写真・テキスト:伊藤英里
2025マン島TTレース
5月26日~6月7日/TTマウンテンコース(1周 約60km)
オフィシャルパートナーであるメッツラーのマン島TTレースツアー
2025年のマン島TTレースが、5月26日から6月7日にかけて行われました。メッツラーは、1907年に始まった世界最古のオートバイレースであるマン島TTレースのオフィシャルタイヤパートナーを、2027年まで務めます。
メッツラーは、そんなマン島TTレースのレースウイーク中に、「メッツラーVIPエクスペリエンス」を開催しました。これは、各国のメッツラーユーザーをマン島TTレースにお招きし、厳しい条件下で行われる公道レースを舞台に開発されるタイヤのフィロソフィーを感じてもらうものです。そのツアーの模様をお届けします。
6月5日(木)Day1:マン島に到着
「メッツラーVIPエクスペリエンス」は、6月5日から8日にかけて行われました。マン島TTレースのレースウイークの当初のスケジュールとしては、6月5日はレスト・デー(レースは開催されない)、6日はスーパーストックTTレース2、スーパーツインTTレース2、7日は最終日にして最高峰クラスであるシニアTTレースの開催が予定されていました。
ただし、マン島は非常に天気が変わりやすく、晴れの日が続くことはまれなので、当初のスケジュール通りにレースウイークが進むことはほとんどありません。2025年のマン島TTレースもまた、天候不順によりスケジュールが大きく変わっていました。
ただ、ツアー初日である5日は予定通りに「レスト・デー(レース開催なし)」でした。夕方にロンドンからマン島に到着したゲストのみなさんは、中心都市であるダグラスのホテルにチェックインをして、海岸沿いのレストランで夕食をとり、この日は終了となりました。
6月6日(金)Day2:バンガローでレース観戦
当初はスーパーストックTTレース2、スーパーツインTTレース2が行われる予定だった6日は、それ以前の天候不順等によるスケジュール変更により、スーパーストックTTレース2、スーパーツインTTレース2に加えてサイドカーTTレース2が行われました。
ツアー一行は、ダグラスからラクシーへ移動し、ラクシーからスネーフェル山岳鉄道でマウンテンエリアのバンガローに向かいました。スネーフェル山岳鉄道は1895年に完成した鉄道で、イギリス諸島で唯一の電気山岳鉄道です。その当時から運行している車両「2号車」に乗車しました。



前述のようにスケジュールが変更されていた6日でしたが、当日はさらにタイムスケジュールが遅れました。当日にタイムスケジュールが変わることは、今年のマン島TTレースではもはや「ノーマル」でした。それほどに変更が重なったのです。バンガローの「ビクトリーカフェ」で過ごしつつ、スネーフェル山岳鉄道でスネーフェルの山頂に登るなどしてレースのスタートを待ちました。
バンガローは観戦スポットのひとつとなっており、多くの観戦客が、冷たい風と寒さの中でレースが始まるのを待っていました。マン島TTレースはスケジュールが遅れることが珍しくないので、観戦する側としても、のんびりと構えることが肝要かもしれません。




結局のところ、レースが始まったのは昼過ぎでした。マン島TTレースは1台ずつスタートするタイムトライアル形式のレースです。1周は約60kmで、ラップタイムは16分から18分。この日のレースはクラスによって2周から3周で行われました。こうした状況から、日本人ライダーの山中正之が参戦するこの日最後のレースとなったスーパーツインTTレース2が始まったのは、夕方でした。
本来はレース観戦後に「メッツラーTTヴィレッジ」(※ラグジュアリーなグランピングスポット)を訪れる予定でしたが、レースのスケジュールが大きく遅れたことから、スーパーツインTTレース2の途中で下山し、そのままディナーに向かうスケジュールに変更となりました。

6月7日(土)Day3:シニアTTレースのスタートを待つが……
ツアー3日目は朝から雨が降り、最高峰クラスであるシニアTTレースのスケジュールが遅れる、と発表されました。一行はグランドスタンドの「VIP マーキュリー・スイート」でランチやトークショーを楽しみながら、レースを待ちます。パドックを訪れ、ホンダ(ホンダ・レーシングUK)やBMW(8TENレーシング)のテントでディーン・ハリソン(2025年スーパーストックTTレース1、2の勝者)とジョン・マクギネス、デイビー・トッド(2025年スーパーバイクTTレースの勝者)から、じかにバイクの説明を受けることもできました。





テントの中に入ることができる人は限られていますが、パドック自体は観戦客が自由に入って各チームのテントやホスピタリティを見たり、展示されているバイクを見たりすることができるようになっています。ライダーも、積極的にファンサービスに応じていました。
レースを待つ間、日本人一行はスーパーツインTTレースに参戦した日本人ライダーの山中正之とも会うことができました。MotoGPなどに比べ、ライダーとの距離がより近いのが、マン島TTレースの特徴のひとつでしょう。

こうしてレースを待ち続けましたが、残念ながら、19時少し前にシニアTTレースが中止となることが発表されました。グランドスタンド付近の天気は昼ごろに回復しましたが、中止となった主な理由は、この日吹いていた強風でした。マン島TTレースはスケジュールひとつとっても予想がつきません。そのツアーもまた、まったくスケジュール通りには運ばないのがマン島TTレースなのです。もちろん残念な締めくくりではありましたが、ある意味で今年のツアーは「マン島TTレースの本質」を味わった、とも言えるのかもしれません。

6月8日(日)Day4:TTマウンテンコースを1周
最終日の午前中は、クルマでTTマウンテンコースを1周しました。1周約60kmを、1時間半ほどかけて回ったのです。こうしたコースの走行体験は公道レースならではでしょう。速度域はまったく異なるとはいえ、ライダーが見た景色、走った道を、そのまま自分の目と耳で知り、肌で感じることができるのですから。


レストランでランチをとったのち、少しの自由行動を挟んで、日本人一行はマン島のロナルズウェイ空港へ向かいました。そして「メッツラーVIPエクスペリエンス」で得た貴重な体験とともに、帰国の途に着いたのでした。