2026年FIMスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)第11戦エストリルラウンドが、10月9日から11日にかけてポルトガルのエストリル・サーキットで開催されました。
WorldSBKでは、前戦イタリアラウンドで年間王者を確定させたニコロ・ブレガ(Aruba.it Racing - Ducati)が3レースすべてに優勝。今季29勝、年間獲得664ポイントに到達し、いずれも歴代最多記録を更新しました。
また、併催されたFIM Yamaha R3 BLU CRU World Cupでは、日本の高平理智がシリーズ初の日本人年間チャンピオンに輝きました。一方、WorldSSPに参戦する岡本裕生(Pata Yamaha Ten Kate Racing)は、Race 1を20位、Race 2を16位で終えています。
高平理智、日本人初のYamaha R3 World Cup年間王者に
若手ライダーの育成を目的とするFIM Yamaha R3 BLU CRU World Cupで、高平理智が2026年の年間チャンピオンを獲得しました。同シリーズで日本人ライダーがタイトルを手にするのは初めてのことです。
今季から参戦した高平は、開幕戦バラトンパークで両レースとも7位というスタートでしたが、第2戦アラゴンで2位表彰台を獲得すると、シーズン後半に入って躍進。第4戦フランス・マニクールでRace 1、Race 2を連勝し、続くイタリア・クレモナでも勝利を挙げてランキング首位に浮上しました。
最終戦エストリルでは、ドミニカ共和国のシャルリ・メンデスとのタイトル争いが決着を迎えます。
土曜日のRace 1を高平が4位、メンデスが6位で終えたことで、日曜日の最終レースを前にしたポイント差はわずか4点。高平がランキング首位を守ったものの、タイトルの行方は最後まで持ち越されました。
迎えたRace 2では、序盤の7コーナーでメンデスが転倒。レースに復帰したもののポイント圏外に終わり、高平は7位でチェッカーを受けて年間王者を確定させました。
高平はレース後、タイトル獲得の喜びとともに、支えてきた家族や関係者への感謝を表明。参戦初年度でのタイトル獲得という大きな成果を手にし、今後は2027年のFIM Sportbike世界選手権へのステップアップにも注目が集まります。
岡本裕生、赤旗中断のRace 2で16位まで挽回
WorldSSPに参戦する岡本裕生は、エストリルで今季のさらなるポイント獲得を目指しました。
金曜日のフリープラクティスでは21番手だったものの、スーパーポールではタイムを伸ばせず27番手。土曜日のRace 1は後方グリッドからの追い上げを強いられました。
18周で争われたRace 1では、スタート後に順位を上げたものの大きな挽回には至らず、20位でフィニッシュ。岡本はレース後、期待していた結果を得られなかったことを認め、翌日に向けてチームとともに改善に取り組む考えを示しました。
日曜日のRace 2は再び27番グリッドからスタート。前日までの晴天から一転して雲が広がり、レース前には小雨も見られましたが、スリックタイヤでのレースとなりました。
レースは9周目に発生した転倒事故により赤旗中断となり、6周のレースとして再スタート。岡本はこの短いレースで順位を上げ、16位でチェッカーを受けました。
前日よりも走りに改善が見られ、ポイント圏内の15位まであと一歩に迫ったものの、今大会も無得点。岡本自身も改善を実感する一方で、まだ課題が残っていると振り返っています。
チームメイトのジャン・オンジュはRace 2で4位に入り、表彰台まであと一歩に迫りました。岡本にとっては引き続き厳しい週末となりましたが、シーズン最終戦のヘレスに向けて準備を進めます。
ブレガが3連勝。年間最多勝利数と獲得ポイントの歴代記録を更新
WorldSBKでは、すでに年間王者を決めているニコロ・ブレガが再び速さを見せました。
土曜日のスーパーポールでは、ピレリのエクストラソフトSCQを使用して1分33秒884を記録。エストリルのオールタイムラップレコードを更新するとともに、今季10回目のポールポジションを獲得しました。
続くRace 1では、スタート直後の1コーナーでチームメイトのイケル・レクオーナに先行され、さらにアレックス・ロウズにも抜かれて3番手まで後退。しかし、2周目にロウズをかわし、3周目にはレクオーナから首位を奪い返します。
