WSBK第7戦イタリアラウンド 7月14日~16日/イモラ・サーキット
スーパーバイク世界選手権(WSBK)第7戦イタリアラウンドが、7月14日から16日にかけてイタリアのイモラ・サーキットで行われました。イモラ・サーキットでのイタリアラウンドは、2019年以来、4年ぶりの開催となります。レースウイークを通して気温が低かったイギリスラウンドから一転、イタリアラウンドは高い気温と路面温度の中での開催となりました。
そんなイタリアラウンドで躍動したのは、トプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith・プロメテオン・ワールドSBK)でした。ラズガットリオグルは日曜日のスーパーポール・レースばかりではなく、ついにレース2で優勝を飾ったのです。
前戦イギリスラウンドでアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)の連勝を止めたラズガットリオグルは、今季これまで、バウティスタ以外で唯一、優勝しているライダーです。しかし、その優勝はすべて、10周で行われるスーパーポール・レースでのもので、フル・ディスタンスでのレースではバウティスタの後塵を拝し続けてきたのでした。
スーパーポール・レースでラズガットリオグルが終盤に奪った優勝
ラズガットリオグルはスーパーポール・レースの時点で、バウティスタに迫る戦いを見せていました。このレースでは、中盤までチームメイトのアンドレア・ロカテッリ(パタ・ヤマハwith・プロメテオン・ワールドSBK)がトップを走行。6周目にバウティスタがトップに立つと、ラズガットリオグルも2番手に浮上します。今季のバウティスタは、レース前半には後ろで無理をせず周回を重ね、レース中盤以降に前のライダーのペースが落ちてくるとトップを奪い、そのまま後方を引き離す。そんなレース展開も勝ちパターンのひとつだったのですが、今回のスーパーポール・レースでは違いました。ラズガットリオグルが終盤まで食らいつき、残り2周でバウティスタをパスしたのです。
2023年シーズン、残り5周を切って先頭を走るバウティスタがトップを奪われたことはありませんでした。しかし今回は、ラズガットリオグルはそのままチェッカーを受け、優勝を飾ったのです。バウティスタは2位でした。
バウティスタの転倒。ラズガットリオグルが待ち望んだ優勝
その後に行われたレース2は、当初19周で予定されていましたが、高い気温によって15周に短縮されて行われることになりました。気温は37度、路面温度は59度にまで上昇している状況でした。
ラズガットリオグルがポールポジション(1列目1番手)、バウティスタが1列目2番手からのスタート。1コーナーにトップで飛び込んだのは、バウティスタでした。しかし、左の2コーナーから切り返して右の3コーナーに入ったそのとき、バウティスタがスリップダウン。転倒により、リタイアとなったのです。バウティスタにとっては、インドネシアラウンドのスーパーポール・レース以来、今季2度目の転倒リタイアでした。
バウティスタはworldsbk.comのレース中継の中でこの転倒について問われ、自分のミスだったと説明しています。
「体は大丈夫。3コーナーに入ったときに、内側の白線に近づきすぎたんだと思う。スロットルを開けたらフロントが切れ込んだんだ。クラッシュを避けられなかった。こういうレースもあるさ」
バウティスタの転倒により、トップはラズガットリオグルとアクセル・バッサーニ(モトコルサ・レーシング)によって争われました。前半はラズガットリオグルがトップをキープしていましたが、じりじりと迫ったバッサーニが8周目にラズガットリオグルをパスして先頭を奪います。
バッサーニは今季、2度の表彰台を獲得しており、ドゥカティ勢の中でも勢いのあるライダーのひとりです。バウティスタが戦線を離脱したこのレースでも、ラズガットリオグルの前に立ちはだかったのは、やはりドゥカティ勢だったのです。
しかし、ラズガットリオグルがバッサーニから離されることはありませんでした。0.2秒ほどの差をキープしながら、バッサーニの後ろで周回を重ねます。そして残り4周で、バッサーニをパス。再びトップに立ったのです。その後、ラズガットリオグルはバッサーニを引き離し、約2秒のアドバンテージを築いて優勝しました。
ラズガットリオグルはレース後、worldsbk.comのレース中継の中で、パルクフェルメでのインタビューに対し、こう語っています。
「僕の作戦はうまくいったよ。残り4周でアクセルをパスした。(優勝できて)とてもうれしいよ。だって、今年のレースウイークではいつも、この瞬間を待っていたんだからね。今週末、素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝したい」
そう言ったラズガットリオグルは、最後にこう付け加えました。
「チャンピオンシップはまだ、終わっていないよ」
今季初めて(※スーパーポール・レースのトップ3は表彰台に上らないため)、表彰台のいちばん高いところでトロフィーを掲げたラズガットリオグルは、チャンピオンシップでランキングトップのバウティスタとの差を70ポイントとしています。バウティスタが不在だったとはいえ、イタリアラウンドで挙げた優勝は反撃ののろしとなるのでしょうか。
スーパースポーツ世界選手権(WSS)では、フル参戦する日本人ライダー、阿部真生騎(VFTレーシング・WEBIKEヤマハ)がレース1を20位でゴールし、レース2は転倒リタイアに終わりました。岡谷雄太(プロディーナ・カワサキ・レーシング)は胃腸炎のため、土曜日以降、欠場となりました。