写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第2戦カタルーニャラウンド
3月22日~24日/バルセロナ‐カタルーニャ・サーキット

スーパーバイク世界選手権(WSBK)第2戦カタルーニャラウンドが、3月22日から24日にかけて、スペインのバルセロナ‐カタルーニャ・サーキットで行われました。カタルーニャでは、2023年ランキング2位のトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)、そして2023年チャンピオンのアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が優勝を飾りました。この2人は、スーパーポール・レースでも激しい優勝争いを演じました。

レース1:作戦が奏功したラズガットリオグルが最終ラップで優勝を勝ちとる

ポールポジションからスタートしたラズガットリオグルは、序盤、サム・ロウズ(エルフ・マークVDSレーシングチーム)、ロウズが転倒してからはニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)にトップを譲り、レース中盤はアンドレア・イアンノーネ(チーム・ゴーイレブン)の後ろを走っていました。

ラズガットリオグルは、「このサーキットは残り5周でタイヤのパフォーマンスが大きく落ちる」(WorldSBK.comのインタビューより)と考えていたのです。

やがてタイヤがもたなくなったイアンノーネをパスし、4秒以上前を走るブレガを追いかけ、差を詰めていきました。そして最終ラップ、ブレガをかわしてトップに立つと、優勝を飾ったのです。ラズガットリオグルにとって、今季初優勝であるとともに、カタルーニャでの初優勝でした。

「残り6周、5周あたりでブレガのタイヤのパフォーマンスが落ちてきたのが分かった。そこで、すごくプッシュしたんだ。特にブレーキングでね。もうリヤタイヤが摩耗してきていたから。けれど、最終ラップで彼をかわすことができた。たぶん作戦がよかったね」

ラズガットリオグルはWorldSBK.comのインタビューで、そう語りました。ブレガはWSBKルーキーです。ここはチャンピオン経験者であり、WSBKでの豊富なキャリアを持つラズガットリオグルの経験が勝った、というべきでしょう。

そしてこの優勝は、今季移籍したBMWでの初優勝でもありました。ラズガットリオグルは、2021年にはともにチャンピオンを獲得したヤマハを離れ、BMWに移籍しました。カタルーニャラウンドは、BMWでの2戦目だったのです。

ラズガットリオグルは、パルクフェルメのインタビューで「最初に、チームを誇りに思う」と穏やかな笑みを浮かべながら、まずチームへの感謝を述べました。

「みんな、すごく頑張ってくれたんだ。そして、みんなで勝てた。すごくうれしいよ。今回の優勝は夢だったんだ。今までバルセロナで勝ったことがなかったからね。ついに勝てた……、BMWのバイクでね」

「みんなBMWについていろいろ言うけど、ほらね、僕たちは優勝したよ! これでBMWがいいバイクだって、分かるのは簡単だと思うんだ。とてもうれしい。明日もベストを尽くすよ」

ラズガットリオグルらの走行写真
タイヤの巧みなマネージメントによって最終ラップにトップを奪ったラズガットリオグル。BMW移籍後2戦目での初優勝だ
表彰台の写真
レース1はラズガットリオグル(中央)が優勝。2位がブレガ(左)、3位はバウティスタ(右)

レース2:王者バウティスタが今季初優勝

バウティスタは、レース1を3位で終えていました。スーパーポール(予選)としては11番手でしたが、レーシングラインでのスロー走行に対して3グリッド降格のペナルティを受け、13番手からスタートだったのです。

バウティスタはレース後、パルクフェルメでのインタビューに「3グリッド降格のペナルティがなければ、勝てていたかもね! なんて、もちろんジョークだけど」と笑っていました。しかし、それがジョークではないとレース2で証明するのです。

スーパーポール・レースの結果により、バウティスタはレース2を1列目3番手からスタートしました。そして、レース中盤はチームメイトのブレガにトップを譲るシーンがあったものの、10周目に再び先頭に立ってからは他を寄せ付けず、優勝したのでした。

初戦のバウティスタは今季変更されたレギュレーションにより積むことになった約6kgのバラストとともに走っていました。また、体調面で万全ではない状況もありました。

しかし、カタルーニャラウンドのレース2は、バウティスタの強さが2024年シーズンもそこにあることを示していました。

「グリッドで、タイヤを変えることに決めたんだ。今日は気温が低かったし。(リヤタイヤは)SCXの方がC0900(SCX-A)よりもいい選択だと思ったから。優勝できてうれしいよ」と、WorldSBK.comのインタビューにバウティスタは語りました。

「いいスタートを切ったけど、序盤はあまりタイヤを使いたくなかったんだ。そうしたら、ニッコロがボクをパスした。ボクのペースはとても遅かったからね(笑)。それで『もうちょっと攻めた方がいいな』と思った。再びトップに立ち、タイヤを使いすぎることなく全力で走ることに集中した。優勝できてうれしい。しばらく優勝していなかったからね」

そうレースを振り返ったバウティスタは、「今年は以前よりも難しいシーズンになると分かっていた」とも語っています。しかしそれは、近年、ドゥカティとともに他を圧倒してきたバウティスタにとって、ある意味で悪い状況ではないようでした。

「昨年、ボクはたくさん優勝した。もちろん簡単というわけじゃなかったけど、『また1勝』『また1勝』という具合で、これはよくない。常にバトルが必要なんだ。今日の優勝は、特別なものになったよ。今、ボクは勝った。でも、このグリッドでまたいつ勝つのか、誰にも分からない。だから、この時間、いいフィーリングをキープすることが大事なんだ」

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レース2で今季初優勝を飾ったバウティスタ(中央)、2位のブレガ(左)、3位のラズガットリオグル(右)
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より困難なシーズンを予想するバウティスタだが、カタルーニャでのレースを見る限り、やはりシーズンの中心はバウティスタになるだろう

実際のところ、カタルーニャラウンドのスーパーポール・レースで、バウティスタはラズガットリオグルと激しい優勝争いを繰り広げました。最終ラップの最終コーナーまで演じた接戦は、ラズガットリオグルに軍配が上がっています。カタルーニャは、ラズガットリオグルとバウティスタが優勝を分け合い、そしてまた、激しく戦ったラウンドでした。

確かに、今季の様相は2023年とは異なるでしょう。しかし、シーズンをけん引するのはやはり、バウティスタとラズガットリオグルという2人のライダーなのではないか、と思わされる3レースでもありました。

WSBK第3戦オランダラウンドは、4月19日から21日、オランダのTT・サーキット・アッセンで行われます。