写真:Pirelli、Gold & Goose / Red Bull Content Pool、伊藤英里
テキスト:伊藤英里
MotoGP第13戦オーストリアGP
8月15日~17日/オーストリア レッドブル・リンク
Moto2クラスのリタイヤに新スーパーソフトを投入
約ひと月のサマーブレイクを終え、シーズン後半戦がレッドブル・リンクで始まりました。ピレリはこのサーキットに向け、Moto2クラスのリヤタイヤにソフトの開発仕様E0125と、新たにスーパーソフトの開発仕様E0126を投入しました。
今回、新しく投入されたスーパーソフトE0126は、先に使用されたスーパーバイク世界選手権(WSBK)で支持を受けたものです。スーパーソフトのSCX同じトレッドコンパウンドを使用し、E0125で採用されている構造を取り入れています。
なお、このスーパーソフトE0126は、日曜日の決勝レースで全ライダーに選ばれました。

Moto3:山中琉聖が今季2度目の表彰台を獲得
Moto3クラスの決勝レースは、3番グリッドからスタートした山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)を含む4名のライダーがトップグループとなってレースをけん引しました。
しかし、残り周回数が3~4周となったレース終盤、15番手スタートの古里太陽(ホンダ・チームアジア)とダビド・ムニョス(リキモリ・ダイナボルト・インタクトGP)がトップグループに追いつきます。表彰台争いは6~7名による争いとなりました。
こうした展開のなかで、山中は残り2周で4番手に後退しました。しかし、最終ラップの9コーナー進入で、スリップを使い、古里とムニョスをかわしたのです。そのまま2番手をキープしてゴールしました。
「残り2周でムニョスに抜かれたときに少しロスしてしまいました。今回の自分の強みは9コーナーで、そこ以外は難しかったと思います。前とは少し離れていましたが、いつも9コーナーまでに追いつくので、その前で抜こう、とは思っていました。成功してよかったです」
山中は2位を獲得し、カタールGP以来となる表彰台に上がりました。カタールGPではシャンパンファイトができなかったので、3位を獲得した2024年イタリアGP以来となるシャンパンの味を堪能したそうです。
古里もまた、最後まで表彰台争いに食い込みました。9コーナーで山中にかわされたあと、さらにムニョスとの接触もあり、6位フィニッシュとなりました。
「後ろからのスタートだったのでポジションを上げるのに時間がかかりましたが、前のライダーを抜いてペースを上げながら走っていました。トップ集団に追いついたタイミングも遅くはないと思っていたし、タイヤも十分に残っていました。もう少し、前で終わりたかったですね」


Moto2:佐々木歩夢が13位でポイントを獲得
Moto2クラスの決勝レースでは、佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)が15番手から好スタートを切りました。10番手付近にまでポジションを上げたものの、2周目に他のライダーとの接触があり、後退します。これが響きましたが、それでもポイント圏内の13位でフィニッシュしました。
「接触して6ポジションくらい落としてしまい、その間に前のグループと離れてしまいました。その接触がなければ8番手争いはできたと思うのですが……。今のMoto2クラスはだいたい同じペースなので、差ができてしまうと追いつくのが難しいんです。特にこのサーキットはタイム差が少ないですから。でも、ここ数戦、確実にトップ10に入れるスピードはあると思います。今回については、ポイントを獲得できてよかったです」
國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)は、28番手からのスタートとなりました。さらに、チェコGP決勝レースで佐々木と接触、転倒させたことでロングラップ・ペナルティを科されており、レース序盤にこれを消化します。國井は24位でゴールしました。レッドブル・リンクに合わせることに苦戦した週末だったそうです。
「バイクに乗れている感じがなく、攻められる感覚もなくて……。ほんとに、とにかく難しいウイークでした。今季の残り数戦、できることを頑張りたいです」
第14戦ハンガリーGPは連戦となります。8月22日から24日にかけて、ハンガリーのバラトンパークで初開催されます。
レッドブルMotoGPルーキーズカップ:三谷然は4番手スタートもレース1で転倒
MotoGP第13戦オーストリアGPには、レッドブルMotoGPルーキーズカップ第6戦オーストリア大会が併催されました。
レッドブルMotoGPルーキーズカップは、若手ライダー育成を目的とした「Road to MotoGP」の一環の選手権で、ヨーロッパのMotoGPに併催されます。2025年にMotoGPクラスデビューを果たした小椋藍(トラックハウス・MotoGP・チーム)など、多くのトップライダーがこの選手権を経由して、世界選手権へとステップアップしていきました。
タイヤはピレリのワンメイクで、供給されるのは、イデミツ・アジア・タレントカップと同じくDIABLO™ SUPERBIKE SC2(ミディアム)のみです。マシンもワンメイクで、KTMのRC250Rで争われます。
日本人ライダーとしては、2024年イデミツ・アジア・タレントカップチャンピオン、三谷然が参戦しています。
前戦ドイツ大会レース2で2位表彰台を獲得した三谷は、今大会の予選で4番手を獲得しました。
「ドイツでポディウムを獲得したあたりからKTMバイク(RC250R)での自信が少しずつつかめてきました」ということです。
レース1は天候に恵まれず、レースが始まる直前に雨が降り出します。レースはスリックタイヤでスタートしたものの、赤旗が提示されて中断となりました。その後、レインタイヤに変更し、レースはフルウエットで再開されます。
三谷はレース序盤、3番手につけていましたが、3周目の3コーナーで転倒を喫してリタイアに終わりました。
「(再開後の)ウオームアップ・ラップでグリップをつかもうと思ったのですが、なぜかまったくグリップ感がつかめなかったんです。転倒した前の周でも転びそうになっていました。タイヤが滑り始めるのを感じることができずにこけてしまい、それがなぜなのかがまだ分かっていないです」
日曜日朝のレース2はドライコンディションで行われ、レース1の転倒の影響もあって後退し、9位でゴールを果たしています。
レッドブルMotoGPルーキーズカップは次戦が最終戦となります。三谷は「今年、3レースで転倒しています。そうすると、最大75ポイントを失ったことになります。今はランキングは……ちょっとは気にしますけど、ランキングよりも1レース1レース、勝ちを目指して頑張りたいです」と、最終戦に向けて語っていました。
レッドブルMotoGPルーキーズカップ第7戦サンマリノ大会は、MotoGP第16戦サンマリノGPに併催で、9月12日から14日にかけて、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われます。

