皆さんこんにちは、DIABLOMAN インプレッション vol.2 です。
前回のフランクな表現も好評だったんだけど、今回は大人スポーツな車両なので、少し改まり、所々にですます調も混ぜてみたり..してみました。そう、今回のインプレッションはちょっとテンション上がるスーパーマシン、最新の 2023モデルとなる「BMW M1000RR M Competition Package」。
同車では後発なインプレッションになりますが、実は企画自体は広報車両が登録される前の春頃からありつつも、はやる気持ちを押さえて待っていたんだ、あ..待っていたんです。何をかって? そりゃあ解放される時を! です、慣らしが終わりフルパワーを解放される時を! ね。機が熟したのでスケジュールを調整し、先日念願のインプレッションと相成りました。
基本的には車両のインプレッションがメインとなりますが、せっかくピレリ公式ライダーの DIABLOMAN がインプレッションするんだ、あ..するので、今回は少し贅沢な内容でのインプレッションをお届けします。その内容は、皆さんも気になる内容なんじゃないかな?
M1000RR に標準で装着されているタイヤは M 社の POWER CUP2(以後 CUP2)なのですが、もちろん標準タイヤでのインプレッションも行いましたが、タイトルにもなっているように、こちらも今年リリースされた PIRELLI DIABLO™ SUPER CORSA V4SC1 に履き替えてのインプレッションもしてみました。いや、、むしろこっちがメインかもしれません(笑)。
V4SC1 に履き替えた際のサイズは標準と同じ 200/55 です。DIABLOMAN 的には、200/60でのインプレッションや、さらにはタイヤだけスリックタイヤに履き替えての走行にも耐えられる車体のようなので、DIABLO SUPERBIKE での走行で M1000RR のポテンシャルをフルに味わってみたいものです。また、車両に対するタイヤの比較インプレッションであれば、CUP2 に対しては V4SP がフェアじゃないかな、と思うところですが、今回はあくまでも車両インプレッションがメインで、そのうえで V4SC1 に履き替えてスポーツ走行をしてみたらどうなの? といった視点でのインプレッションであると理解してください。
インプレッションの前に少し脱線してプチ情報です。今回のインプレッションにあたり、M社の方にヒアリングしてみたところ、M1000RR に標準装着されている CUP2 は、市販のCUP2 と同じ製品とのことです。ん? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうなんですよ..メーカーや車種によっては、同じタイヤメーカーの同じモデル名のタイヤでも、車両メーカーからのリクエストにより車両に合わせたチューニングが行われていて、中身の仕様が違っていたりすることもあるんです。なので、タイヤ交換の際にショップで同じタイヤに交換しても、ん..なんだかフィーリングが違うような? と感じる鋭いライダーの方もいらっしゃるかもしれません。そんな時はこんな理由かもしれませんね。
BMW M1000RRレースホモロゲーション車両その実力とは!!
さて、そろそろ本題のインプレッションに入らせていただきます。
まず、インプレッションの時期は 11 月上旬に通しで 3 日間、天候は通して快晴で気温は 25度前後と絶好の走行日和のコンディションでした。走行モードも通して標準の RACE モードで、RACE Pro での細かな設定変更はしていません。
初日は茨城県の筑波サーキット TC2000、タイヤは広報車として既に若干使い込まれた CUP2、内圧は CUP2 のサーキットでの推奨値に合わせました。当日の走行は、午前中 10時~12 時の間に 20 分×3 本の走行、しかし、サーキットイベント内での DIABLOMAN COACHING で生徒さんのペース(6~7 秒)に合わせての走行でした。その為フリーでペースを上げての単独走行による純粋なインプレッションではない為、まずは車両の素のフィーリング確認に留めています。生徒さんの外れた一瞬のタイミングでは 2 秒台も記録していましたが、まだまだ「はじめまして」な手探り状態です。
走り始めてのファーストインパクトは、フロントのステアリングヘッド周りハンドリング の軽快なフィーリングです。若干頼りないかな? と感じてしまう程の軽快さに、コースイン して 1 周目の第 1 ヘアピンでは、思わず「軽っ!」とつぶやいてしまいました。また、SS にしては気持ちフロントタイヤが遠いかな、という印象もありました。そして次に感じたのが空力を狙っているのかなと感じるアッパーカウルの存在感。前方で左右に大きく張り出したウイングレットと共に、構造物としての存在感を感じました。
近年のSS はアッパーカ ウルが小型化の傾向でライダーが走行風にさらされる車両も少なくないなかで、軽快なハンドリングに相反するボリューム感に若干の違和感のような印象も受けてしまいましたが、きっちりと潜り込めば走行風からしっかりとライダーを守ってくれます。しかし、このハンドリングの軽快感やカウルのボリューム感はミドルペースにとどまったが故の印象で、後に回収されるフラグ的な印象だったようです。
