写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第6戦チェコラウンド 7月29日~31日/チェコ オートドローム・モスト

スーパーバイク世界選手権(WSBK)第6戦チェコラウンドが、チェコのオートドローム・モストで行われました。WSBKの2022年シーズンは全12戦が予定されており、このチェコラウンドがシーズン前半戦の締めくくり。ここから約ひと月のサマーブレイクを挟んで後半戦に入ります。

オートドローム・モストは1978年から1983年にかけて建設されました。WSBKは2021年が初開催で、2022年が2度目の開催となります。冬にかけていくつかの工事が行われ、メインストレートや第1シケインを含む一部のアスファルトが新しくなりました。また、雨天時の安全性を向上させるための多くの改良が実施されたほか、サーキットのコントロールタワーは再建、拡大されました。

ピレリはこのオートドローム・モストでも今年の開発プログラムを実施。タイヤにとって最も過酷なレイアウトであり、同時に部分的に再舗装された路面が未知の要素をはらんでいることから、昨年のレースで収集したデータを元に、これまでとは異なるタイヤアロケーションを決定しました。

まずフロントタイヤについては、スタンダードソフトのSC1、開発タイヤのSC1 A0674、同じく開発タイヤで、ここまでアッセン(オランダラウンド)でのみ使用されたSC1 A0843が投入されました。

リヤタイヤについては、スタンダードソフトのSC0、そして開発タイヤのSC0 B0624が登場。SC0 B0624は新たな開発ソリューションであり、SC0とは異なるコンパウンドと構造を持っています。また、SCQに代わり、スーパーポールとスーパーポール・レース用としてスーパーソフトのSCXが用意されました。

WSSはすべてスタンダードレンジで、フロントタイヤがソフトのSC1、ミディアムのSC2、リヤタイヤについてはソフトのSC0とミディアムのSC1が投入されています。

WSBK:ラズガットリオグルが2勝を挙げ、チャンピオンシップは混とん

土曜日に行われたスーパーポール(予選)では、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がオールタイムラップ・レコードを更新する1分30秒947を記録してポールポジションを獲得しました。レイはフロントにSC1(A0843)、リヤにSCXを選択し、2番手のトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BrixxワールドSBK)、3番手のマイケル・ルーベン・リナルディ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)はともにフロントにスタンダードのSC1、リヤにSCXをチョイスしました。また、アルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)は4番手となりました。

レース1は気温19度、路面温度25度のドライコンディションで始まりました。このレースでは多くのライダーがフロントタイヤにSC1(A0843)、そしてリヤタイヤについては全25人のライダーのうち、22人が新開発ソリューションのSC0(B0624)を選択しました。

序盤はトップに立ったラズガットリオグルをレイが僅差で追う展開。この二人にバウティスタが接近し、ラズガットリオグル、レイ、バウティスタのトップ3が後方を引き離していきます。

レース前半はラズガットリオグルとレイによる、激しいトップ争いが繰り広げられました。二人は何度もトップを奪い合うバトルを展開していましたが、レース中盤にはこの争いにバウティスタが加わり、10周目にバウティスタがトップに立ちます。さらにこのころ、コースの一部に雨が落ち始めました。

トップのバウティスタはやや抜け出す格好となり、一方で2番手争いは最後まで続きました。ラズガットリオグル、レイ、そして追い上げてきた4番手のスコット・レディング(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が、激しい表彰台争いを展開します。

優勝したのはバウティスタ。ドゥカティはこの優勝により、WSBKにおける通算1000回目の表彰台獲得を果たしました。2位はラズガットリオグル、3位はレディングが獲得し、レイは4位でした。野左根航汰(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は18位でゴールしています。

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レース1はバウティスタが優勝。チャンピオンシップを争うレイは表彰台を逃した

日曜日午前中に行われたスーパーポール・レースは気温25度、路面温度33度のドライコンディション。半数のライダーがリヤタイヤにスーパーソフトのSCXをチョイスしました。レースはラズガットリオグルとレイのトップ争いとなり、最終ラップでレイがラズガットリオグルに仕掛けた際、オーバーラン。ラズガットリオグルが優勝し、レイはコースに復帰して2位。3位はバウティスタが獲得しました。ラズガットリオグルの優勝により、ヤマハはWSBKで通算100勝目を達成しています。なお、表彰台を獲得したラズガットリオグル、レイ、バウティスタの3人は、リヤタイヤにSCXを選択していました。

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ラズガットリオグル(#1)とレイ(#65)による激しい攻防は最終ラップまで続いた

午後のレース2は、気温27度、路面温度38度のドライコンディションとなりました。レース1同様、フロントタイヤではSC1(A0843)を最も多くのライダーがチョイス。一方、リヤタイヤは3人のライダーを除いてSC0(B0624)が選択されました。

スーパーポール・レースの結果により、ポールポジションからスタートしたラズガットリオグルがレース序盤をリードします。2番手スタートのレイは1周目にやや後退するも、その後挽回。レース中盤はラズガットリオグル、レイ、そしてミスによって一時後退したバウティスタが追いつき、この3人がトップ集団を形成します。

