写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
WSBK第5戦イギリスラウンド
7月15日~17日/イギリス ドニントンパーク
スーパーバイク世界選手権(WSBK)第5戦イギリスラウンドが、イギリスのドニントンパークで行われました。このイギリスラウンドではスーパースポーツ300世界選手権(WSS300)の開催がなく、WSBKとスーパースポーツ世界選手権(WSS)のみが行われました。
バーミンガムの北東に位置するドニントンパークの歴史は古く、その始まりは1931年。現在、イギリスで営業する最も古いモータースポーツサーキットです。高速パートとアップダウンのある流れるようなコーナー、そしてブレーキングと加速を要するストレートとスローパートが混在しています。大きな右コーナーである8コーナーを立ち上がるとダンロップ・ストレートが続き、最高速度に達するほか、4コーナーと7コーナーでは100km/hを下回ることがないといいます。
ピレリはこのイギリスラウンドに、ほぼ市販タイヤを用意しました。フロントタイヤにはソフトスタンダードのSC1、そして開発タイヤのSC1 A0674、リヤタイヤにはスーパーソフトのSCXとソフトのSC0、そしてエクストラソフトのSCQを投入しました。
WSSはすべてスタンダードソリューションで、フロントタイヤにはソフトのSC1、ミディアムのSC2、リヤタイヤにはスーパーソフトのSCXとソフトのSC0が用意されました。
WSBK:ラズガットリオグルが3勝を挙げてイギリスラウンドを席巻
土曜日に行われたスーパーポール(予選)で、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がこれまでのオールタイムラップ・レコードを0.5秒以上更新する1分26秒080を記録し、ポールポジションを獲得しました。レイはフロントタイヤにSC1(A0674)、リヤにSCQを選択しています。また、2番手のアレックス・ロウズ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)から4番手のスコット・レディング(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)までがこれまでのオールタイムラップ・レコードを更新するタイムをマーク。このスーパーポールでは、全ライダーがリヤタイヤにSCQをチョイスしていました。
午後に行われたレース1は、気温24度、路面温度42度のドライコンディション。全ライダーがリヤタイヤにスーパーソフトのSCXを選択。一方、フロントタイヤについてはチョイスが分かれ、ポールポジションのレイ、2番手のロウズ、4番手のレディング、5番手のバウティスタなどはSC1(A0674)を選んだのに対し、3番手のトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BrixxワールドSBK)、6番手のマイケル・ルーベン・リナルディ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)などはSC1を履いています。
レースは3番手スタートのラズガットリオグルが好スタートを切って、序盤から後方を引き離す展開となりました。その後方ではバウティスタとレイによる激しい2番手争いが繰り広げられます。3番手につけていたレイは、8周目の最終コーナーでバウティスタをかわすと、2番手に浮上しました。
しかし、その後もレイとバウティスタは僅差の状態で周回を重ねました。残り10周の最終コーナーでレイがミスを犯してラインを外すと、バウティスタがレイをパスします。再び2番手に浮上したバウティスタでしたが、残り9周の最終コーナーで転倒。バウティスタはマシンを起こして再び走り出したものの、途中でピットに戻り、リタイアとなりました。
優勝したのは独走態勢を崩さなかったラズガットリオグル。2位はレイ、3位には終盤にレディングと接戦の3番手争いを展開し、これを制したロウズが入りました。野左根航汰(GYTR・GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は19位でした。
日曜日の午前中に行われたスーパーポール・レースは、気温26度、路面温度36度のドライコンディション。25人のライダーのうち、16人がリヤタイヤにSCQを使用し、残りのライダーはSCXを選択しました。フロントタイヤについてはSC1とSC1(A0674)でチョイスが分かれました。
