WSBK第11戦ポルトガルラウンド 9月29日~10月1日/アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベ
スーパーバイク世界選手権(WSBK)第11戦ポルトガルラウンドが、9月29日から10月1日にかけて、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われました。
コース上での激しいチャンピオン争い
2023年シーズンのチャンピオン争いは佳境を迎えています。チャンピオンシップランキングトップのアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)は、前戦アラゴンラウンドを終えた時点で504ポイント、ランキング2番手のトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith・プロメテオン・ワールドSBK)は457ポイントで、47ポイント差でバウティスタを追う状況です。チャンピオン争いはこの2人にしぼられています。
バウティスタがかなり有利な状況ではあるものの、ラズガットリオグルにも逆転の目は残されています。ポルトガルラウンドは、バウティスタにとってはラズガットリオグルを突き放すために、ラズガットリオグルにとってはポイント差を少しでも縮めて最終戦を迎えるために、非常に重要な1戦でした。
そんな2人の意地が激突したのが、日曜日午後に行われたレース2です。土曜日のレース1、日曜日午前中のスーパーポール・レースともに、バウティスタが優勝しラズガットリオグルが2位という結果で、2レースともにラズガットリオグルがバウティスタの後塵を拝していました。ラズガットリオグルにとっては、これ以上ポイント差を広げたくない状況だったのです。
バウティスタとラズガットリオグルはレース序盤で3番手以下を引き離し、一騎打ちのトップ争いに持ち込みました。レースの多くでトップを走っていたのはラズガットリオグルでしたが、エンジンパワーに勝るドゥカティ・パニガーレV4Rを駆るバウティスタはメインストレートでラズガットリオグルをオーバーテイクします。ラズガットリオグルはバウティスタにパスされるたび、ブレーキングで抜き返し、トップを奪い返しました。こうした2人の激しいトップ争いは、序盤から最終ラップまで続いたのです。バウティスタとラズガットリオグルによる、一歩も引かないコース上のチャンピオン争いでした。
迎えた最終ラップ、やはりメインストレートで前に出たかと思われたバウティスタを、ラズガットリオグルが1コーナーのブレーキングでかわします。しかし、高速の左コーナーである最終コーナーの立ち上がりでバウティスタがラズガットリオグルのアウト側から前に出ると、バウティスタがトップ、ラズガットリオグルが2位でチェッカーを受けたのでした。
王手をかけたバウティスタ、ベストを尽くしたラズガットリオグル、それぞれの想い
スーパーポール・レースでもラズガットリオグルが先行して迎えた最終ラップの最終コーナーで、バウティスタがこのときはインサイドからパスして優勝しています。レース2はラズガットリオグルがインサイドを守りましたが、バウティスタはアウトサイドから抜き去って優勝したのです。いずれにせよ、ランキングトップと2番手のライダーによる素晴らしい戦いでした。
優勝したバウティスタはパルクフェルメでWorldSBK.comのインタビューにこう答えています。
「(ラズガットリオグルとの)バトルを楽しんだよ。ブレーキングでトプラクをパスするのは難しかったね。彼のブレーキングはとても深かったし、バイクがクロスしていたので(パスする)余地がなかったんだ。今日はトプラクの今季最高の走りだったと思うよ。すべてを懸けていた。すごくアグレッシブだったから、僕は冷静でいようとちょっとだけ注意していた。どんなミスもしないようにね。そして最後の最終コーナーでは、午前中も彼をパスしたところだ。そのときはインサイドだった。でも、今回は彼がインサイドをしっかり閉めていたので、アウトに行った。バイクはスピニングしたけど、アウトサイドから彼をオーバーテイクすることができた。すごくハッピーだよ」
対して2位で終わったラズガットリオグルは、フィニッシュラインを通過したあとタンクを叩き、悔しさを隠しませんでした。「アルバロと素晴らしい戦いを演じた。特に最終ラップは……、どのコーナーでも僕はベストを尽くしていたよ」と、やはりパルクフェルメでのWorldSBK.comのインタビューに答えました。
「勝たなければならないと分かっていたんだ。スーパーポール・レースのあと、すごく怒りを感じていたから……。でもまた最終コーナーで負けた。ドゥカティは最終コーナーでアドバンテージを持っているんだ。僕も違う方法でなんとかしようとしたけど、うまくいかなかった。表彰台を獲得できたけど、ハッピーじゃない。もう少しで勝てたのに、負けたんだから。ただ、僕たちは素晴らしい仕事をした。(最終戦の)ヘレスではまた100パーセント以上の走りをしようと思う」
この結果、バウティスタとラズガットリオグルのポイント差は60ポイントに拡大。バウティスタは最終戦ポルトガルラウンドでのチャンピオン獲得に、王手をかけた形となります。また、ドゥカティはレース1の結果により、2023年シーズンのコンストラクターズタイトルを獲得しました。
WSSチャンピオンはブレガ、WSS300はバイスがチャンピオンを獲得
スーパースポーツ世界選手権(WSS)では、ニコロ・ブレガ(Aruba.itレーシング・ワールドSSPチーム)がチャンピオンに輝きました。岡谷雄太(プロディーナ・カワサキ・レーシング)はレース1、2ともに25位、阿部真生騎(VFTレーシング・WEBIKEヤマハ)はレース1、2ともに26位でした。また、スーパースポーツ300世界選手権(WSS300)では、ジェフリー・バイス(MTMカワサキ)が2020年以来、2度目のWSS300タイトルを獲得しています。