※本記事はドイツMOTORRAD誌が2021年に行った比較タイヤテストの記事を元に編集部がまとめたものです。

●PART1<数ある中からどのタイヤを選べば良いのか?>

 これはドイツ・MOTORRAD誌が行った、スポーティなドライ走行、ウエット走行、2000㎞におよぶ長距離ツーリングによる6つの現行ツーリングタイヤのテストプロジェクトの記録です。

2020年の半ばになって、コロナ禍にほんの少し希望が見えてきたとき、MOTORRADは再び動き始めました。そして、その年の12月、一縷の望みだったプロヴァンスでのタイヤテストが実現しました。その日の天候は晴れ。すでにかなり冷え込んでいましたが(後述参照)、これで2021年のシーズン開幕に合わせて、本誌の人気No.1のタイヤテスト記事を掲載することが可能になりました。

ツーリングやロングラン、高速走行、ウエット路面やドライ路面でのコーナリングに最適なのはどのタイヤか?

ガレージから自分のバイクを運び出して、平らに磨り減った溝や、すでに濃い灰色になったタイヤラバーに顔をしかめている人は、大いに新しいタイヤの購買意欲をかきたてられることでしょう。

結局のところ、新しいタイヤは、使い込んだバイクを再び躍動させるための一番のチューニング手段なのです

テストバイクはBMW F 900 XR、フロント120/70 ZR 17、リヤ180/55 ZR 17という一般的なサイズのオールラウンド・ツーリングタイヤを紹介します。

MOTORRADが 単に"Tour"と呼ぶ製品セグメントは、各タイヤメーカーのパンフレットでは昨今 "Touring Sport "や "Sport Touring "などと呼ばれていますが、これは実に的確な呼称です。なぜなら、このクラスのバイクはここ数年の間に、ものすごい勢いで刺激とシャープさを増しているからです。

そして、150馬力以上のパワーネイキッドバイクでも、このセグメントのタイヤを履けば、デイリーユースで十分なタイヤ性能を発揮することが出来ます。特に、春先から秋口までのバイクシーズンに走ることを想定するのであればなおさらです。

では、どのタイヤがベストなのか?

早速、6本のライバルタイヤたちを、曲がりくねったカントリーロード、雨の中、そして耐久走行でチェックしていきましょう。

<神がかったフランスでのタイヤテスト>

 マルセイユから東に30kmほどのところにあるプロヴァンスの小さな町、ジェムノがベースキャンプとなりました。オレンジイエローの岩に刻まれた全長20キロの絶景コース、コル・ド・レスピグリエにホテルの駐車場からほぼダイレクトに入れるという立地は貴重です。日中の疲れを癒し、夕方の帰路で再びモーターサイクルの醍醐味を味わうには最適でした。

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毎日の平均的な走行距離は350㎞から450kmで、場合に応じてさまざまなコース設定が可能です。

5日間の走行で、南仏プロヴァンスの最も美しい場所を縦横無尽に走り回りました。マルセイユを望むエスピグリエ峠で、ドイツ・ロマン派の代表的画家であるカスパー・ダヴィッド・フリードリヒが描いたような壮大なサンダウナーを眺めながら、多くの日を終えました。

2000kmのテスト走行を行った後に、グッドイヤー・ダンロップ社のテストコースに行き、特にウエットコンディションでのフィーリングを比較しました。

<ドライ走行>

 何よりもまず、今のタイヤ業界の実力は本当に尊敬に値すると思います。開発レベルが非常に高く、特にこのセグメントドでは、やみくもにショップのタイヤの棚に手を伸ばしても、失敗することはないでしょう。

モデル名を見てもわかるように Roadsmart III、Road Attack 3、Angel GT II、Roadtec 01 SE……。今回テストすべてのツーリングタイヤは、2回目、あるいは3回目のモデルチェンジを行っています。そして、私たちの長年のテスト経験からも分かるように、それぞれのアップデートは、目に見えて分かるほどの革新をそれぞれのタイヤにもたらしています。

グリップの効くアスファルト、ドライな路面、バイクに適した気温など、理想的な条件下では、今回テストしたどのタイヤもその性能の限界に近づくことはできませんでした。

それは、各タイヤクラス間での開発移管が進んでいることや、ツーリングタイヤとスポーツタイヤの境界が曖昧になってきていることが要因として挙げられます。バイコンパウンドやマルチコンパウンドも定着し、構造的にもさまざまな進化の可能性を秘めています。

