公道区間を含む日本唯一のクラシックエンデューロとして知られる日高2デイズエンデューロは、長距離のリエゾンと多彩なテストを組み合わせ、総合力が試される大会として定評があります。今年も二日間にわたり開催され、初日のドライから一転、2日目は暴風雨によるヘビーマディに。チャンピオン争いを占うIAクラスでは、王者・馬場亮太選手とランキング上位陣の攻防が繰り広げられました。

ドライのDay1、三つ巴の攻防を制したのは馬場亮太選手

大会初日はドライコンディションでスタートしました。ゲレンデクロステストでは馬場選手が好タイムを刻み先行しましたが、続く三島エンデューロテストでは勝山聖選手が一気に巻き返し、さらに西山林道テストでは保坂修一選手が最速をマーク。序盤から三者が10秒差以内に収まる接戦となりました。勝負所となったジュナイト・エクストリームでは保坂選手がミスを喫し、馬場選手が事前に繰り返したイメージトレーニングを活かして最速ラップを刻みます。結果、馬場選手が2位に24秒差をつけてDay1を制しました。トップ3はいずれも30秒差内という緊張感あふれる展開でした。

暴風雨のDay2、勢力図は一変

夜半からの暴風雨によりコースは大幅に荒れ、主催者は安全確保のためスタートを10時に遅らせ、テストも三島とゲレンデ2本に短縮されました。特にマディに苦しむサバイバルレースとなり、Day1を制した馬場選手は1本目で転倒、2本目も重量級マシンに翻弄され、最終テストではエンジントラブルも発生。Day2は10位に沈み、総合5位へと後退しました。一方、太田幸仁選手は慎重な組み立てで転倒を避け、ソフトタイヤのグリップを生かしてDay2を4位でまとめました。マディへの適性と安定感を武器に、2日間を通じて存在感を示しました。

王者・馬場亮太選手、イメトレで掴んだDay1の勝利も、Day2で失速

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馬場亮太

Day1は2012年式のWR450Fを駆り、重量級マシンながらも直進安定性を活かしてゲレンデで主導権を握りました。三島の細かな切り返しは苦戦を強いられましたが、ジュナイトのエクストリームでは立つポイントと座るポイントを細かくイメージして臨み、最速ラップを記録。接戦を抜け出す決定打となりました。しかしDay2は豪雨とマシントラブルに阻まれ、失速してしまいました。

コメント
 「Day1は久しぶりに本当にヒリヒリしました。勝山選手と保坂選手と3人で10秒差くらいでずっと走っていて、1本ごとに入れ替わる感じでしびれました。マシンは普段のYZではなく、2012年式のWR450Fです。正直、試しに雨の中で走ったときは“これは無理だな”と思うくらい重かったんです。滑り出したらコントロールできないし、特に三島のような細かい切り返しでは苦戦するだろうと覚悟していました。でも、ゲレンデのような高速帯では逆に重さが武器になって、直進性が強くてアンダー気味に安定して走れました。ジュナイトは事前にイメトレを重ねて、どこで立って、どこで座るかを頭に叩き込んでいたのが効きました。結果的にそこで一歩抜け出せたのは大きかったです。

Day2は完全に逆でした。1本目で転んでリズムを崩し、2本目の三島は重さに翻弄され、最後のテストではエンジンが止まってしまいました。悔しいですが、しょうがないです。コンディションが違えば勝ち筋も変わります。雨の中で速いライダーがいるのも理解していますし、自分が欲張って追いかけても崩れるだけだったと思います。次のSUGOはまたまったく別の条件になるので、気持ちを切り替えて臨みます」

使用タイヤ

  • 前:シックスデイズエクストリーム 90/90-21 M/C 54M M+S
  • 後:シックスデイズエクストリーム 140/80-18 M/C 70M M+S MEDIUM

「日高は石が多く、速度域も高めなのでミディアムを選びました。フロントは1周目から接地感がよく、ガレや下りでも不安が少なかったです。リヤもグリップの落ち込みが少なく、ブロックの持ちがいい。今回はエンジンを高回転まで回す場面も多かったのですが、それでも減りは少なく、最後までブロックが生きていました。Day2の豪雨でも極端にタレることがなく、ムースもつぶれすぎずに粘ってくれました。やはりシックスデイズエクストリームは全体的に“オールラウンダー”として安心感があると思います」

経験と技術で安定感を示した太田幸仁選手、ソフトタイヤの選択が奏功

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太田幸仁

ISDEイタリアから帰国したばかりの太田選手は、長距離のリエゾンを含む日高でも体調を整えて臨み、序盤から自分のリズムを重視しました。Day1は前走に惑わされずにペースを刻み、後半はプッシュして上位ラップを記録。Day2は暴風雨の中でも転倒を避け、慎重ながら攻めの要素を盛り込んで4位でまとめました。持病を抱えながらも2日間を安定して走り切り、総合順位を押し上げました。

コメント「Day1は最初から“自分のリズムで行こう”と決めていました。ボクはランキング3位なので、前を走る馬場選手と勝山選手は勝ちに来ると思っていましたし、そこで牽制し合うのを待つより、自分のペースを作るほうが大事だと思ったんです。序盤は『ルートを速すぎないか?』と声をかけられるくらいハイペースでしたが、それが自分の型です。後半は体も動いてきて、ラスト2本はしっかり上位タイムで詰められました。最後は攻め切った結果、3番手タイムを連発できて、気持ちよく締められたと思います。」

「Day2は夜中の大雨と風で“これはサバイバルだな”と覚悟しました。ボクは雨は苦手ではないので、焦らずノーミスでまとめることを最優先にしました。ソフトタイヤを新品ムースと組み合わせて使ったのですが、濡れた根っこやロッキーで開け始めた瞬間に“ベタッ”と噛んでくれて、初動のトラクションがすごく分かりやすかったです。あれで前に出せる感覚があるのは大きかったです。マディで欲しい瞬間の食いつきが得られるので、体力の消耗も抑えられました。実際、川渡りやグラストラックでも変な挙動はなく、最後までリズムを崩さず走れました」

「病気のこともあって体のコンディションは常に課題ですが、ISDEを走り切った経験もあって“多少きつくてもまとめきる”イメージは持てていました。日高の2日間も、最後まで自分を崩さず走れたことが何より収穫です」

使用タイヤ

  • 前:シックスデイズエクストリーム 90/90-21 M/C 54M M+S
  • 後:シックスデイズエクストリーム 140/80-18 M/C 70M M+S SOFT(新品リヤムース)

「ソフトでもサイドの腰はしっかりしていて、ふにゃふにゃするわけではありません。効いてくるのはブロックのたわみで、濡れた根っこやゼロ発進で“ベタッ”と噛んでくれる感覚です。ミディアムだと一瞬空転して回りそうな場面でも、ソフトはグッと止めて前に出られる。ビギナーにも恩恵があると思いますし、ボク自身も最後まで安心して攻められました。新品ムースを入れたことで減りもほとんどなく、2日間通してグリップを維持できたのは大きなメリットでした」