Report/松井 勉
舗装路、未舗装路問わず、一日を本当に楽しめるタイヤに進化した
メッツラーのアドベンチャー&マキシエンデューロバイク用タイヤ、KAROO™4が登場した。オーストラリアのシドニーから北西にクルマで1時間半ほど走った場所にある街、ウインザーを拠点として行われたメディアテストで走らせた印象をお伝えします。
私自身、長年ビッグオフロード、アドベンチャーバイクを乗り続け、現在乗っているBMWのR1250GS ADVENTUREも3年目。北海道から九州まで全国各地を走り、オドメーターは5万㎞を超えています。
そんな自分にとってタイヤの選択は大きな課題です。
なぜなら、どこかのパートだけに軸足を置いたタイヤ選択はできない、欲張りな私はどこででも楽しみたい。さらに、オフロードではその楽しみを最大にしたい……。したがって、メッツラーのKAROO™3は私にとってお気に入りのチョイスでした。
たしかにOEM系のタイヤと比較すれば、オフロードグリップを意識したブロック配置やブロック高なので、乗り心地、ロードノイズ、軽快なハンドリングが少々スポイルされるキャラクターであることは十分承知していて、そのうえでワインディングでは想像以上に楽しめるのもお気に入りポイントでした。
ですから、その後継モデルとなるKAROO™4がどんな進化を遂げたのか楽しみで仕方がありませんでした。
会場となったホテルの駐車場では、KAROO™4を履いたKTM・1290SスーパーアドベンチャーS 、ハーレーダビッドソン・パンアメリカ1250S、ドゥカティ・ムルティストラーダV4S、BMW・R1250GS/GS ADVENTUREなどフロント19インチ、リヤ17インチを履くモデル達と、フロント21インチ、リヤ18インチのハスクバーナのノーデン901が用意されていました。
乗り慣れているR1250GS ADVENTUREを選びスタート。駐車場から表通りに出るまでのわずかな距離を進み、通りを左折。その瞬間、KAROO™4の曲がり方が素直でナチュラルなことに気が付きました。低速では前輪舵角の大きな曲がり方。市街地での左折、Uターンなど、小回りする場面でKAROO™3はブロックタイヤによくあるリーンアングルに対し旋回感の遅れがありました。その遅れ、ズレがKAROO™4では解消されていて、走りがスムーズなのです。
そしてウインザーの市街地を進み、交差点、あるいはランナバウトでいつもと同じように曲がることを心がけると、そこでも「スッ!」と自然に走るのです。
50〜60km/hほどで流れる市街地。朝の通勤時間ということもあり信号での停止、発進も多く、低速で進む場面も少なくありません。そんなシチュエーションでも、新品のオフロード向けタイヤでありながら接地感もしっかりあるし、ブレーキング時の安心感も当り前のようにあります。
市街地から郊外に出ると、制限速度は100km/hに。緩やかに曲がる道、時折現れる90度のカーブ。そのどちらにもアプローチからバイクは曲がり始め、リーンアングルをキープした後に立ち上がってゆく、という一連のコーナリングが低速走行時と同じようにスムーズでナチュラル。この所作はちょっと感動でした。
もうひとつ。ブロックタイヤで感じる、走行時にゴロゴロとしたトレッドから伝わる振動が少ない。アスファルト性能を改善、伸張させたことが多角的に伝わってきました。転がり抵抗が少なく、すーっと走る感じも好印象です。
舗装路セクションは川沿いのワインディングを走る場面に移り、ブレーキング、旋回、加速という一連の動きを織り交ぜながら進みました。そうした時のバイクの感触がよりスポーティになっているし、接地感が豊潤。深く寝かせてもブロックのヨレ感がほぼないのはKAROO™3と同様ながら、この場面でもゴロゴロ感が少ないので、グリップしている印象を感じて、不安がまるでありません。
メインステージのダートでも不安なく楽しめた!
