写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第6戦チェコ
7月19日~21日/アウトドローム・モスト

スーパーバイク世界選手権(WSBK)第6戦チェコラウンドが、7月19日から21日にかけて、チェコのアウトドローム・モストで行われました。

12連覇に向け意欲を示すラズガットリオグル

イギリスラウンドから連戦で行われたチェコラウンドは、全12戦の2024年シーズン折り返しとなる第6戦です。この大会でもまた、主役はトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)でした。

ラズガットリオグルはスーパーポール(予選)でポールポジションを獲得し、このときに記録した1分30秒064によって、オールタイムラップ・レコードを更新しました。そしてレースでは、第4戦エミリア・ロマーニャ、第5戦イギリスに続き、3戦連続で3レース(レース1、スーパーポール・レース、レース2)で優勝を飾っているのです。さらに、第3戦オランダラウンドのレース2から数えると、10連勝となります。

そのレース内容も、ほとんどラズガットリオグルの独壇場と言っていいものでした。3レースすべてで、最終的に独走状態を築いて優勝しています。このため、レースの中継では、レース後半になるとラズガットリオグルの姿がほとんど映らなかったほどです。

ラズガットリオグルはチェコラウンドを圧倒的強さで終え、チャンピオンシップでも、ランキング2番手のニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)との差を64に広げています。

「チームに感謝したい。今週末、素晴らしい仕事をしてくれた。セッションのたびに、バイクを改善してくれたんだ。ミスもなく、3勝した。これは本当に、チームワークのおかげなんだ。みんなハッピーだし、ボクもハッピーだよ。ボクは常に向上し、強くなっていっている」と、ラズガットリオグルはレース2のあと、WorldSBK.comのインタビューで語っています。

ラズガットリオグルは毎戦のようにチームの仕事ぶりに言及しており、今季から移籍したROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチームに信頼を寄せていることが窺えます。

「チャンピオンシップで大きなギャップを築くことができたから、とてもうれしい。でも、ボクはチャンピオンシップについてはあまり考えてはいないんだ。目の前のレースに集中しているよ」

ラズガットリオグルにとって、今、大きな目標のひとつとなっているのが、連勝記録です。現在の連勝記録は、アルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)とジョナサン・レイ(現パタ・プロメテオン・ヤマハ)が、それぞれ11連勝という記録を持っています。ラズガットリオグルは、あと1勝でバウティスタとレイの記録に並び、あと2勝すれば、彼らの記録を超えることになるのです。

「ボクの目標だ。あと2勝したい。そして、記録更新に挑戦したいんだ」と、ラズガットリオグルは明言しました。

「ポルティマオでどうなるかな。そこでもボクはとても強いからね」

とどまるところを知らない勢いによって、今季、ラズガットリオグルはあと何回の優勝を積み上げていくのでしょう。少なくとも今のところ、ラズガットリオグルはチャンピオンシップでも独走態勢を築きつつあります。

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レース1は優勝がラズガットリオグル(中央)、2位がダニロ・ペトルッチ(左)、3位がアンドレア・イアンノーネだった
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スーパーポール・レースもラズガットリオグルが優勝。2位はブレガ(左)、3位にはアレックス・ロウズが入った(右)
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レース2でこの週末3度目の優勝を飾ったラズガットリオグル。2位はブレガ(左)、3位は今季3度目の表彰台となるアンドレア・ロカテッリ(右)

バウティスタ、表彰台を逃すも「やっと思い通りにバイクに乗れた」

チェコラウンドで不運なレースが続いたのが、アルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)でした。ゼッケン1をつけるバウティスタは、2023年のチャンピオンです。ただ、今季はレギュレーションの変更によってマシンにバラストを搭載しており、昨年のような力強さに欠けたレースが続いています。優勝はオランダラウンドのスーパーポール・レースの1度のみにとどまっているのです。

ただ、今回のチェコラウンドでは、バイクのフィーリングがよくなっていたのだと言います。それだけに、惜しいレースが続いたとも言えるでしょう。スーパーポール・レースでは、最終ラップの1コーナーで2番手のブレガをかわそうとして転倒を喫し、レース2では、1周目の1コーナーで、ダニロ・ペトルッチ(バーニー・スパーク・レーシングチーム)と接触して転倒リタイアに終わったのです。

「先週末(イギリスラウンド)、ボクは今週末よりもポイントを獲得したけれど、バイクのフィーリングはひどかった。これが問題なんだ。でも、今週末、ボクたちは状況を変えた」

「確かにスーパーポール・レースはグラベルで終えてしまったけど、そうじゃなかったら3位だった。午後(レース2)は……分からないけど、フィーリングとしては、昨日みたいに表彰台争いができたと思う。もしかしたらね」

WorldSBK.comのインタビューでそう言ったバウティスタは、「ただ、今週末は2024年で初めて、思い通りにバイクに乗ることができたんだ」とも語っていました。果たして、バウティスタはチェコで覚醒したのか……、それを確かめるには、来月のポルトガルラウンドを待たなければなりません。

ちなみに、レース2のあとの囲み取材で、バウティスタの今後の去就についての質問がありました。バウティスタの答えは「もちろん、(参戦を)続けたいと思っているよ」というもの。バウティスタはAruba.it レーシング-ドゥカティ残留を希望しており、現在、ドゥカティと契約更新について話し合いをしているということです。

「ドゥカティと、契約更新についての話をしているんだ。こういう風にキャリアを終えるのは、フェアじゃないって気がしている。もう一度、バイクに乗ることを楽しむ必要があるし、バイクに乗っていて力強さを感じる必要がある。特に今週末のあと、いろいろなことがずっとクリアになった。ボクたちはここから改善のためにスタートできる」

第7戦ポルトガルラウンドは、8月9日から11日にかけて、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われます。