写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
MotoGP第11戦オーストリアGP
8月16日~18日/オーストリア レッドブル・リンク
Moto2:来季MotoGPクラスに参戦決定の小椋藍、今大会は転倒負傷で欠場に
Moto2クラスに参戦する小椋藍(MTヘルメット – MSI)は、オーストリアGPの初日午前中のフリープラクティス、午後のプラクティス1をトップで終えました。初日からトップという状況は、走り出しから調子がいいと考えられますから、決勝レースへの結果に期待を抱かせる金曜日となりました。
しかし、土曜日午前中のプラクティス2中、小椋は2コーナー出口で転倒を喫します。地面に激しく打ち付けられた小椋は、メディカルセンターに向かいました。その後、MotoGP公式のXが、「メディカルセンターで検査を受け、右手の骨折と診断された。欠場が決定」と報じました。
また、MotoGP.comのインタビューで小椋自身がこう説明しています。
「土曜日の朝の転倒で、手を骨折してしまい、決勝を走ることはできません。不幸中の幸いというか、骨折自体はそれほど複雑ではなく、かなりシンプルです。ドクターたちと話をして、アラゴンに向けては『おそらく大丈夫だろう』ということでした。今週は残念ではありますが、またアラゴンに向けて準備していけたらいいかなと思います」
小椋が欠場した決勝レースでは、チャンピオンシップのランキングトップであり、目下、タイトル争いのもっとも現実的なライバルであり、チームメイトであるセルジオ・ガルシア(MTヘルメット – MSI)が14位でゴールしました。この結果、オーストリアGP前に18ポイントだった2人の差は20ポイントとなりました。小椋はランキング2番手をキープしています。ポイント差は2ポイント開いたものの、欠場のダメージは小さくすんだ、といっていいでしょう。
また、このオーストリアGPの木曜日にはビッグニュースが飛び込んできました。8月15日には、MotoGPクラスに参戦するトラックハウス・レーシングが、小椋と2025年、2026年シーズンの契約に合意したと発表しました。小椋は2025年、アプリリアのサテライトチームから、最高峰クラスデビューを果たします。
同じくMoto2クラスに参戦する佐々木歩夢(ヤマハVR46マスターキャンプ・チーム)は、予選26番手、決勝レースは21位でゴールしました。
予選Q1ではイエローフラッグ(※1)とトラックリミット違反(※2)により、2度のラップタイムキャンセルが発生したため、ベストタイムを更新できなかったことが影響しました。
ただ、佐々木は「Moto2に参戦してからはいちばんいいレースだったかなと。納得はできないですけど、今できることはできたと思います」とMotoGP.comのインタビューで語っていました。参戦1年目のMoto2クラスに、少しずつ適応が進んでいるようです。次戦アラゴンGPでは、ポイント獲得(15位以内)に照準を合わせています。
Moto3:ペナルティやバイブレーションなど、日本人ライダーは苦戦を強いられる
Moto3クラスでは、サマーブレイクのトレーニング中に転倒し、鎖骨を骨折、手術を受けたことで前戦イギリスGPを欠場した古里太陽(ホンダ・チームアジア)が復帰しました。フル参戦の3名のライダーがそろいましたが、軒並み苦しい週末となりました。
日本人ライダー最上位は、鈴木竜生(リキモリ・ハスクバーナ・インタクトGP)の12位でした。鈴木は予選Q2中のスロー走行に対して決勝レースでのロングラップ・ペナルティ(※3)を科され、これを消化してのレースとなりました。鈴木は今回のレースでファステストラップのレコードを更新しており、ペースがよかっただけに惜しいレースとなったと言えます。
「ロングラップ・ペナルティを消化する際、昨日の夜の雨もあって少し慎重になってしまい、他のライダーが(ペナルティを消化したときには)3秒くらいの遅れですんだところ、僕の場合は5秒近くタイムを落としてしまい、結局12位でした。レース内容としては、満足と不満足、半々です。でも、ペースはよくなっていますし、アラゴンに向けてポジティブなことが多いと思うので、頑張っていきたいと思います」(MotoGP.comより)
鈴木に次ぐ13位で終えたのは、山中琉聖(MTヘルメット – MSI)でした。10番手からスタートした山中は、一時は6番手で走りましたが、バイクにバイブレーションが発生したために難しい状況となりました。
「バイクにバイブレーションを抱えていたために7コーナーで転倒しそうになったり、6コーナーでも何度か危ないシーンもありました。どうやったら生き残れるかな、と考えながらのレースでした。(周囲の)ペースが上がったときにもう少しプッシュしようと思いましたが、バイブレーションを抱えた状態では限界で、順位的にも現状維持でレースを終えることが最善だと思っていました。原因は分かっていませんが、少し痛いレースとなってしまいました」(MotoGP.comより)
古里はペナルティが痛手となりました。土曜日を終えた時点で、古里は鈴木同様に、予選Q2中のスロー走行に対し、ロングラップ・ペナルティを科されていました。古里はレース中にこのロングラップ・ペナルティを消化しましたが、その後、トラックリミット違反によるロングラップ・ペナルティを科され、これを消化しなかったために結果にダブル・ロングラップ・ペナルティ分の6秒が加算されたのです。10番手でゴールしたものの、最終結果は15位となりました。3回分のペナルティを受けながら、ポイント圏内で終えたことになります。古里としても、そこは前向きにとらえていたようでした。
「ボクの土曜日のミスでこういう結果になってしまったのは残念ですが、レースペースはよかったです。トップの集団よりもペースは速かったので、そこはすごくポジティブだったと思います。怪我明けで、このサーキットでこれだけ走れるとは、ボクもチームも予想していませんでした」(MotoGP.comより)
MotoGP第12戦アラゴンGPは、8月30日から9月1日にかけて、スペインのモーターランド・アラゴンで行われます。
※1:
フリープラクティス、プラクティス、予選(Q1、Q2)において、ライダーが走行中に黄旗が振動提示されているセクターに入ると、該当タイムは無効となる。
※2:
コースの外側にある緑色のエリアに出て走行した場合、フリープラクティス、プラクティス、予選では、該当のタイムが無効となる。決勝レースでは複数のケースが考えられるが、その内のひとつが、トラックリミット違反を5回犯すと、ロングラップ・ペナルティが科される、というものである。
※3:
レース中、コース外側に設定された特定のエリアを通過しなければならないペナルティ。通常のコースよりも大回りとなるため、ペナルティを消化すると数秒ロスのラップタイムとなる。