走行中の全体的な印象は、一言でいえば「しなやか」です。以前のSS と言えば高剛性でシャープな印象があり、実際に2019年にフルモデルチェンジされる前の4代目の S1000RR/0D50 型までは、デザインも含めてそのようなシャープな路線だった印象です。フルモデルチェンジされた現行のベースとなる S1000RR/0E21 型で、かなりの路線変更が行われ、その際に、このしなやかな路線になったのですが、フルモデルチェンジ直後のモデルは、しなやかといえばしなやか、とも言えますが、ファジーと言えばファジー、ユーザーフレンドリーと言えばフレンドリー、絶対値のパフォーマンスとしては上がっているのですが、SS らしいシャープでやる気になる、レーシーで硬質なフィーリングが好きだった先代ファンからは、正常進化ではなくまったく別のバイクになったんだな、という印象でした。
確かに近年の SS は、その数値的なパフォーマンスとは相反する扱いやすさがあり、基本設計も進化していますが、主に電子制御の管理下に置かれています。そう、すべてを解放してしまえばとんでもないパフォーマンスなのですが、それらを市販車として一般人が公道で扱うことも視野に入れて開発されています。0D50 型までは、速度域が低い状況でも、そのパフォーマンスの片鱗を雰囲気で感じることが出来る、いかにも SS な車両でした。その後の 0E21型では、それらが巧みにオブラートに包まれ、非常に扱いやすい車両となりました。しかし、個人的にはその路線だと気付かぬうちに自分の限界を超えた領域に入ってしまうので、もっと分かりやすい方が良いんじゃないかな..と感じていました。
その後マイナーチェンジや熟成が重ねられ、現行モデルでは分かりやすいスポーティなフィーリングを取り戻してきた印象ですが、基本的にはしなやかで扱いやすい仕上がりとなっており、スポーティさは増していますが M1000RR もその延⾧線上にあります。エンジンももちろん相当速いレベルなのですが、非常にフラットな出力特性で扱いやすく、中間域での盛り上がるような高揚感は感じられませんが、トップエンドの爽快感はサウンドも含めて秀逸です。 他は正直可もなく不可もなく、、と言ってしまっては意地悪で凡庸に聞こえるかもしれませんが、それはかなり高いレベルで纏め上げられているが故の印象です。言い方を変えれば特に指摘したくなるような所や気になる不満がない、というかあまりにもクセがなく乗りやすくて速いのですが、若干手応えも薄い印象でした。普通のインプレッションであればこれで終わってしまうので、いや、もちろんそのような状況であれば、フリーでもっときちんと攻め込んでいましたが、振り返ればこの日のペースでは真の M としてのポテンシャルを引き出して感じられていなかったようです。
2日目は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイのスポーツ走行枠を午前中に 30 分 1 枠。実はこの走行は当初の予定にはなく、翌日にタイヤを V4SC1 に履き替えた状態で同サーキットを走行の予定だったので、この日はタイヤ交換のスケジュールでした。しかし、前日にどうも手応えが薄く、帰り道に、「いや..こんなもんではないはずだ!」との思いで、翌日の走行に備えて同じサーキットで CUP2 装着状態でのポテンシャルをもう少し引き出したインプレッションをしておきたくて急遽組み入れた走行です。自分でも、いや真面目か! と思いましたね。当日のスポーツ走行枠は絶好の走行日和であったために、平日にもかかわらず枠の走行台数の定員に達しており、かなり混雑した状況だったため、常に他の車両と絡んでしまいタイムを意識した走行は叶いませんでしたが、TC2000 に比べてコーナーでのアベレージスピードの高い袖ヶ浦のレイアウトによって、ムム! ちょっと分かった気がする、と手応えのある走行になりました。タイム的には、使用済みから前日さらに使い込んだ CUP2 でかなり混雑していたコース状況と翌日の本番を控えてミスできない中で、決して特別速いタイムではないですが、定期的に 12 秒台を記録していたのでとりあえず開くべき扉のドアノブを見つけることは出来たかな、という感覚でした。
前日の TC2000 では、最終コーナー以外は廻りこんだタイトなコーナーが多く、コーナーでのアベレージスピードも低い為に、 M1000RR の本領が発揮されやすいシチュエーションではなく、当日のペースもポテンシャルを感じられるペースではなかったんだなと、改めてしっかりペースを上げてのインプレッションの重要性を感じました。それだけ M1000RR は設定されているスピードレンジが高いということです。しかし、得てして昔のそのような車両の場合は、スピードレンジの低い所での扱いづらさがあったものですが、そのような領域においても何てこともなく普通に走ってしまう辺りは電子制御の恩恵かと思います。1 日目に感じたハンドリングの軽快感も、人によっては軽快感ですし、人によってはフラフラする不安定感になりますが、少しペースを上げてあげれば、フロントタイヤにしっかりとした手応えを感じられ、落ち着いたハンドリングを体感出来たので、翌日の走行に期待を膨らませることが出来ました。