文/写真:田宮徹

ミドルクラス以上のスポーティなバイクをメインターゲットに、公道でのファンライド性能を追求したタイヤとして人気のディアブロ・ロッソ™シリーズが、2021年夏に第4世代のディアブロ・ロッソ™Ⅳ(クワトロ)に刷新。このタイヤを、スズキ・GSX-R1000R(2019年型)に装着して、ストリートやサーキットでライディングしてみました。

前回は、夏のワインディングとサーキットでのファーストインプレッションをお伝えしましたが、その後はあまりこのバイクに乗れないうちに(複数台所有です)、季節は冬に……。スーパースポーツに乗ろうという気が起きにくくなるシーズンですが、「とはいえ天気はいいし、たまにはワインディングへ!」ということで、真冬のショートツーリングにディアブロ・ロッソ™Ⅳを履かせたGSX-R1000Rを駆り出してみました。この日は、晴天ながら最高気温は平地で10℃程度。日中の条件がいい時間帯でも、山頂付近の気温は5℃の表示で、「正しく冬!」という環境でした。

電子制御システムが充実しているマシンとはいえ、こういう条件でスーパースポーツを走らせるのは少し気を遣います。タイヤ空気圧は、車両メーカー指定値となるフロント2.5kgf/㎠、リヤ2.9kgf/㎠。10段階+オフに調整できるトラクションコントロールシステムは、念のために介入がやや多めの「6」にセットしました。

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ディアブロ・ロッソ™Ⅳは、フロントタイヤがロッソ™Ⅲのシングルコンパウンドからデュアルコンパウンドに進化。またリヤタイヤは、ロッソⅢはすべてデュアルコンパウンドでしたが、ロッソ™Ⅳは高出力の大排気量車に使われることが多い190/55ZR17以上のサイズに5分割3コンパウンドが導入されています。これにより、低温時のウォームアップ性を高めているのが特徴のひとつ……ではあるのですが、当然ながら前述の気象条件ですから、慎重に走りはじめます。

市街地で交差点やコーナーをいくつか曲がった段階では、秋に感じたフィーリングと大きく違わず、低温だからといって扱いづらさはありません。以前、夏はいいのに冬になるとフロントが切れ込む……というタイヤを経験したことがあるので、夏でも冬でも同じ感覚で乗れる点にひと安心。そのまま高速道路を使いながらワインディングへ向かいました。

市街地や高速道路では、ピレリのスポーツタイヤにしては少しカタいかな……というフィーリング。これは、夏に初めてこのタイヤを履いたときにも感じましたが、だからといってゴツゴツして乗りづらいほどではありません。路面の小さなギャップに対してコツコツと手応えはあるものの、大きな衝撃は吸収しているイメージで、タイヤの表面がカタめというイメージ。冬の低温であることで、それがやや強調されているようにも思われますが、これは路面状況に対するタイヤからのインフォメーションが多いということでもあるので、意外と安心感につながります。高速道路では、とくにロードノイズが大きいというようなこともなく、レーンチェンジやコーナリングはニュートラル。変に粘り過ぎるようなこともなく、軽快に移動できました。

そしてそのまま、郊外に抜けてワインディングへ。このバイクとタイヤでワインディングを走るのは約半年ぶりですが、最初からスムーズにコーナーをクリアしていけます。タイヤ空気圧が車両メーカー指定値で高く、さらに冬ということもあり、絶大なグリップ力を感じるというわけではありませんが、タイヤがどれくらい路面を掴んでいるかという接地感は十分にあるので、安心してバンクさせられます。

ここでも、ハンドリングはニュートラルで軽快感があり、狙ったラインをきれいにトレースできますし、対向車などに対応するために車線内でラインを変えるのも簡単です。当然ながら、ワインディングでの速度域なら、真冬でも滑るなんてことは皆無。それなりにスロットルを開けてもトラクションコントロールが介入することもなく、悪条件でもしっかりタイヤのグリップが発揮されていることが分かりました。

