バイクの楽しみ方のひとつとして、すっかり定着してきたサーキット走行会。ヨーロッパでは「トラックデイ」と言うのが一般的で、サーキットで走行を楽しんだり、友人たちとワイワイ楽しく過ごす1日という位置づけです。

いまはサーキット走行会もだいぶ敷居が下がってきていて、バイクの免許を取ったばかりの初心者ライダーや、女性ライダー、そして久しぶりにバイクにカムバックしたリターンライダーも物おじせずに参加するようになってきています。

ピレリジャパンが主催する「FUN TRACK DAY」は、実はヨーロッパのピレリ本社から輸入したものではなく、完全な日本オリジナル。逆に、いまや本社が同じコンセプトのイベントを開催しているそうです。

17年前、ディーラーさんのひとりが「サーキット走行会をやりませんか」と言ったのが最初のきっかけ。当然、初めてなのでノウハウもなく、まだ丸1日サーキットを借り切ってという形ではなく、イベントや地方選手権レースの合間の時間を利用したりというパートタイムイベントでしたが、それでもかなり好評だったために、翌年から1日サーキットを借り切って開催する現在と同じ形になりました。

そして、翌年の開催から「サーキットを楽しむ1日」といういまと同じコンセプトを、現在のピレリジャパン二輪部門の責任者である児玉秀人さんが考案しました。

「ピレリがタイヤを供給するようになったため、ヨーロッパにスーパーバイクレースを見に行ったとき、サーキットの雰囲気がすごくよかったんです。ガチなレースが行われてるんだけど、ホスピタリティブースやテントがそこら中にあって、ギスギスした感じがまったくない。アットホームというか、レースはレースで、出場しているライダー以外はそれぞれサーキットの1日を楽しんでいるんです。こんな雰囲気のイベントにしようと、そのときに思いました」

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スーパーバイクが開催されているサーキットのパドック。左側は、これからレースに臨むチームのピリピリした雰囲気が漂うけれど、フェンスを挟んだ右側ではレースファンが休日を楽しんでいる。

ちょうどその頃、新製品としてDIABRO™ CORSAがリリースされ、サーキットに自走で来てトラックデイの1日を楽しんで、終了したら再び自走で帰るような人にもってこいのモデルだったため、ぜひ多くの人にDIABRO™ CORSAを履いてトラックデイも楽しんで欲しいという思いもあったそうです。

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プロダクションタイヤとハイグリップタイヤの中間的存在だったDIABRO™ CORSAがリリースされたころ始まった「Pirelli FUN TRACK DAY」。そのDIABRO™ CORSAも進化を重ね、現在はPIRELLI - DIABLO ROSSO™ IV CORSAがそのコンセプトを受け継いでいる

「サーキット? うちには関係ない」そう言っていたショップも次第に参加してくれるように

そういうピレリサイドの思いとは違って、やはりサーキットというとレースイメージがまだまだ強かった時代、「サーキットなんて関係ないよ」というライダーやショップが当時はまだ多かったそうです。

より多くの人に参加してもらうため、客寄せでエクストリムライダーに来てもらったことなどもあったそうですが、次第にショップ側も「サーキットで1日楽しむ」という趣旨を理解してくれはじめ、参加者も増えていきました。

「Pirelli FUN TRACK DAY」の参加者がまだ少なかったスタート直後から、現在まで頑なに守っていることがふたつあります。

ひとつは、おいしいランチにこだわっていること。

「ピレリはイタリアの会社ですから、食事にはこだわっています。サーキットの食堂じゃなく、ケータリングをお願いしておいしいランチを用意することで、サーキット走行をするライダーだけじゃなく、ライダーの付き添いで来た家族やお友達もサーキットでの1日を楽しんでもらいたいですね」

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毎回ケータリングで温かくておいしいランチを提供している。付き添いの家族や友人も食べることができる(料金は1500円)

もうひとつは、参加申し込みの窓口をバイクショップにしていること。

自分のバイクの整備も満足にしないで、整備不良に近い状態のバイクなどで走ってしまう危険性を排除するとともに、ショップにも「Pirelli FUN TRACK DAY」をビジネスのひとつの道具として使ってもらいたいという趣旨だと言います。

何でもネットで手に入るようになり、ユーザーとショップの関係が希薄になってきているいま、あえてショップを窓口とすることでユーザーとショップの接点を設けることにしたのです。そして、そうすることでユーザーもショップつながりの仲間ができ、たくさんの仲間とバイクライフを楽しめるようになっていくわけです。

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東京・世田谷にあるバイクショップ「零式」(ぜろしき)も「Pirelli FUN TRACK DAY」の常連ショップ。毎回、多くのお客さんと一緒に参加してくださっている。写真中央が代表の植田さん。

2020年、15周年記念イヤーはコロナ禍で開催できず

順風満帆だった「Pirelli FUN TRACK DAY」でしたが、記念すべき15周年に当たる2020年。新型コロナウイルス感染症の影響で、開催を断念せざるを得ない事態となりました。

しかし、そのお休みの間に、ショップも含めてWEBミーティングを繰り返し、「Pirelli FUN TRACK DAY」のコンセプトを確認し合い、さらに練り上げていきました。

そして再開した2021年、シーズン途中からの再スタートでしたが、開催を待ちわびていたお客様で毎回、満員御礼の大盛況。ウィズコロナのイベントにすべく、車検も車両チェックシートを参加者本人に記載して提出してもらう形式に変更して、参加者に自分のバイクの責任をもってもらうことにしましたが、この結果、整備不良の車両はほとんどなくなるといううれしい効果も生まれました。

そして今年、2022年も前半の3回が終了しましたが、おかげさまで今年も毎回満員御礼。大盛況で開催させていただいています。

では、どんな方が参加しているのか、児玉さんに聞いてみました。

こういう走行会にありがちなリピーターもいることはいますが、実際のデータを見ると半分は初参加の方。年代も、40代、50代が多いことは多いけれど、最近は20代、30代の参加者が増えてきていて、女性の参加者も増えてきているそうです。

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5月の袖ヶ浦開催が初めてのサーキットランという尾形はるかさん。「ヒザは擦れなかったけど楽しかった! 目標はヒザ擦り、次回も参加します!」

タイヤメーカーであるピレリジャパン主催ですが、ピレリ以外のタイヤユーザーも大歓迎で、以前はピレリユーザーは3割程度だったそうです。現在はピレリタイヤを取り扱うショップが窓口になっていることもあり、6~7割まで増えてきています。

また、毎回、ピレリジャパンがサービステントを出店して、エアチェックをしているのに加えて、スタッフの説明付きで最新タイヤの展示を行っていることもピレリユーザーが増えている一因かもしれません。

「Pirelli FUN TRACK DAY」のコンセプトとヒストリーを、ピレリジャパンの児玉さんにお話しいただきましたが、次回からはもう少し詳しく「Pirelli FUN TRACK DAY」ならではの特徴をお伝えしたいと思います。

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「Pirelli FUN TRACK DAY」について説明してくれたピレリジャパンの二輪部門の責任者・児玉さんも、合間を見つけて参加者と一緒にサーキットランを楽しんでいる


PIRELLI - FUN TRACK DAY