写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
MotoGP第1戦カタールGP
3月8日~10日/ルサイル・インターナショナル・サーキット
2024年シーズンのMotoGPがカタールGPで幕を開けました。舞台となるのはルサイル・インターナショナル・サーキット。カタールGPはシーズン唯一のナイトレースとして行われます。
ピレリは2024年シーズンよりMoto2クラス、Moto3クラスのタイヤサプライヤーとなりました。カタールGPはピレリにとってMoto2、Moto3の初レースであったと同時に、すべてのMoto2、Moto3ライダーにとっても各クラスでのピレリ初レースでもありました。
Moto2:チーム移籍の小椋藍が4位フィニッシュ
2024年シーズンのMoto2クラスには、小椋藍(MT Helmets – MSI)、そして今季からMoto2にステップアップする佐々木歩夢(Yamaha VR46 Master Camp Team)が参戦します。小椋はIDEMITSU Honda Team AsiaからMT Helmets – MSIへとチームを移籍。これは小椋がロードレース世界選手権に参戦して以来初の移籍であり、シャシーもカレックスからボスコスクーロにチェンジ。クルーチーフをはじめとするスタッフとともに新しいチームへと加入しています。一方、Moto3クラスからステップアップした佐々木は、オフシーズンはMoto2参戦に向けて、日本に帰らず、ヤマハ・YZF-R1などの大きなバイクによる走り込みを行ってきました。
迎えた開幕戦の初日は、予想外の天候となりました。夜の時間帯のセッション、プラクティス1前に雨が降り、ウエットコンディションとなったのです。このために小椋、佐々木を含む多くのライダーが走行を見送りました。カタールでの雨は珍しく、小椋も「降るとは思っていなかった」と語っていました。
小椋は今季から供給されるピレリタイヤのパフォーマンス、フィーリングを確認しながらレースウイークを進めていました。予選ではタイヤ選択が外れて13番手だったものの、決勝レースは好スタートを切って徐々に順位を上げ、表彰台に迫る4位でゴールしています。ただ、小椋は「タイヤマネージメントミスだった」とレースを振り返ります。
「(ピレリタイヤでの初レースで)わからないことが多かったので、序盤は抑えていきました。リヤタイヤはうまくマネージメントできたんですけど、そのためにフロントをかなり使って走って、最後はフロントが厳しくなってしまったんです」
「リヤタイヤにはトップ3と同じかそれ以上のパフォーマンスがあったと思うんですが。フロントがなくなっちゃったので、高速コーナー系でなにもできなかった。苦しいラスト5周でした。分からないことだらけだったので仕方ないんですけど、マネージメントミスですね」
とはいえ、新しい環境とピレリタイヤでの初レースで、インフォメーションを収集しながらの4位には、「1回目のレースだと考えれば、ボクはうれしいです」と認めていました。ピレリタイヤのインフォメーション、フィーリングをつかんでいるところだという小椋は、積み上げた確信をパフォーマンス、結果につなげるライダーです。レースを重ねるたびに、結果もまた、上がっていくでしょう。
また、Moto2初レースだった佐々木は決勝レースで転倒リタイアでした。佐々木は、Moto3とは「びっくりするくらい、全然違う」と語るMoto2のライディングスタイルへの適応真っ只中。転倒は、フルタンク状態のレース序盤、1コーナーのブレーキングで注意を払っていたにもかかわらずジャックナイフしてしまい、元の状態に戻った時に加速してグラベルに突っ込んだものでした。佐々木自身にも「理解不能」の転倒だったとのこと。いまの佐々木は、もっとも必要なMoto2でのレース経験を積んでいる最中なのです。
Moto3:古里太陽が開幕戦で優勝争いを展開の末、3位表彰台を獲得
Moto3クラスには、3名の日本人ライダー、古里太陽(Honda Team Asia)、山中琉聖(MT Helmets – MSI)、鈴木竜生(Liqui Moly Husqvarna Intact GP)が参戦します。山中と鈴木はチームを移籍し、鈴木はホンダからハスクバーナへの乗り替えとなります。3名とも、Moto3継続参戦のライダーです。
決勝レースでは、古里が3位表彰台を獲得しました。古里は、テストの段階からピレリタイヤのパフォーマンスを引き出すセッティングと自身のライディングスタイルに苦戦しており、Q1を突破してQ2を走った予選についても、「テストの段階ではQ2にも行けると思っていなかった」と語っていました。
しかし、決勝レースでは素晴らしい追い上げを見せます。18番グリッドから好スタートを切ってトップ集団の上位に加わり、レース中盤には一時、トップを走りました。混戦のまま迎えた最終ラップに2番手で入った古里は、ダビド・アロンソ(CFMOTO Aspar Team)にかわされたものの、そこからは3位キープに気持ちを切り替えてポジションを守り、チェッカーを受けました。
「この苦戦の中での3位はかなりよかったかなと思います。今シーズンのスタートとしても、3位はかなりいいですね。これから何戦か、苦戦するサーキットが続くと思うので、開幕戦でポイントを取れたのはよかったです」
そう言う古里ですが、優勝も見えていただけに、悔しい気持ちも混じっているようでした。フィーリングに苦しみながらも表彰台を獲得した背景には、テストのときから注力していたレースシミュレーションがありました。「1日1回はロングランをやっていました。体はきつかったですけど、やった結果がよかったかなと思います」と語ります。
「まだまだうまく乗れている感じがしない」と言う古里だけに、いまだ本来の速さが潜んでいる状態なのかもしれません。
また、鈴木はチーム移籍後初レースで7位フィニッシュ。この日、チームと掲げていた目標はトップ10フィニッシュだったそうで、そのターゲットを達成しています。「初めてのKTM、ピレリだったので、妥当なレースだったと思います。これでラッキーがあって表彰台に乗っていたら、現状の課題が浮き彫りにならなかったと思うから」と、今後につながる手応えをつかんだようでした。
一方の山中は、15周目に転倒、リタイア。序盤からトップ集団で走るもギヤのセッティングによって前に出られず、苦しいレースとなりました。「(開幕前にテストをした)ポルティマオはいいフィーリングがあるので、今回の原因を考え直して、挑みたいと思います」と、次戦に向けて意気込んでいました。
MotoGP第2戦ポルトガルGPは、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで、3月22日から24日に行われます。