例えば、比較的硬く耐摩耗性に優れたコンパウンドのセンターストリップを、柔らかくグリップ力に優れたショルダーゾーンで囲む。そして、それらは路面に対し大いに機能してくれます。グリップヒーターを使うほどに凍える寒い冬の日も、BMW F 900 XRはどんなタイヤを履いていても、限界まで角度をつけてプロバンス地方を豪快に駆け抜けることができたのです。

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ROADTEC 01SEはリアタイヤにデュアルコンパウンドを採用。

南仏のカントリーロードの2000km走行テストを終えた結果、6本のタイヤの点差は最大でわずか3ポイント。

特筆すべきは、ブリヂストンの温厚さ、コンチネンタルののびのびとした反応、ダンロップの軽快さ、メッツラーのニュートラルさ、ミシュランのフィードバックの良さ、ピレリの優れたスポーツ性で、積極的なコーナリングジャンキーにはRoadtec 01 SEとRoad 5 GTがオススメという結果でした。

<悪天候に強いか>

 我々の注文通りに雨が降ることはなく、デイリーユースにおける基本的な条件は安定していないため、信頼性の高い比較データを得るには、テスト用6セットのタイヤのウエット性能を一定の、そして何よりも再現性の高い理想的な条件の下で、再度個別に実走チェックする必要がありました。

そのためには、適切なテストコースも必要で、今回はモンペリエ(フランス)近郊にあるグッドイヤー・ダンロップ社のウエットテストコースを使用しました。

コースプロフィールの右側にある恒久的に水が張られたコーナーでは、すべてのタイヤをほぼ安全に、限界までテストすることができます。

実践派の評論家はこう言うかも知れません。雨の日にコース内のコーナーで自分のラップレコードを追いかけるなんてことは一般人はしないんだから、そんな結果に何の意味があるんだ?と。

一理ありますが、このテストは個々のタイヤが雨の中でどのように機能するのかを容赦なく教えてくれます。濡れた状態でのグリップレベルはどのくらい高いのか(あるいは低いか)? 限界域はどのように設計されているか? スキッドは急に発生するのか、それともライダーはグリップの限界に備えることができるのか?

雨の日は無難に、消極的な運転をするという人も、今回の6つのタイヤであればアクシデントを恐れる必要はありません。特に耐久テストでは、100km/hからの急ブレーキの結果、すべてのタイヤがほぼ同等の距離で停止しました。

実際、この章でのポイントは僅差です。ただし、非常に高いレベル、すなわち安全なレベルでです。ここで「良」の評価にとどまったブリヂストン、コンチネンタル、ダンロップのタイヤでも、テストコースのウエット路面から100cm離れた濡れた路面で100km/hから急ブレーキをかけるという「最悪のケース」で、最高の性能を発揮しました。それにもかかわらず、メッツラー、ミシュラン、ピレリのハイグリップタイヤは、そのグリップレベルの高さ、スリップの少なさ、トラクションの高さ、そしてフィードバックの良さで、際立っていました。

雨の王者は? そう、ミシュランのロード5GTでした。

マイレージ性能はどうか?

 長距離に適しているか、それとも短距離専用か? 2000km走行後のトレッドの減り方と品質を見てみましょう。

フロントタイヤはショルダー部の摩耗値、リヤタイヤは中間領域で決定された摩耗値が評価基準です。

マイレージ項目はタイヤテストでは必須。そのテスト手順は実は非常にシンプルで、同一の車両に異なるタイヤを装着してテストを行い、テストチームは常に一緒に走行するというものです。

車両とテストライダーは一定のパターンで常に定期的に交換し合い、個人の "走りの癖 "の違いを最小限に抑えています。要するに、すべてのテスト候補者が同じようにフィーリングをチェックして、ある時点で関連する測定結果が記録され、互いに比較できるようになるのです。

高速道路やカントリーロード、ドイツやフランスのアスファルトなど、どこをどのように走行したのか? 天候は? カーブでのブレーキのかけ方、カーブからの加速の仕方などなど……。

極端な例では、あるライダーは2000km走行後にすでに摩耗限界の1.6mmに達しているのに、別のライダーは同じ走行距離でもトレッドが80%以上残っていました。

時間的な制約から、今年はいつものようにカーブの多いテストエリアへの "実走テスト"は行われませんでした。12月では季節が遅すぎたのです。そのため、例年のように4000kmではなく、トリップメーターにはその半分しか表示されませんでした。

とはいえ、テストが終わってみれば、各タイヤに大きな違いが見られました。

(PART 2へ続く...)