久しぶりのワインディング走行ということで、「タイヤが冷えるのはイヤだなあ」と思いつつも、山頂ではいつもよりちょっと長めに休憩。周囲の気温は5℃ですから、再び走行を開始してからしばらくはかなり気を遣うもの……ですが、ディアブロ・ロッソ™Ⅳはタイヤの状態がライダーに伝わりやすいので、そういう意味でも安心。ワインディングレベルのバンク角や荷重に対してはタイヤの温まりもかなり早いように感じますが、そもそも冷えているときには無理しないよう自制させてくれるイメージです。とくにリヤタイヤのセンター部分にしっかり感があるため、冷えている状態からいきなりトバすなんて気持ちになりづらく、それでいてそっと寝かせれば初期段階から十分なグリップ。過信は禁物とはいえ、よりスポーツ性を重視したタイヤと比べて安心感は絶大です。

ちなみにこの日は、2日前の降雪により路肩に雪が残るコンディション。そのためワインディングの途中で、雪解け水によるウエット路面が突如出現するシーンがいくつかありました。でもディアブロ・ロッソ™Ⅳは、こんな路面もたいして何事もなかったかのようにクリア。ロッソ™Ⅲと比べてトータルでの溝比率は低減されていますが、トレッドデザインが実際の走行環境を考慮した最適なものであることに加えて、シリカリッチなコンパウンドによりラバーそのものがウエットでも路面をしっかりグリップしてくれることが大きいのでしょう。今回は本格的なウエット走行はできませんでしたが、ワインディングのコーナーで遭遇したウエットのコーナーをいくつか越えた印象としては、雨でもかなり安心できるタイヤと言えます。

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さて、この日のツーリングは300km程度でしたが、その後にもう一度同じくらいのワインディングツーリングを経て、3月末には再びサーキットでディアブロ・ロッソ™Ⅳを味わってきました。

コースは千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイ。この日は、朝から雨が降ったり止んだりで、なおかつ風も強いあいにくのコンディションでした。路面は完全なウエットにはならないものの、走行中に少し湿り、すぐに風で乾き、でも1コーナーのイン側や立ち上がりはずっとウエットパッチ……と、かなり難しい路面でしたが、とはいえ昼前後は雨が止んだ状態が続いて条件がよく、仕事の合間に15分×3本を走らせてもらいました。

タイヤ空気圧は、本当なら再びいろいろ試したかったのですが、時間がなかったことと路面状況がそんな感じだったことから、すべてフロント2.2kgf/㎠、リヤ2.3kgf/㎠にセット。路面が濡れはじめの一番滑りやすい状況を避けられたので、それなりに楽しめました。

そこであらためて感じたのは、ディアブロ・ロッソ™Ⅳならそのまま本格的なウエットになってしまっても、きっと走っちゃうだろうなあ……ということ。さすがに、濡れはじめの状況だとどんなタイヤでも等しく滑るでしょうが、フルウエットになったときには、ディアブロ・ロッソ™Ⅳの優れたウエット性能ならそれなりに楽しめそうです。そしてもうひとつ、走り終わって気づいたことがあります。このタイヤ、あまり減りません!

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ここまで、筑波サーキット・コース1000で1時間、夏のツインリンクもてぎ・フルコースで40分、袖ヶ浦フォレストレースウェイで45分、公道では800kmほどを走った計算なのですが、負荷がかかるサーキットを2時間以上走ったとは思えないほど、溝が残っているし表面も荒れていません。

リヤタイヤのセンターとサイドに挟まれたミドルコンパウンドは、柔らかなフルシリカコンパウンドで、よく見るとこのエリアにはトラクションがかかったことによる細かいシワが全体的に刻まれていますが、例えば溝のエッジがひどく潰れているとか、コンパウンドの切替えによる偏摩耗が顕著なんてことはなく、見た目から受ける印象としては「まだまだこれから!」といった感じです。サーキット走行会に年に2~3回参加して、あとはツーリングというユーザーなら、ワンシーズン以上は確実に持ちそうな雰囲気です。

<田宮徹さんプロフィール>
二輪関連の雑誌やWEBなどで約25年間も執筆を続けているフリーランスライター。バイクはジャンルを問わずなんでも楽しみ、サーキット走行やモトクロスコースでのファンライドも趣味のひとつ。クルマ+バイクの年間運転距離が5万km超の移動ジャンキーです。