写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第11戦インドネシアラウンド
11月11日~13日/インドネシア プルタミナ・マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキット

WSBK第11戦の舞台は、インドネシアのプルタミナ・マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキット。WSBKではアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)、WSSではドミニケ・エガーター(テンケイト・レーシング・ヤマハ)のタイトル獲得がかかる一戦となりました。

全面再舗装の路面に向け、リヤに新タイヤを用意

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開催地のプルタミナ・マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットは新設のサーキットで、2021年は最終戦として開催されました。同地では3月下旬にMotoGPが開催され、その後全面にわたる再舗装が行われています。海沿いに位置し、1日の激しい気温差に対処するため、工事を担当したイタリアのドロモ社は革新的な混合アスファルトを開発。縁石とエスケープルートも改修されました。インドネシアラウンドの数日前に再舗装と改修が完了したために新しいアスファルトの特性が不明であることから、ピレリは通常よりも幅広いレンジのタイヤを持ち込むことにしました。

フロントタイヤはスタンダードソフトのSC1とSC1(A0843)を用意。SC1(A0843)はアッセンでデビューし、チェコやカタルーニャでも投入され、もっとも使用されたフロントタイヤです。SC1(A0674)と同じ構造を使用しながら、異なるトレッドコンパウンドを持ち、機械抵抗と耐摩耗性が向上しています。

リヤタイヤはスーパーソフトのSCX、ソフトのSC0。そして、ミディアムのSC1(A1126)です。SC1(A1126)は新しい開発タイヤで、フロントタイヤのSC1(A0843)と同様に、スタンダードソリューションよりも新しいアスファルトと高い気温に対応する耐久性のある構造となっています。

スーパースポーツ世界選手権(WSS)は、すべてスタンダードソリューション。フロントタイヤはソフトのSC1とミディアムのSC2、リヤタイヤはスーパーソフトのSCXとソフトのSC0、ミディアムのSC1が用意されました。

WSBKスーパーポール:レコードを更新して、ラズガットリオグルがポールポジションを獲得

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土曜日のスーパーポール(予選)では、トプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BrixxワールドSBK)がオールタイムラップ・レコードを更新する1分31秒371を記録して、ポールポジションを獲得。2番手はジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)、3番手はアンドレア・ロカテッリ(パタ・ヤマハwith BrixxワールドSBK)。バウティスタは5番手を獲得しました。トップ5のライダーは、フロントにSC1、リヤにSCXを選択。レイだけがフロントにSC1(A0843)をチョイスしています。

WSBKレース1:ラズガットリオグル優勝。レイはタイトル争いから脱落

レース1はWSBK 900回目のレース。気温36度、路面温度58度のドライコンディションで行われました。タイヤ選択としては、ほとんどすべてのライダーがフロントにSC1(A0843)、リヤにSC0を選んでいます。

レースはポールポジションスタートのラズガットリオグルがトップに立ち、後方を引き離して独走態勢を築く展開となりました。2番手にはレイが続いていましたが、9周目にバウティスタにパスされて3番手に後退。バウティスタが2番手に浮上します。

ラズガットリオグルは一時、バウティスタに差を詰められたものの、再び差を広げて優勝を飾りました。2位はバウティスタ、3位はレイでした。WSBKに参戦する唯一の日本人ライダー、野左根航汰(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は、15位フィニッシュ。 レース1の結果、ランキング3番手のレイは、タイトル獲得の可能性を失いました。

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このレースでタイトル争いはバウティスタとラズガットリオグルの2人にしぼられた

WSBKスーパーポール・レース:ラズガットリオグル、2連勝。バウティスタは表彰台を逃す

日曜日のスーパーポール・レースは気温34度、路面温度53度のドライコンディション。タイヤ選択はレース1の再現となり、ほぼすべてのライダーがフロントにSC1(A0843)、リヤにSC0をチョイスしています。

このレースでもラズガットリオグルがトップに立ち、2番手にレイ、3番手にロカテッリが続き、バウティスタは6番手に後退して1周目を終えます。

トップのラズガットリオグルと2番手のレイは接戦を展開。3周目、レイはラズガットリオグルをとらえてトップに立ちました。しかし6周目、ラズガットリオグルはレイをかわして再びトップに浮上。トップがラズガットリオグル、2番手がレイ、3番手がロカテッリ、4番手にバウティスタが続きました。

