写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第8戦フランス
9月6日~8日/フランス マニクール・サーキット

ラズガットリオグルの破竹の勢いを止めたのは、転倒と怪我だった

スーパーバイク世界選手権(WSBK)フランスラウンドは、転倒と負傷が相次いだ週末となりました。なかでも、チャンピオンシップのランキングトップ、トプラク・ラズガットリオグル(ROKiT・BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)は、金曜日のフリープラクティス2で転倒し、このときガードレールに背中を打ち付けました。

ラズガットリオグルはメディカルセンターに行った後、さらに検査を受けるために病院へ向かい、軽度の外傷性気胸と診断されました。この負傷により、ラズガットリオグルはフランスラウンドを欠場となりました。ただ、その後サーキットに戻ってピットでレースを見守っています。

ラズガットリオグルが欠場したレース1では、雨によって非常に難しい、そして厳しいコンディションとなりました。グリッド上ではスリックタイヤ、あるいはインターミディエイトが装着されていましたが、スタート後まもなく雨が強くなり、路面コンディションが完全なウエットになりました。このため、全ライダーがピットインを行ってレインタイヤへのタイヤ交換を行いました。

ピレリは今大会に、レインのリヤについて開発タイヤSCR1-A(D0737)を持ち込んでおり、マイケル・ファン・デル・マーク(ROKiT・BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)を始めとする6名がこのタイヤを選んでいます。

こうしたレースの場合、ピットインとタイヤ交換のタイミングが勝利の明暗を分けることがあります。しかし今回の場合は、最後まで転倒することなく走り切ることができるか、がもっとも重要なことだったと言えるでしょう。

1周目には17コーナーでジョナサン・レイ(パタ・プロメテオン・ヤマハ)と、ニコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が転倒を喫し、ジョナサン・レイは親指の骨折と深い傷によって病院へ向かい、以降、欠場となっています。ブレガは右肩と鎖骨に打撲を負いましたが、幸いにも、ブレガは翌日のスーパーポール・レースとレース2に出走しています。

アンドレア・ロカテッリ(パタ・プロメテオン・ヤマハ)、アレックス・ロウズ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)なども、転倒を喫してリタイアとなりました。完走したのは22名中、12名のライダーでした。多くのライダーが、路面コンディションに足をすくわれたのです。

レース1はファン・デル・マークが優勝。レース2ではブレガが勝利でポイント差で接近

このレースで優勝したのが、マイケル・ファン・デル・マーク(ROKiT・BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)でした。ファン・デル・マークにとって、2001年ポルトガルのスーパーポール・レース以来となる優勝でした。

ファン・デル・マークはWorldSBK.comで、レースをこう振り返っています。

「現実じゃないみたいだ。この2年間は大変だったけど、今季はだんだんよくなってきたと思う。ボクの目標は表彰台を獲得することだった。ここで優勝できて、素晴らしい気持ちだ」

「でも、ボクの判断は間違っていたんだ! チームとは雨が降り始めたらすぐにピットインする、ということで確認していたんだけど、アレックス(・ロウズ)の後ろで走っていたら、もう1周いけると思っちゃったんだよね。もっと早くピットインすべきだったよ。フラッグtoフラッグのレースってこういうものだよね。そのあとはミスしなかったよ。いいレースだったけど、きつかった」

ラズガットリオグルが欠場したものの、ROKiT・BMWモトラッド・ワールドSBKチームとしては、ファン・デル・マークによって連勝記録を伸ばし、14連勝となりました。

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難しいコンディションのなか、優勝を飾ったファン・デル・マーク
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レース1で優勝したファン・デル・マーク(中央)、2位のアルバロ・バウティスタ(左)、3位のダニロ・ペトルッチ(右)

翌日の日曜日は好天となりましたが、スーパーポール・レースでアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が転倒。肋骨の骨折によって、レース2を欠場しています。

この結果、レース2はラズガットリオグル、バウティスタ、レイなどが欠場して不在のレースとなりました。スーパーポール・レースに続き、レース2で優勝したのはランキング2番手のブレガで、ランキングトップのラズガットリオグルとの差を55ポイントに詰めることに成功しています。

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レース2はラズガットリオグル、バウティスタ、レイが欠場。新進気鋭のルーキー、ブレガが優勝した
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レース2で優勝したブレガ(中央)、2位のペトルッチ(左)、3位のギャレット・ガーロフ(右)

次戦への参戦が懸念されるラズガットリオグルですが、9月10日にWorldSBK.comが掲載しているニュースによると、BMWはこのように発表しているということです。

「マニクールのメディカルセンターで検査を行った結果、気胸は順調に回復していることが確認されました。ドクターはラズガットリオグルにイタリアへの移動を許可しており、イタリアで専門の医療チームによって治療が続けられる予定です。イタリアは次戦の舞台ですが、彼がレースに参戦できるかどうかは不明です。レースウイーク前に、回復状況と、サーキットのチーフ・メディカル・オフィサーとFIM WorldSBKメディカル・ディレクターによるチェックによって決定されます」

第9戦イタリアラウンドは、9月20日から22日にかけて、イタリアのクレモナ・サーキットで行われます。