないと、どんな問題があるんですか? 乗り心地が悪くなるとか……?
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そうだね、タイヤには適正な空気圧がバイクごとに決められているからね。まずはこれを守ることが大切だよ。
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空気圧って、タイヤメーカーが決めているんですか? それともバイクメーカーが決めているんですか?
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基本的にはバイクメーカーが決めていて、メーカーによってさまざまだね。バイクの重量や想定した乗り方に対するタイヤへの負荷などいろいろな条件を計算したうえで、これくらいの強度が必要だから、安全マージンも含めて「空気圧は○○kpa(kgf/㎠)」って具合にね。
これはバイクのスイングアームやチェーンケースに貼ってあるステッカーや、取扱説明書(ハンドブック)に記載されているよ。 -
それではバイクメーカーが定める空気圧と合っていないと、どんな問題があるんですか?
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タイヤの空気圧は高すぎても低すぎてもデメリットがあるよ。
まず高すぎる場合だけれど、指定空気圧より20%高いと、タイヤの寿命が90%になってしまうんだ。それに適切に潰れないから接地面積が減って、グリップが悪くなるよ。 -
へ~、寿命が1割も減るんだ。グリップが悪くなるのも怖いですね。燃費はどうですか?
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じつは接地面積が減ると転がり抵抗も減るから、わずかに燃費は良くなるんだ。
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それはおトクですね!
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いやいや、寿命が短くなるし、グリップが悪化したら乗って楽しくないしスリップして転倒するリスクも増えるから、全然おトクじゃないよ!!
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……確かにそうですね。
それでは空気圧が低すぎるとどうですか? -
指定空気圧より20%低いと、本来の寿命の85%しか持たない。そして空気圧が40%低くなると、寿命は60%になってしまうんだよ。そしてもちろん燃費も悪化する。
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え~、寿命が60%って、ずいぶん短くなっちゃうんですね! それはもったいない!!
でも、指定空気圧より40%低いって、そんなに低くなることってあるのかな? -
そうだね、パーセントだとちょっと分かりにくいから、実際の空気圧で考えてみようか。
大排気量バイクのラジアルタイヤの指定空気圧は、前輪が230kpa(2.30kgf/㎠)〜250kpa(2.50kgf/㎠)で、後輪が210kpa(2.10kgf/㎠)〜290kpa(2.90kgf/㎠)が一般的だね。250~400ccクラスだと200kpa(2.00kgf/㎠)で、後輪が225kpa(2.25kgf/㎠)前後が多いかな。 -
空気圧が高すぎたり低すぎたりする際の数値はこんな感じかな。
ボクはいろいろなバイクイベントで参加者の空気圧をチェックしているけれど、大型バイクで前輪が150kpaくらいしか入っていない人って、実はけっこう多いいんだ。 -
それだけ空気圧を気にしていない人が多いってことですね。その一方で空気圧が高すぎる場合って、間違えて入れすぎているのかな?
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いや、間違えているんじゃなくて「どうせ空気は抜けるから、多めに入れておこう」という心理なんだと思う。気持ちは分かるらなくはないけど、やめた方がいいね。
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空気圧ってそんなに下がるものですか?
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季節にもよるけれど、大体1カ月で4~5%くらいは抜けると思って欲しいね。だから3~4カ月チェックしないで放置していると、20%くらい低くなっていても不思議じゃない。
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けっこう下がるんですね。だとすると、空気圧のチェックはどれくらいのペースが正解ですか? やっぱり1カ月に1度くらいですかね?
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う~ん、何カ月に1度とかっていうのはボクとしては決められないな~。
だから、やっぱり理想は乗る前には毎回チェックを! -
それは大変だな……。
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でもライダーによってバイクに乗る頻度は異なるでしょ? 毎日通勤に使うなら、月に1度でも良いけれど、たとえば月に1回ツーリングで乗るだけの人なら、乗る前に毎回チェックは、1カ月に1回チェックするのと同じだからね。
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たしかに。でもエアゲージで空気圧を測って、足りなかったら空気ポンプで……って、結構面倒なんですよね……。
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最近は簡単に使える充電式の電動エアポンプも販売されているからオススメだよ。
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これは、かなり便利そうですね!