いよいよダート路に入ります。今回のテストルートは赤土で、幅が広くとられていました。森やファームを抜けて走るダート路で、路面は固くしまった印象で、時折、大木を避けたり川の流れに合わせて道幅が変わったり、クレストと呼ばれる路面起伏により先が見えない状況が連続する場面もありました。
引率するガイドのライダーは、地元をよく知っているだけに気持ち良いペースを維持してくれました。また、この日は雨予報にもかかわらず、走っている時は陽光が差し、夜に降った雨の恩恵か埃は立たず逆に良好なコンディションでした。
それでいて、日陰では湿った色をした路面が表れ、雨が降った形跡が点在していました。こんなツイスティなルートをひとしきり走り、ここでもKAROO™4が持つグリップ力、前後タイヤのフリップバランスと、アクセルを開けた時にじわっと滑り出す挙動がとてもコントロールしやすく、まるで自分が上手くなったような気分にさせてくれました。
細かく見ると、フロントのグリップ感が一段と増していました。これはブレーキング時などのバイクを直立させた状況から、カーブに入る時に次第に寝かせ始めた時に特に感じました。硬い路面と雨を含んで柔らかい状態の道というグラデーション路面の中でも同様。こうした場面でKAROO™3は路面状況をしっかり伝えるタイプで、スーと逃げるように動く場面がありました。とはいえ、それは完全にグリップが抜けるのではなく、あくまでインフォメーションとしてライダーに路面の変化を伝えるというタイプでした。
ただ、この挙動を「滑って恐い!」と感じて、ライダーがハンドルグリップをギュっと抑えてしまうと、逆にフロントのグリップを失うきっかけを与えてしまうことにもなり、バイクとの信頼関係をしっかり築けない要因にもなりかねないものです。しかし、そのわずかなタイヤが逃げるような動きがKAROO™4では極めて少なく、不安がないのです。
正直、実はグリップの良い道で滑り難い道なのかも、と走り続け、撮影のために止まった時にブーツのソールで道のグリップ感を確かめると、これが意外にも滑るのです。
その後も、サンド質の路面や水たまりの脇にある水分を含んだ柔らかくて、四輪のタイヤの轍ができたような場面を通過する時もKAROO™4はしっかりと「動く路面」を掴んでくれました。このソフトな路面を重たいアドベンチャーバイクで通過するのはライダーが緊張する場面ではありますが、それがとても少ないのです。
他にも、路面から岩盤が露出したり、石が埋まり、前後タイヤが思わず路面から離れるような場面で、しかもその石が雨で濡れた状態でも、接地した瞬間の方向性の定まりがよく、安心感が高いのが特徴でした。ランチ後、ザーッと一面を濡らす雨に降られ、アスファルト移動やダート移動でウエットも体験しましたが、安心感があり、走る楽しさはまったくスポイルされませんでした。再び進む硬い土のダートも、そこに雨が降り表層が滑るというやっかいな状況にもかかわらず、しっかりとした前後のグリップバランスのお陰で、思い切って楽しむコトができたのも嬉しい発見でした。
結論を言えば、KAROO™4は舗装路、未舗装路での快適性、安心感がさらに高くなり、最新のアドベンチャーバイクの性能をしっかり引き出せるタイヤだと理解しました。
今回、350㎞ほど舗装路、未舗装路を走った印象は、一日を本当に楽しめるタイヤに進化したということ。国内よりもアベレージスピードはオン・オフとも高めでしたが、その分、性能がしっかり上がったことを理解できました。メッツラーが目指す方向性の確かさ、正しさを実感したテストでした。
<松井勉さんプロフィール>
1963年生まれ、東京都出身。17歳でバイクに乗り始め、20歳ころからオフロードライディングを始め、エンデューロレースなどでファンライディングを知る。その後、バイク専門誌などの取材記者としての活動を始め、パリ~ダカール、Baja1000など海外のオフロードレースへ参加。そうした経験を、現在はメディアイベント、ユーザーイベントのルート制作などの面でフィードバックしている。また、映画、PVなど走行シーンの撮影も数多く体験し、これら「訊く、書く、競う、撮られる」経験をベースに、バイクの楽しさを多くの人に伝授すべく精力的な活動を行っている。