その後、バウティスタとレイにかわされて一時、3番手を走行していたラズガットリオグルがレイ、それからバウティスタをパスすると、トップを奪い返します。ラズガットリオグルはレース後半に入った18周目、さらにその後の20周目にもファステストラップを更新。ラズガットリオグルはバウティスタ、レイを引き離していきました。

ラズガットリオグルはそのまま優勝を果たし、2位はバウティスタ、3位はレイが獲得しました。ラズガットリオグルはチャンピオンシップのランキングトップのバウティスタとの差を38ポイントに縮めてシーズン前半戦を終えています。野左根は13位で、ポイントを獲得しています。

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今季の優勝争いの常連、ラズガットリオグル(#1)、レイ(#65)、バウティスタ(#19)。前半戦を終えてもタイトル争いは混とんとしている

WSS:9連勝中だったエガーター、ノーポイントに終わる

土曜日に行われたスーパースポーツ世界選手権(WSS)のレース1は、気温19度、路面温度26度のドライコンディションで行われました。このレースでは全ライダーがフロントタイヤにSC1、リヤタイヤにSC0を選択しています。

レースはスタート直後の1コーナーで多重クラッシュが発生。ここまで9連勝中だったドミニケ・エガーター(テンケイト・レーシング・ヤマハ)を含む、転倒した5人のライダーは最終的にリタイアとなっています。そんな中、トップを独走したのはロレンソ・バルダッサーリ(エヴァンブロス.ワールドSSPヤマハチーム)。そのまま独走で優勝を飾り、開幕戦アラゴンのレース1以来となる、今季2勝目を挙げました。2位、3位争いは最後まで接戦となり、ステファノ・マンジ(ダイナボルト・トライアンフ)が2位、スティーブン・オーデンダール(カリオ・レーシング)が3位を獲得。2位のマンジから4位のライダーまで0.067秒という僅差でのフィニッシュでした。

日曜日のレース2は、チャンピオンシップのランキングトップにつけるエガーターが、レース1におけるスポーツマンシップにもとる行為によって出場停止を受けました。タイヤ選択は、レース1土曜に全ライダーがフロントタイヤにSC1、リヤタイヤにSC0を選んでいます。

レースは序盤からランキング2番手のバルダッサーリが先頭に立ち、レースをリード。ニコロ・ブレガ(Aruba.itレーシング・ワールドSSPチーム)がバルダッサーリに追いつきトップを奪ったものの、残り4周でバルダッサーリがブレガをかわしてトップに浮上します。ところがこの周のメインストレートで転倒が発生。レースは赤旗終了となりました。

最終結果は優勝がバルダッサーリ。2位はブレガ、3位はマンジとなりました。このチェコラウンドでエガーターがノーポイント、バルダッサーリが2勝を挙げたことで、バルダッサーリはエガーターとのチャンピオンシップポイント差を14に縮めています。

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エガーターがノーポイントで終えたチェコラウンドで、タイトルを争うバルダッサーリが2勝を挙げた

WSS300:天候と赤旗に翻弄されたレース。岡谷はレース2で奮闘見せる

土曜日に行われたスーパースポーツ300世界選手権(WSS300)のレース1は、スタート前に雨が降り出したことでウエットレースが宣言され、ウエットレースの周回数である12周で行われました。このためタイヤ選択が分かれ、ポールポジションから10番手までのライダーはスリックタイヤを選んだものの、後方にはスリックとレインタイヤを組み合わせるライダーもいました。

2周目、1コーナーでトップ集団のうち3人が転倒を喫し、優勝、表彰台争いから脱落。その後、トップに立ったマルク・ガルシア(ヤマハMSレーシング)が後方を引き離し、独走態勢に入ります。ガルシアの4秒以上後方では集団による混戦の表彰台争いが繰り広げられました。優勝は独走体勢を崩さず、2位に10秒以上のアドバンテージをつけたガルシア。2位にはユーゴ・デ・コンセリス(プロディーナ・レーシング・ワールドSSP300)、3位にはアルバロ・ディアス(アルコ・モーター・ユニバーシティ・チーム)が入り、混戦の表彰台争いを制しました。岡谷雄太(MTMカワサキ)は20位でした。

日曜日のレース2では1周目に発生したクラッシュにより赤旗が提示され、レースは中断。その後、14周から9周に周回数が減算されて再スタートとなりました。レース序盤からトップに立ったビクター・スティーマン(MTMカワサキ)が独走態勢を築く一方、その後方では9人のライダーが続き、21番手スタートの岡谷も大きく順位を上げ、この集団の中でポジション争いを展開していました。しかし残り3周、17コーナーで発生したアクシデントにより再び赤旗が提示され、全周回数の3分の2を終えていたことからこのままレース終了となりました。優勝はスティーマン、2位はディアス、3位はレノックス・レーマン(フロイデンベルグKTM-パリゴ・レーシング)が獲得しています。岡谷は7位を獲得しました。

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アクシデントによって2度の赤旗提示となったレース2は、スティーマンが優勝

第7戦フランスラウンドは、9月9日から11日にかけて、フランスのマニクール・サーキットで行われます。