スーパーバイク世界選手権(WorldSBK)第12戦スペインラウンドが、10月16日から18日にかけて、ヘレス・サーキットで開催されました。2026年の最終戦でニコロ・ブレガが3レースすべてを制し、年間32勝を達成。2004年から公式タイヤサプライヤーを務めてきたピレリにとっても、23年間の独占供給を締めくくる大会となりました。

日本勢では、WorldSSPの岡本裕生がRace 1で転倒し、負傷によりRace 2を欠場。一方、WorldSPBのアクス・タイヨウは両レースでトップ10に入り、最終戦で今季最高の成績を残しています。

岡本裕生は転倒でシーズン終了。アクス・タイヨウは両レースでトップ10

Pata Yamaha Ten Kate Racingの岡本裕生は、金曜日の予選で1分42秒510を記録して21位。本人は順位に満足していないとしながらも、前年のヘレスからラップタイムを約2秒短縮できたことを挙げ、初日の走行を前向きに振り返っていました。チームへの感謝とともに、決勝に向けてさらに改善を進めたいという意欲も示しています。

土曜日のRace 1は20番グリッドからスタートし、オープニングラップで複数のポジションを上げました。しかし、2周目のターン12で転倒してリタイア。胸部と腹部に打撲を負い、医療チームから出走不可と判断されたため、翌日のRace 2には出場できませんでした。

レース後の岡本は、良いスタートで順位を上げられた一方、激しい転倒で肋骨付近に痛みがあると説明。こうした形でシーズンを終える残念さをにじませながらも、全力を尽くしたことと、1年間支えてくれたチームへの感謝を伝えました。参戦2年目を年間26位で終え、予選で得た改善の手応えを決勝の結果につなげることはできませんでした。

WorldSPBでは、PATA AG Motorsport Italiaからホンダで参戦するアクス・タイヨウが、Race 1で今季最高の9位を獲得。今季2度目のポイントを獲得すると、Race 2も10位でフィニッシュしました。両レースでトップ10に入り、シーズンを締めくくりました。

ブレガが年間32勝。チームは全36レース制覇を達成

WorldSBKでは、ブレガが土曜日のRace 1、日曜日のスーパーポールレース、Race 2を制し、今季10度目の3連勝を達成しました。3レースともブレガ、イケル・レクオーナ、サム・ロウズの3人が表彰台を占め、ドゥカティ勢の強さが際立つ最終戦となっています。

レース 優勝 2位 3位
Race 1 ニコロ・ブレガ サム・ロウズ イケル・レクオーナ
スーパーポールレース ニコロ・ブレガ イケル・レクオーナ サム・ロウズ
Race 2 ニコロ・ブレガ イケル・レクオーナ サム・ロウズ

Race 2では、スタートで前に出たレクオーナを、ブレガが1周目のターン6で逆転。その後は後続との差を広げていきましたが、残り5周ほどから雨が降り始め、最後の表彰台をめぐる争いが動きました。3番手のアルバロ・バウティスタにサム・ロウズが迫ると、最終周のターン5で逆転。ブレガとレクオーナに続き、ロウズが3位でチェッカーを受けました。

WorldSBKスペイン戦の表彰台。中央のニコロ・ブレガをイケル・レクオーナとサム・ロウズが囲む
WorldSBKスペイン最終戦のRace 2表彰台。中央では優勝したニコロ・ブレガが、Aruba.it Racing – Ducatiのチーム代表ステファノ・チェッコーニと肩を組む。左はイケル・レクオーナ、右はサム・ロウズ。

ブレガの年間成績は32勝、全36レースで表彰台、726ポイント。勝利数だけでなく、一度も表彰台を逃さなかった安定性も今季を象徴しています。WorldSBK通算勝利数は52となり、トロイ・ベイリスに並びました。

さらに、チームメイトのレクオーナが挙げた4勝と合わせ、Aruba.it Racing – Ducatiは年間36レースすべてで勝利。単一チームによるシーズン全勝という、WorldSBK史上初の記録を達成しています。

土曜はSC2、日曜はSC1。ブレガのフロントタイヤ選択

最終戦のタイヤ選択で注目したいのは、3連勝したブレガが土日でフロントのコンパウンドを変えていたことです。

土曜日のRace 1で、ブレガが選んだのはミディアムのSC2でした。同じ選択をしたのはレクオーナとミゲル・オリベイラの計3人で、2位のサム・ロウズを含むほかのライダーはソフトのSC1を使用。リアは全車がスーパーソフトのSCXを選んでいます。

ピレリによると、ヘレスは温度の上昇に伴って路面のグリップが低下しやすく、前後タイヤの摩耗も大きいコースです。土曜日のSC2については、厳しい条件でも周回を重ねた際の性能が安定していたと評価。ブレガはこのフロントタイヤで20周のレースを制しました。

翌日、ブレガはフロントをSC1へ変更。スーパーポールレースとRace 2では、全車がSC1とリアSCXの組み合わせで出走しました。ブレガ自身の変更理由は明らかにされていませんが、土曜日のSC2に続き、日曜日はSC1でも勝利を重ねています。リアSCXは、10周のスーパーポールレースと20周のRace 2の両方で全車に選ばれました。

スーパーポールレースでは、ブレガが3周目に1分37秒196を記録し、前年の決勝ラップレコードを0秒463更新。Race 2の優勝タイムも32分56秒372と、前年から約24秒短縮されています。ピレリは、今回供給した標準仕様のSC1とSCXが、こうしたレースペースの向上に対応したと評価しました。

一方、予選では全22人がリアにエクストラソフトのSCQを使用し、ブレガが1分36秒643でポールポジションを獲得。前年に自身が記録したオールタイムラップレコードには0秒014届きませんでしたが、決勝では新たな記録を残す週末となりました。

23年間のWorldSBKで磨かれたピレリのタイヤ技術

最終戦で使われたSCXやSCQも、WorldSBKで継続してきた開発から生まれたコンパウンドです。2004年に公式独占供給を開始したピレリは、市販車をベースとするこの選手権を、レーシングタイヤの開発と、その技術を市販タイヤへ還元する場としてきました。

2013年にはホイール径を16.5インチから17インチへ変更し、市販スポーツバイクとの共通性を高めています。その後、2019年にSCX、2022年には1周の速さを追求するSCQを導入。今回のヘレスでも、予選のSCQと決勝のSCXという形で、それぞれの役割が表れました。

市販製品とのつながりは、2007年に登場したDIABLO SUPERCORSAの技術を、翌2008年の公道用DIABLO SUPERCORSA SPへ展開した歩みにも見られます。ピレリの二輪レース部門責任者ジョルジョ・バルビエールは、WorldSBKで得た知見を今後のレース用・公道用タイヤの開発にも生かしていくと説明。23年間の公式供給はヘレスで幕を閉じましたが、そこで蓄積された技術は、次の製品開発へと引き継がれていきます。

ヘレスサーキットで記念撮影をするピレリチーム

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