このレースではフロントタイヤにSC1、リヤタイヤにSCQをチョイスしたラズガットリオグルがスタート直後にトップを奪い、レースをリードする展開となりました。ラズガットリオグルは3周目にファステストラップのレコードを更新する1分26秒767を叩き出すと、2番手のレイとの差を広げて優勝を飾りました。2位はレイ、3位はレディングで、レディングはBMW移籍後初の表彰台獲得となりました。野左根は17位でフィニッシュしています。
午後のレース2は、気温29度、路面温度41度のドライコンディションとなりました。このレースでは、レース1同様に全ライダーがリヤタイヤにSCXを選択し、フロントタイヤについてはSC1、SC1(S0674)で分かれています。ポールポジションのラズガットリオグルはフロントタイヤにSC1、リヤタイヤにSCXという組合せでレースに臨みました。
スタートでトップに立ったのは、このレースでもラズガットリオグルでした。そのラズガットリオグルの背後に、レイがぴったりとつけます。レース序盤、レイはラズガットリオグルに対して何度も勝負を仕掛けますが、ラズガットリオグルを抜き去るには至りません。ラズガットリオグル、そしてレイはわずかな差を保ったまま、緊張感あふれるトップ争いを繰り広げます。
しかし、レース中盤以降、レイがラズガットリオグルから遅れ始め、その差がみるみる開いていきます。そんなレイに、3番手のバウティスタが迫っていました。
バウティスタはレイとの差を詰めると、残り5周の11コーナーでパス。バウティスタは2番手に浮上し、レイは3番手に後退しました。
ラズガットリオグルは、トップの座を譲ることなくポール・トゥ・ウィン。イギリスラウンドの3レースで3勝を挙げ、自身として初めて1戦3レースすべてで優勝を飾りました。2位はバウティスタ、3位はレイが獲得しています。野左根は18位でチェッカーを受けました。
WSS:勢い止まらぬエガーターが9連勝
WSSのレース1は気温25度、路面温度43度のドライコンディションで行われ、全ライダーがフロントタイヤにSC1、リヤタイヤにSCXを選びました。スタート直前にディレイとなったことで周回数は19周から18周に減算され、さらに1周目の4コーナーで発生したクラッシュの影響でレースは赤旗中断となります。コースコンディションの回復後、12周の周回数でレースが再開されました。
再開されたレースは、当初のグリッド順からのスタート。2度目のスタートでは序盤にジャン・オンジュ(カワサキ・プチェッティ・レーシング)がトップに立ちます。2周目の最終コーナーではトップを争っていたニコロ・ブレガ(Aruba.itレーシング・ワールドSSPチーム)が転倒。ここでリタイアとなりました。序盤の混戦でトップに立ったのはロレンソ・バルダッサーリ(エヴァンブロス.ワールドSSPヤマハチーム)で、その後ろにはドミニケ・エガーター(テンケイト・レーシング・ヤマハ)が続き、中盤以降のトップ争いはこの二人によって展開されます。
残り5周、11コーナーでエガーターがバルダッサーリをかわし、ついにトップに浮上します。エガーターはそのまま優勝を飾りました。2位はバルダッサーリ、終盤に3人のライダーによって争われた3位はラファエレ・デ・ロサ(オレラック・レーシング・ヴェルドナトゥラ・ワールドSSP)が獲得しています。
日曜日に行われたレース2は、気温28度、路面温度38度のドライコンディション。レース1同様に、全ライダーがフロントタイヤにSC1、リヤタイヤにSCXを選択しています。
レースは1周目にエガーターからトップを奪ったブレガがレースをリードし、トップのブレガから4番手のバルダッサーリまでが、5番手以下のライダーとの差を広げていきます。
その後、4番手のフェデリコ・カリカスロ(アルテア・レーシング)が遅れ始めたことで、優勝争いはブレガ、バルダッサーリ、エガーターの3人による争いとなります。レース終盤、ブレガの背後にぴたりとつけていたバルダッサーリとエガーターがトップを走っていたブレガをかわすと、エガーターはさらにトップのバルダッサーリに接近。残り3周でファステストラップを叩き出しながらバルダッサーリをパスし、トップに躍り出ました。エガーターはトップをキープし、フィニッシュ。この優勝により9連勝を達成しました。2位はバルダッサーリ、3位はブレガが獲得しています。
第6戦チェコラウンドは、7月29日から31日にかけて、チェコのオートドローム・モストで行われます。