トップに立ったブレガは1分34秒964のレースラップレコードを記録しながら後続との差を広げ、独走でチェッカー。今季27勝目を挙げ、アルバロ・バウティスタが2023年に記録した年間最多勝利数に並びました。
日曜日のスーパーポール・レースでも勝利すると、続くRace 2ではスタートで先行したレクオーナを1周目の6コーナーで攻略。その後は安定したペースで周回を重ね、2位レクオーナに4.888秒差をつけて優勝しました。
これにより、ブレガの今季勝利数は29勝となり、WorldSBKの年間最多勝利記録を更新。さらに年間獲得ポイントも664ポイントに到達し、ジョナサン・レイが2019年に記録した663ポイントを上回りました。
今季9度目のハットトリックを達成したブレガは、年間表彰台回数でも33回を記録し、レイが持つ歴代最多34回に迫っています。
一方、ルーキーのアルベルト・スッラ(Motocorsa Racing)もエストリルで存在感を示しました。
前戦クレモナでWorldSBK初表彰台を獲得したスッラは、今回のRace 1で初のフルディスタンスレース表彰台となる3位に入賞。日曜日のスーパーポール・レースでは最終周にミゲル・オリベイラをかわし、Race 2でも3位を獲得して、3レースすべてで表彰台に立ちました。
地元ポルトガルのファンから期待を集めたオリベイラ(ROKiT BMW Motorrad WorldSBK Team)は、Race 1とスーパーポール・レースでともに4位。Race 2は8位となり、母国エストリルでの表彰台には届きませんでした。
WorldSSPではアルベルト・アレナスが年間チャンピオンを確定
WorldSSPでは、アルベルト・アレナス(AS BLU CRU Racing Team)が土曜日のRace 1で4位に入り、2026年の年間チャンピオンを確定させました。
2020年のMoto3世界王者であるアレナスは、WorldSSP参戦初年度でのタイトル獲得。今季は3勝を挙げ、安定して表彰台争いに加わることでランキング首位を守ってきました。
エストリルのRace 1ではトム・ブースアモス(Triumph)が優勝し、赤旗中断により短縮された日曜日のRace 2は、ジェレミー・アルコバ(Kawasaki)が制しています。
開発仕様E0126から標準SCXへ。ピレリタイヤがエストリルの記録更新に貢献
今回のエストリルでは、WorldSBKの全ライダーがフロントにソフトSC1、リアにスーパーソフトSCXを選択し、3レースを戦いました。
注目したいのは、リアに使用されたDIABLO SUPERBIKE SCXの開発経緯です。
このタイヤは2025年に「E0126」の名称で投入された開発仕様をベースに、2026年から標準ラインアップへ採用されたものです。
2025年のエストリルでは、E0126が従来の仕様と比較して1周の速さとレース距離全体でのパフォーマンス向上を示し、全3レースの優勝に貢献。開発仕様として実績を積み重ねたタイヤが、翌2026年には標準仕様のSCXとして供給されています。
エストリルは路面のグリップレベルが比較的低く、大西洋に近い立地から気温や風の変化も起こりやすいサーキットです。今回も土曜日のRace 1では40℃だった路面温度が、日曜日のRace 2では35℃に低下するなど、走行条件に変化がありました。
そうした中でも、全ライダーが10周のスーパーポール・レースから21周のRace 2まで一貫してSCXを選択しています。
タイム面でも、ブレガはスーパーポール・レースで1分34秒525の新レースラップレコードを樹立。21周のRace 2は33分28秒170で走り切り、前年のレースタイムを約12秒短縮しました。
一方、予選ではSCXよりも柔らかいエクストラソフトSCQが使用され、ブレガが1分33秒884のオールタイムラップレコードを記録。一発の速さが求められる予選にはSCQ、スプリントからロングレースまではSCXという使い分けが見られました。
タイムの向上にはマシンやライダーの進化も関わりますが、グリップレベルが低く、コンディションの変化も大きいエストリルで、標準仕様SCXが全車に選ばれたことは今回のレースを振り返るうえで重要なトピックです。
2026年のWorldSBKは、10月16日から18日にかけてスペインのヘレス・サーキットで最終戦を迎えます。歴代記録を更新したブレガがさらに勝利数を伸ばすのか、そして岡本裕生がシーズン最後のレースでポイント獲得を果たせるかにも注目です。
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