WSBK第1戦オーストラリア
2月21日~23日/オーストラリア フィリップ・アイランド・サーキット
2025年シーズンはフラッグtoフラッグのレースで幕開け
2025年シーズンのスーパーバイク世界選手権(WSBK)が、オーストラリアで幕を開けました。
今季はレギュレーションが変更になったことで、ライダーが週末に使用できるタイヤの本数が減少しました。これまではライダーひとりあたりフロントが11本、リヤは13本まで使用できていましたが、2025年からはフロントが10本、リヤが11本になったのです。
WSBKの公式タイヤサプライヤーであるピレリは、今大会のリヤタイヤに新仕様のミディアムコンパウンド、D0922を持ち込みました。この新仕様のタイヤは、同じくアロケーションされたD0286(2024年チェコから投入)や、スタンダードのミディアムSC1に比べて、構造とコンパウンドが異なり、より安定したパフォーマンスと高い安定性を目的とし、耐久性を向上させ、摩耗の抑制にも貢献するものです。
また、オーストラリアのレース1、レース2は、フラッグtoフラッグで行われることになりました。新しいアスファルトによる摩耗の激しさ、不透明な気温、そして、チームやライダーの新型バイクのセットアップが完全ではないことを考慮したものです。20周で行われたレース1、レース2ともに、ライダーは11周を超えて同じリヤタイヤで走行してはならないとされ、レース中にピットインをしてタイヤ交換を行いました。
シーズンの幕開けとなったオーストラリアラウンドですが、ジョナサン・レイ(パタ・マクサス・ヤマハ)は直前に同地で行われた公式テスト中の転倒により、左足を数か所骨折したため、欠場となりました。イケル・レクオーナ(ホンダHRC)も、スーパーポールでの転倒によって左足を骨折したため、以降を欠場しています。
なお、併催されるスーパースポーツ世界選手権(WSSP)に、今季から参戦する岡本裕生(パタ・ヤマハ・テンケイト・レーシング)もまた、テスト中の転倒により尾てい骨骨折と脱臼を負い、欠場となりました。
ブレガの3勝とラズガットリオグルのトラブル
この週末を席巻したのは、Aruba.it レーシング-ドゥカティのニッコロ・ブレガでした。2024年シーズン、最終戦までトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)とチャンピオンを争ったブレガは、今季もその勢いを持ち越しました。
ポールポジションを獲得し、土曜日のレース1、日曜日のスーパーポール・レースとレース2でも、優勝を飾ったのです。フラッグtoフラッグも影響することはなく、危なげのない速さで、自身として初めてとなるハットトリック(週末3勝)を達成しました。なお、ブレガは3レースでリヤタイヤに新仕様ミディアムのD0922を選択しています。
ブレガは、レース2後のパルクフェルメのインタビューで「ボクにとって初のハットトリックだ。本当にうれしいし、チームに感謝したいよ。バイクは(テストのあった)月曜日から日曜日まで、ずっと素晴らしかったからね。ボクたちは素晴らしい仕事をしたし、自分をとても誇りに思う。今はもう次のレースが楽しみだよ」と語っていました。

そんなブレガと対照的だったのが、ラズガットリオグルです。2024年チャンピオンは、今大会ではレース1で2位表彰台を獲得したにとどまり、スーパーポール・レースは13位。レース2はリタイアに終わったのでした。
ラズガットリオグルが日曜日の2レースで奮わなかったのには理由がありました。トラブルが発生していたのです。スーパーポール・レースの1周目、4コーナーで、ラズガットリオグルは止まり切れずにグラベルに突っ込みました。このとき、ブレーキのトラブルがあったのだそうです。
このため、レース2に向けた改善が行われました。しかし、レース2でもトラブルが発生します。タイヤ交換のためにピットインをして再びコースインしましたが、その後、リタイアとなりました。スロー走行しながらピットに向かうオンボードカメラには、ラズガットリオグルがいら立ちのままに左手でスクリーンを叩き割る姿が映っていました。
「レース2に向けてバイクをよくしようとした。ボクたちは昨日(土曜日)のバイクのほうがいいと言ったんだ。というのも、以前よりもグリップがかなりよかったから。だから昨日のバイクを使ったんだけど、レースではいくつかの技術的な問題が発生したことが分かり、レースを続けることができなかった」(WorldSBK.comのインタビュー動画より)
ラズガットリオグルは、声を落としてそう語っていました。なお、チームのリリースによれば、このトラブルの原因は「調査中」とのことです。

開幕戦は、ブレガが席巻したばかりではありませんでした。「ドゥカティが席巻した」と言い換えることもできる週末でした。レース1は、2位のラズガットリオグルを除きトップ6中5名がドゥカティライダーで、スーパーポール・レースはトップ5を、レース2ではトップ6をドゥカティが独占したのです。
これについて、ラズガットリオグルは「ブレガはやはり速いし、アルバロ(・バウティスタ)も悪くない。ただ、今年はすべてのドゥカティが前に来ている。これは普通じゃない」と警戒をあらわにしていました。


ドゥカティはシーズンを席巻するのか。ラズガットリオグルがリードを奪うのか──。第2戦ポルトガルラウンドは、3月28日から30日にかけて、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われます。
写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里