タイヤに異物が刺さると、実はタイヤの内部に想像以上に深刻なダメージを与える。悲しいけれど、それが現実だ。

チューブレスタイヤはパンクしても、応急修理キットを使えば穴を塞ぐことはできる。それで空気が漏れなければ普通に走れる気がするけれど……。実はパンク修理後は危険がいっぱい!? タイヤの構造から考えるとパンクは致命的なトラブルだから、『走行禁止』と思っていただきたい。

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じつはこの間、友人がツーリング先でパンクしてしまって……。ビスが刺さっちゃったんです。

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タイヤの接地面にビスが刺さってしまった状態。チューブレスタイヤなら空気は一気に抜けない場合も多いが、いずれ空気が抜けて走行できなくなる。



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それは災難だったね~。大丈夫だったのかな?

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そのタイヤはチューブレスだったんですけど、ラッキーなことにツーリング仲間のベテランが応急パンク修理キットを持っていたんです。その場で修理して、無事に帰宅できました。いや~、チューブレスってパンクを直せるから良いですよね! パンク修理キットは持っておくものだなって思いましたよ。

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チューブレスタイヤなら、応急パンク修理キットを使えば比較的簡単に修理できるが……。

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修理キットを使ってとりあえず空気が漏れない状態にしたところ。この後、出っ張っている部分をカットして空気を入れれば、応急処置としては完了だが……。



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えっ! まさかそのまま走って帰ってきちゃったの!?

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ええ、ちゃんと修理できたし、空気も漏れないから問題なく走れたそうですよ。というか、いまもそのまま乗っていると思いますよ。何か問題がありますか?

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タイヤはね、パンクしたら新品に交換しないとダメなんだよ。

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えっ、修理したのに?

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そう。パンクしたタイヤは、修理しても完全に元通りに直すことはできないんだ。

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修理して指定の空気圧も入れて。空気が漏れないことも確認。それでも走ったらダメなんですか? ん~、もったいないというか、納得できないというか……。

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気持ちはよく分かるけれど、ダメなモノはダメ。それはとても危険な行為なんだ。以前も説明したけれど(『教えてディアブロマンVol.7(https://pmfansite.com/pirelli/article/2024/1028461727.html)』参照)、タイヤって単なるゴムの塊じゃない。カーカスと呼ばれる薄くゴムを敷いた布地のような素材や、やはり繊維素材のベルトを何層も重ねて、最後に接地面(トレッド)のゴムを貼った構造なんだ。

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確かバイアスタイヤとラジアルタイヤではカーカスの枚数とか構造が違うんですよね(『教えてディアブロマンVol.8https://pmfansite.com/pirelli/article/2024/1031000000.html』参照)。

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画像はロードスポーツ車のフロントタイヤに多いラジアルクロスプライベルト構造。複数のカーカスやベルトが重なっている。



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よく覚えていたね! バイアスとラジアルで構造は異なるけれど、布地的なモノを何層か重ねて作るところは同じだね。そして最後はタイヤのパターンが刻まれた金型の中に、蒸気や熱で押し付けて出来上がるんだ。

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でも、釘とか異物が刺さって穴が開いても、パンク修理キットでその穴を塞げば良いんじゃないですか? あのゴム紐みたいなモノを、強力なボンドでくっつければ穴は塞がりますよね。

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確かに一瞬は塞がる。でもね、それぞれの布地というか、層を貼り合わせた部分のゴムは分子結合しているんだけれど、全体がゴムで完全に一体化しているわけじゃないんだよ。

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ちょっと難しい話になってきましたね。

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いや、イメージすると難しくないことが分かるよ。タイヤはゴムの塊に見えるけれど、構造的に考えると、中身はほとんど「布」なんだ。例えば、綿のTシャツやニットのセーターを重ね着しているイメージ。そこに釘などが刺さって、毛糸や綿の繊維が切れちゃったらとしたら、ゴムボンドで完全に直せると思う?