その後、ラズガットリオグルはレイとの差を広げ、トップでチェッカーを受けました。2位はレイ、3位はロカテッリ。バウティスタは表彰台を逃し、4位でゴールとなりました。野左根は20位でフィニッシュしています。

WSBKレース2:ラズガットリオグルと接戦を展開したバウティスタ、2位でゴールしチャンピオン獲得

レース2は気温36度、路面温度61度のドライコンディション。このレースでもフロントにSC1(A0843)、リヤにSC0がほぼ満場一致のタイヤ選択となりました。

バウティスタは表彰台を獲得すれば、ランキング2番手であるラズガットリオグルの順位にかかわらずチャンピオンが決まる状況です。1周目、トップに立ったのはレイでしたが、2番手につけていたラズガットリオグルが6周目にレイをパス。レイはその後、バウティスタ、アクセル・バッサーニ(モトコルサ・レーシング)にもかわされ、4番手に後退します。

レース中盤、トップを走るラズガットリオグルと2番手のバウティスタは、激しいトップ争いを繰り広げます。2人は何度も先頭を奪い合い、残り6周でラズガットリオグルが再びレースリーダーとなりました。

ラズガットリオグルはバウティスタに対してアドバンテージを広げていき、トップでチェッカーを受けました。バウティスタは2位でゴール。この結果により、バウティスタが2022年のWSBKチャンピオンに輝き、2011年のカルロス・チェカ以来となる、ドゥカティライダーのタイトル獲得となりました。

レースでは、レイが3位表彰台を獲得。野左根は転倒リタイアでレースを終えています。

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第11戦までに表彰台を逃したのは4レースのみ。安定した強さでバウティスタはチャンピオンを獲得した

WSS:エガーター、2年連続のチャンピオン獲得

土曜日のスーパーポールでは、ニキ・トゥーリ(MVアグスタ・レパルト・コルセ)がオールタイムラップ・レコードを更新する1分35秒947を記録して、5年ぶりとなるポールポジションを獲得しました。

レース1は気温34度、路面温度54度のドライコンディションで行われました。フロントタイヤはSC1、リヤタイヤはSC0が多くのライダーに選ばれています。1列目から2列目のライダーは、フロントタイヤの選択は分かれましたが、リヤタイヤについては6人がSC0をチョイスしました。

レースはポールポジションからスタートしたトゥーリがトップを快走。タイトル獲得がかかるエガーターは1周目、5番手を走行し、ランキング2番手のロレンソ・バルダッサーリ(エヴァンブロス.ワールドSSPヤマハチーム)はさらに後方の7番手付近につけていました。しかし3周目、バルダッサーリは1コーナーで転倒。レースに戻ることができず、痛恨のリタイアとなります。エガーターは、完走すればチャンピオン獲得が決定する状況となりました。

優勝したのはトゥーリ。今季初優勝を飾りました。2位はフェデリコ・カリカスロ(アルテア・レーシング)、3位はジャン・オンジュ(カワサキ・プチェッティ・レーシング)が獲得しています。エガーターは4位でフィニッシュし、2年連続でWSSのチャンピオンに輝きました。

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エガーターは電動バイクのチャンピオンシップ・MotoEでもチャンピオンを獲得しており、今季、ふたつのタイトルを手にした

レース2は気温36度、路面温度59度のドライコンディション。このレースでは多くのライダーがフロントタイヤにSC2、リヤにSC0の組合せを選んでいます。

1周目、オンジュがトップを奪い、レースをリードします。レース1でチャンピオンを獲得したエガーターは、その後方で5番手争いを展開していましたが、5周目になるとトップのオンジュから6番手のエガーターまでがほぼひとつの集団を形成。その中でエガーターは着々とポジションを上げ、8周目にトップに立ちました。

しかし、13周目、1コーナーで転倒が発生したことで、その翌周に赤旗が提示。レースリーダーが全周回数の3分の2を終えていたことから、レースは終了となりました。結果としては、エガーターが優勝、2位はステファノ・マンジ(ダイナボルト・トライアンフ)、3位はオンジュが獲得。チャンピオンのエガーターが今季16勝目を挙げました。

第12戦オーストラリアラウンドは11月18日から20日にかけて、オーストラリアのフィリップアイランド・サーキットで行われます。これが、2022年シーズンの最終戦となります。

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