Report/松井 勉

アドベンチャーバイクのツーリングをアップグレードしてくれるタイヤ

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いま、世界で安定して人気の高いアドベンチャーセグメントバイク達。このところ、1000㏄以下でフロントに21インチ、リヤに18インチというタイヤを履くモデルの人気もあって、ますます販売台数は上昇傾向にあります。

中でもフロント19インチ、リヤ17インチというサイズを履いたプレミアムクラスのアドベンチャーツアラーは、ここ日本でも人気が安定し、BMW、ハーレーダビッドソン、KTM等から販売され、休日の目撃率も上がっています。

今回試乗をしたTOURANCE™ NEXT2は、そうしたバイク達に向けた最新タイヤです。ターゲットユーザーとしては、荷物を積んで長距離ツーリングをする(タンデムも含む)、日帰りツーリングをする、そして日常でのデイリーユースに使うユーザーを含め、舗装路ユースが90%以上、未舗装路ユースが10%以下という使用環境をイメージしているタイヤと言えるでしょう。

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2013年に登場した先代TOURANCE™ NEXTは、アスファルトでの快適性、コーナリング性能、そして雨天、寒冷時でも安心して走れるように造られたタイヤでした。そのパフォーマンスは非常に高く、たとえ林道レベルの未舗装路に入ってもしっかりとしたグリップをもたらしてくれることで、アドベンチャーバイクのマルチパーパス性を見事に体現してくれるタイヤでした。

TOURANCE™ NEXT2はその進化版。試乗前に受けた製品のブリーフィングを聞いて、試乗のテーマを絞り込みます。まず、前輪に施された4つのパターンからなる左右非対称トレッドパターンにより、走行時のタイヤノイズを抑えていること。これはどのように感じるのか。

次に、ウエットグリップ、コーナリング性能を向上させるために採用した新しいトレッドコンパウンドと、その配置方法。それがどのように走りに影響をもたらすのか。

トータル的に高いウエットグリップとブレーキング時の安定性を持つに至った新作の威力を今回、体感できるのか、というもの。

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試乗会が行われたオーストラリア・シドニーの北西部にあるウインザー周辺の天気予報は日本を出発する前から雨/曇りというものでしたが、むしろアドベンチャーバイクのタイヤテストにはうってつけの天気。しかも南半球のこちらは、晩秋を迎えていて気温も低め。素晴らしい環境が揃っているのでした。しかしテスト当日は終日晴れ/曇り。雨は降りませんでした。

試乗車はフロント19インチ、リヤ17インチのプレミアムクラスのアドベンチャーバイク達でした。BMW・R1250GS/ADVENTURE、ハーレーダビッドソン・パンアメリカ1250S、KTM・1290スーパーアドベンチャーS、ドゥカティ・ムルティストラーダV4Sというラインナップのなかから、R1250GS ADVENTUREを選んで走り出しました。

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会場から数㎞走ったガソリンスタンでまずは給油。スタート時、まったくの新品だったTOURANCE™ NEXT2のここまでの印象はとてもポジティブなものでした。他のバイクが給油している間にトレッドに触れてみると、前後とも暖まっているではないですか。交差点などが多く速度は低かったし距離も走ってない。しかも5月下旬のオーストラリア南部はすでに晩秋の気配。乗り出しから安心感があったのはこの温まりの早さからなのか。いや、トレッドに使われるコンパウンドのキャラクターがそうさせたのだろう、などなど感心することしきり。

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次は市街地から郊外へ。交通量は少なくなり、ペースも速くなりました。乗り慣れたGSだけに、安定感の中にある軽快性が伝わってきます。まだ慣らしも十分ではない距離にもかかわらず、路面からの細かな入力をしっかり吸収するタイヤだと感じました。ハンドルグリップに添えた手にコツンと来るような刺激成分がとにかく少ないのです。

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郊外の制限速度は100km/h。対向二車線の道が大きな風景の中を大地のカタチに合わせて曲がり、それにアップダウンが混ざりながら進むルートで、ブレーキを使う必要はほとんどなく、アクセルを時々絞る、開けるという操作だけで走れるシチュエーションでした。ブレーキをかけて前後荷重バランスを積極的に使わずとも、素直なハンドリングであることが分かりました。速度が速いだけに、時に深いリーンアングルになることもありましたが、満タンで270㎏あるこのバイクを軽々とステアできるのはとても気持ちのいいものでした。

この日のルートは山岳路を越え、その先で折り返し、再び同じルートを辿ってウインザーの街へと戻るというもの。中盤から折り返し地点まではツーリングにはもってこいのワインディングで、シフトダウン、ブレーキング、コーナリング、加速というサイクルが続きました。リーン初期から、必要があればフルバンク付近まで一連の動きが掴みやすく、そこから加速してもパワーに負ける感じがない。選んだラインをトレースする性能も素晴らしいものでした。

限界まで攻め込んでも何も起こらない

復路はバイクをムルティストラーダV4Sにスイッチ。170馬力を誇るV4エンジンとの組合せでどんな印象になるのか知りたかったのです。

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再び山岳路を抜けるワインディングに入り、パワーとブレーキングをさらに引き出してみた。バイクのキャラクターはGSとは異なるものながら、タイヤの印象は不変。安心感に満ちたグリップ、掴みやすい旋回性、そしてブレーキング時のスタビリティもライダーの感性にあったもので、確実な減速と安定性を提供してくれました。

限界周辺の挙動を見てみよう、と思いましたが、せいぜいコーナリングの脱出でトラクションコントロールのワーニングランプが光る程度。明らかに挙動に出ることもないし、あえて強く握り込まない限りABSが作動するようなこともない。タイヤとバイクの性能がマッチングしているのです。

今回は、ドライ路でのテストに終始しました。時折、山の斜面からしみ出し道路に、細い川のように濡れた路面を造る清水はありましたが、それだけではウエット路の印象を語れないくらい、TOURANCE™ NEXT2は平然と駆け抜けてしまいました。

過去、メッツラーのタイヤをテストした際、雨の日こそ出かけたいと思うほどの卓越したウエット性能を体験しました。TOURANCE™ NEXT2もやはり同様で、その以前テストしたタイヤよりもウエットでの制動距離が1.5メートル短くなったというデータがあるそうだから、TOURANCE™ NEXT2のウエット性能は推して知るべしでしょう。

ロードツーリングでの印象となりましたが、アドベンチャーバイクが持つ多用途性能を高い次元で満足させるこのTOURANCE™ NEXT2は、非常に満足度の高いタイヤでした。ここ日本の道でも、特に冬でもツーリングが可能なエリアでは、一年を通じてアドベンチャーバイクのツーリングをアップグレードしてくれるに違いありません。ロードノイズも気になることがなく、走ることに集中できる環境を調えてくれるタイヤでした。

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METZELER - TOURANCE™ NEXT 2


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<松井勉さんプロフィール>
1963年生まれ、東京都出身。17歳でバイクに乗り始め、20歳ころからオフロードライディングを始め、エンデューロレースなどでファンライディングを知る。その後、バイク専門誌などの取材記者としての活動を始め、パリ~ダカール、Baja1000など海外のオフロードレースへ参加。そうした経験を、現在はメディアイベント、ユーザーイベントのルート制作などの面でフィードバックしている。また、映画、PVなど走行シーンの撮影も数多く体験し、これら「訊く、書く、競う、撮られる」経験をベースに、バイクの楽しさを多くの人に伝授すべく精力的な活動を行っている。