文/写真:田宮徹
ミドルクラス以上のスポーティなバイクをメインターゲットに、公道でのファンライド性能を追求したタイヤとして人気のディアブロ・ロッソシリーズが、2021年夏に第4世代のディアブロ・ロッソ™Ⅳ(クワトロ)に刷新。このタイヤを、スズキ・GSX-R1000R(2019年型)に装着して、ストリートやサーキットでライディングしてみました。
前回は、真冬のショートツーリングでの使用感と、春先の今シーズン初サーキット走行でどう感じたかをレポートしました。その後も、チョロチョロと数10km単位では乗っていたのですが、4月に膝の靱帯をスキーでケガして、その後はしばらくバイクに乗れず……。とはいえ、ケガから約1カ月が経ってようやくだいぶ状態も改善されてきたので、久しぶりにツーリングへ行ってきました。
ほぼ1ヵ月ぶりに対面した、GSX-R1000Rに履かせたディアブロ・ロッソ™Ⅳは、約9カ月前に装着してから公道で1200kmほど、クローズドコースは筑波サーキット・コース1000で1時間、夏のツインリンクもてぎ・フルコースで40分、袖ヶ浦フォレストレースウェイで45分を走った計算。リヤタイヤサイズは190/55ZR17なので、3つのコンパウンドを使い分けた5ゾーンレイアウトとなっており、春先にサーキットで酷使したサイドコンパウンドのエッジ部はそれなりに溶けていますが、全体的に溝は多く残っていて、「まだまだこれから!」という様子です。
リハビリツーリングの天候は晴れ時々曇りで、日中の気温は25℃程度。久しぶりのライディングなのでちょっと軽めに、高速道路をバビュンと移動してワインディングを楽しむことを目的としたショートバージョンです。まあ、GSX-R1000Rでのツーリングはいつもそんな感じではありますが……。タイヤ空気圧は、車両メーカー指定値となるフロント2.5kgf/㎠、リヤ2.9kgf/㎠。相変わらず、走りはじめから軽快で、市街地の交差点やカーブを自然なフィーリングで走れます。
すぐに高速道路へと入り、横浜町田ICから東名高速を西へ。前回のまともなツーリングは真冬でしたが、そのときと同じく高速道路ではややタイヤにカタさを感じます。といっても、ゴツゴツして乗りづらいというわけではなく、ギャップや路面の継ぎ目を通過した際に、その衝撃を密度が濃い物体で受け止めているというイメージ。細かい外乱に対して過度に反応しすぎている感覚はないので、極端に乗り心地が悪いわけではありません。これはこのロッソ™Ⅳを履きはじめてからずっと思っていたことですが、オーバーリッタークラスのスポーツツアラーやネイキッドスポーツなど、より重量級でサスペンションがソフトな車両なら、それほど気になるカタさではないのではないかと想像しています。
ちなみに、その後にピレリジャパンのスタッフとお話しさせていただき納得したのですが、とくにロッソ™Ⅳのような公道メインで使うタイヤは、低圧走行のリスクを考慮してやや頑丈な傾向にあるとのこと。ロクに空気圧チェックもせず走り続ける一般ユーザーも多いので、そのときに危険な状態になりづらいように設計しているというわけです。
この返答を聞いて、ひとつ納得できたのは、以前のサーキット走行時に空気圧を冷間でフロント2.3、リヤ2.4に相当する程度まで落としたのに、劇的な変化を感じられなかったことに関して。フロント2.0、リヤ2.1でも走りましたが、やはり変化の度合いは他のピレリ製スポーツタイヤと比べて圧倒的に少なく感じられました。これも、低圧走行を考慮した設計が影響しているのかもしれません。まあもちろん、だからといって公道でも低圧で走っていいというわけではないので、エアチェックは頻繁に行いましょう!
さて、この日のツーリングでは、富士山の5合目まで駆け上がることができるふじあざみラインがメインディッシュ。全長約11kmと短めですが、交通量が比較的少なく走りやすいワインディングルートです。序盤の3kmはほぼストレートで、ツイスティな区間は約8km。くねくね道がスタートしてから、最初の5分の2は道幅が広めで路面状態が良好ですが、標高が上がるとタイトカーブが増し、やや荒れた路面が混在します。
交通量が少なめとはいえあくまでも一般公道で、なおかつリハビリツーリングなので、ゆったりとしたペースで走行。そこであらためて気づいたのは、積極的に荷重をかけてタイヤを潰すように走らなくても、スパッと旋回力を生むフロントタイヤの秀逸さです。
膝の状態を確認しつつ、いつもよりスローペースかつゆったりとコーナリングしていても、寝かし込みには適度なキレがあり、このクイックな感じがスポーティな乗り味を提供してくれます。一方でリヤタイヤは、フロントと比べたらニュートラルなフィーリング。深めにバンクさせた状態では、これが安心感につながります。ロッソ™Ⅳを履いてからこれまで、サーキットを走る機会も多かったのですが、ゆったりとワインディングを走ってみたら、やっぱりロッソ™Ⅳの長所がより引き出せるのは公道かも……と思いました。何より、トバさなくてもコーナリングの楽しさが伝わってくるのがスゴい!
もちろんドライグリップでは、最新作として2022年夏に導入されるディアブロ・ロッソ™Ⅳコルサや、サーキット用に近いディアブロ™ スーパーコルサSP V3のほうが上ですが、だからといってワインディングで(走行会レベルならサーキットでも)、グリップ不足を感じることなんてまずありません。きれいな路面とやや荒れた区間で極端にフィーリングが変わることもないし、今回は遭遇しなかったもののウエット性能にも優れるので、刻々と路面状況が変化するようなロングツーリングでも安心して履くことができます。
しかもこのタイヤ、オンロードスポーツ系としてはかなりロングライフ。ここまで約2000km使ってきましたが、センターからミドルの摩耗で判断するなら、せいぜい4分の1程度の消耗。ここから仮定してライフが8000kmだとすると、公道走行と年1~2回のサーキット走行で年間4000km走ったとして2シーズン分という計算です。スポーティに走るなら、あまり古いタイヤを何年も履き続きたくないので、ちょうどいい摩耗ライフかも。もっとも私の場合、複数台所有のためGSX-R1000Rにそこまで乗ることはないので、これだけ減らないタイヤだと、摩耗より先に年数経過を理由にタイヤ交換することになりそうですが……。
今回あらためてワインディングと高速道路でロッソ™Ⅳに乗ってみて、トバさなくても得られるフロントタイヤのキレ味やリヤタイヤの安定感が、普段のツーリングにスポーティな雰囲気をプラスしてくれるという、ロッソ™Ⅳの魅力を再認識。それでいてウェット性能も高めでライフが長いとなれば、ロッソ™Ⅳを履くだけでこれまでよりもさらにアクティブなバイクライフとなるに違いありません。私はGSX-R1000Rに装着しましたが、ロングツーリングとの相性も良さそうですし、他の車種に履かせた状態でも乗ってみたくなりました。
<田宮徹さんプロフィール>
二輪関連の雑誌やWEBなどで約25年間も執筆を続けているフリーランスライター。バイクはジャンルを問わずなんでも楽しみ、サーキット走行やモトクロスコースでのファンライドも趣味のひとつ。クルマ+バイクの年間運転距離が5万km超の移動ジャンキーです。