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他にもガソリンを入れる時に、ガソリンスタンドで空気を入れるのもいいと思うよ。大抵は自由に使える空気入れがあるからね。
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でもガソリンスタンドの空気入れってクルマ用(四輪車)ですよね。自分のバイクだと空気バルブの向きに合わなくて使いにくかったなぁ~。
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空気バルブに装着して使うL字型のエクステンションが便利だよ。一緒にペンシル型の空気圧ゲージも持っていると良いね。両方合わせても1000円くらいだし、シート下の小物入れに入れておいても邪魔じゃないしね。
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リーズナブルなのは嬉しいです!
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そうそう、空気バルブの劣化も空気が漏れる原因になるんだ。まず、空気バルブの中にはバルブコア(通称:ムシ)があるんだけど、この小さなパーツが劣化して空気が漏れやすくなることがある。
それにゴム製の空気バルブ自体が経年劣化でヒビ割れて、空気が抜けることもあるから、タイヤ交換時には空気バルブも一緒に交換するのがオススメだね。 -
そんなトコロからも空気が抜けるんですね。
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うん。それにどうせ空気バルブを交換するなら「横向きのエアバルブ」を選べば、ガソリンスタンドで空気を入れやすくなるし、空気圧のチェックもしやすくなるよ。
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こんな便利なアイテムがあるんですね。
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そんなに価格は高くないから、タイヤ交換時にショップに相談すると良いかもね。
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そういえば、空気圧チェック時の注意点ってあるんですか?
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空気は温度によって体積が変わるから、同じ気温の時に測るのが良いんだけれど……。そこまで厳密じゃなくても、走る前のタイヤが冷えた状態(冷間時)に測るのがセオリーだね。
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フムフム、ってあれっ? ガソリンスタンドで測るなら、家からスタンドまで走っちゃうから駄目じゃないですか!
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鋭い、そう来たか(笑)。でもね、一般道をトコトコ走ってタイヤが温まっても、空気圧はいいところ10%くらいしか高くならないんだ。ということは、走った先のガソリンスタンドで指定空気圧に合わせたら、タイヤが冷えたら(冷間時)10%くらい低くなる。たしかにレースのようなシビアなタイヤ管理だとダメだけれど、一般道を走る市販バイクなら、バイクメーカーも10%以下くらいの差は想定範囲内だから大丈夫だよ。
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安心しました!
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まぁ、家から近所のガソリンスタンドまで飛ばしていく人はいないだろうし。でも、例えば冬季に長い間乗っていなかったら、走らずに家で空気圧をチェックして補充して欲しいかな。
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確かにそういったケースだと、かなり空気圧が下っていそうですね。
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空気圧が低すぎるとタイヤの寿命が縮まるって話したけれど、極端に低いとタイヤが壊れやすくもなるんだ。
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壊れる??
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空気圧が低すぎると、想定していない部分に負荷がかかって、専門的に言うと「物性疲労」が起こる。意図しない場所、たとえばサイドウォールがたわんでヒビ割れを起こすとかね。
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へぇ~。それは怖いですね。
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たとえば靴のカカトを踏んで履いていると、シワが寄ってスグにダメになるでしょ? それに近い感じかな。
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あっ、分かりやすいです。
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空気をきちんと入れておくだけで、タイヤは寿命や性能を維持できる。ここで言う「性能」はフルバンクとか限界グリップみたいな性能ではなくて、安全性とか乗り心地とか燃費などの「基本性能」の話だから、どんなバイクにも共通して言えることなんだ。
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現実的なところで、タイヤって結構価格が高いですよね、とくにラジアルタイヤは。だったら寿命が短くならないように、マメに空気圧チェックしないともったいないですよね。 よし、今すぐ測ろう!
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その様子だとしばらく測ってなかってみたいだね…。