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シャツの布地に開いた穴。切れてしまった繊維はボンドで繋ぐことはできない。何らかの負荷がかかると、この穴をきっかけに大きく裂ける可能性があることは想像に難しくない。それはタイヤも同じだ。



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いや、無理です。いま、かなり危険なのが明確にイメージできました。

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タイヤは、布地にゴムが敷かれてるから、修理キットを使えば一時的にはくっつく。空気も漏れないかもしれない。しかし、切れたり破れた繊維が元に戻るわけじゃない。だから走行中に負荷がかかると、塞いだ部分が剥がれてまた空気が漏れる可能性が高い。もっとひどい場合は穴が開いたところから布地がビリビリッと裂けてしまうかもしれない。その裂けるのが速度が出ている時に起きたら……。一大事だよね。

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高速道路で突然タイヤが裂けちゃう……とか? 想像するだけでも恐ろしいですね!

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だから応急パンク修理キットは、文字通り「応急」なモノ。そのまま走り続けるのは絶対に止めて欲しいんだ。

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それじゃ、応急修理したら、どれくらい走って大丈夫ですか? 高速道路はダメとか?

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そう聞かれると、正直辛い。タイヤメーカーとしてはパンク修理後にどれくらい走れるか一切保証できない。だから「エンジンかけないで下さい、押し引きだけにして下さい」って答えになる。それ以上は自己責任だね。

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走っちゃダメなんですか!? 走ったらやっぱりタイヤは壊れちゃうのかな?

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必ずしもスグに空気が抜けたり、タイヤが裂けるわけじゃないけれど……、「走ったら壊れるかも」っていうより「パンクした時点で壊れている」と思って欲しい。厳しい言い方になるけれど、応急修理って壊れているのをごまかしているだけだからね。

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パンクしたら、タイヤはすでに壊れているってことですね。それじゃ応急修理しても意味はないのか……。

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でも応急修理をして空気を入れれば、パンクした状態より押し引きははるかにラクだし、スタンドでもきちんと立たせることができる。ホイールも傷まないから、やる意味がないとは言えないよ。たとえばレッカーを呼んだ際も、バイクの積み込みがスムーズに行えるよね。

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パンクしたらレッカー呼ばなきゃダメなのか……。

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すぐ近くにタイヤ交換できるショップとかあれば良いんだけれどね……。でも、いまどきはバイクの任意保険にレッカーサービスが付帯している場合も多いでしょ。それを使うのが良いんじゃないかな。

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なるほど~。それにしても、パンクしたらタイヤ交換か~。これはけっこう痛いですね……。もうすぐスリップサインが出るようなタイミングならともかく、新品タイヤにしてから日が浅かったら、かなりヘコみます。

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それは本当にその通り。でも最近はバイク用品店とか販売店(ディーラー)で「タイヤパンク補償」をやっているところも増えているよ。基本的に有償だし、補償が効く期間や距離も決まっているけれど、相応に高額なラジアルタイヤとかなら、補償に入るメリットはあるんじゃないかな。

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そんな補償があるんですね、次にタイヤ交換する時にはちゃんと調べてみよう! ところで、パンクしにくくする走り方とかあるんですか?

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う~ん……、空気圧が低すぎると異物を拾いやすくなってパンクするとか、路肩を走ると異物が多いからパンクしやすいとか言われてはいるけれど……、やっぱりパンクするのは「運」じゃないかな。

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「運」ですか……。まあ、でもそうですよね。

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長くバイクに乗っていると1、2回くらいはパンクを経験するかもしれない。かといって、新品タイヤを履くたびにすぐにパンクした、なんて人はほとんどいないと思う。だから確率の問題かもしれないけれど、1回パンクしたら「この先10年はパンクしない」くらいの気持ちで乗るのが健全かもね。

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で、もしパンクしちゃったら直ちに交換! ですよね。あっ、パンクした友人に早く伝えなきゃ!

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そうそう、よろしく頼むね!